瀬戸熊直樹(連盟)はRTD出場4年目。優勝こそないが、2016年と2018年の2度、決勝戦まで勝ち上がったその実力は折り紙付きだ。
瀬戸熊のプロ入りは1997年。サッカー日本代表が初めてW杯進出を決めた年だ。当時は今現在のように各団体のリーグ戦が放送されることもなかったため、記録といえば牌譜だけだった。「だからちょっとした研究で、すぐに突破口が見える世界だったんです。でも現在は相手の打牌や考え方は対局映像を見ればわかる世界になったので、周りのレベルが上がっていくスピードも早い。将棋で言えば、AI(人工知能)の進歩で、今までになかった新しい定石がどんどん生まれる状況に、麻雀界も似て来ている」と周囲のレベルアップへの対応も必須と捉えている。
将棋界ではAIへの注目度はますます高まっている。「以前、羽生善治九段がAIの一手について聞かれた時に、今の一手としては最善かもしれないけれど、5年後、10年後にはまた新しい一手が出てきてしまうと言われていたんですけど、麻雀も同じなんです」と羽生九段と同い年の瀬戸熊は、将棋界のトップランナーの動向にも目を向けている。
「Mリーグ」がオフシーズンに入ってから、新たな取り組みも始めた。「自分が対局した公式戦など、1試合は必ず映像でチェックして研究しています。これをやり始めたのは、自分がすごく研究されていることがわかったからです。だからこっちも相手を研究し尽くそうと。実際、試合を一打一打研究した後は、次の試合に繋がっているんで、精神面の安定にもつながっています」と対局映像チェックをルーティンとした。
そして試合が始まれば「僕の中で、頭で考えて打つ一打と、無意識に打つ一打が存在するので、無意識の一打が出ている状況になった時は、僕の時間帯」といわゆる“ゾーン”に入れば、勝利は自ずと近づいてくるという確信がある。
瀬戸熊の言う“無意識の一打”とは「利を捨て去っている状態」を指している。「解説の方にもすぐにわかるような当たり前の一打を打っているような時は、僕は押されている状況」とし、「そこに入れるかどうかはわからないんですけど、見ていて違和感を覚えてくれた一打があれば、それが無意識の一打です」と損得勘定抜きの一打が打てるか否かが、勝敗を分けるポイントだと捉えている。
将棋、囲碁界でも席巻しているAIの波は、麻雀界にも確実に押し寄せているが「結局、最終的には自分の麻雀を打ち切るところに戻る」と瀬戸熊は言い切る。
アガリたい、勝ちたい、負けたくない。あらゆる欲を削ぎ落とした“無意識の一打”の先にあるもの。瀬戸熊が心を無にした時、RTD初制覇という栄光が、自然と舞い降りてくるのだろう。【福山純生(雀聖アワー)】
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆RTDトーナメント2019 2016年から3年に渡り行われてきた「RTDリーグ」から、トーナメント方式に変更。昨年行われた「RTDリーグ2018」の予選リーグ(WHITE・BLACK)の上位各6人、推薦枠として2人の計14人に加え、予選リーグ7位の2人と新規参戦2人の4人による入れ替え戦(サバイバルマッチ)から上位2人が本戦に進み、計16人で行われる。16人はA~Dの4グループに分かれ、半荘4回戦で対戦。トータル2位が準々決勝A(上位3人が準決勝進出)、同3位が準々決勝B(上位1人が準決勝進出)へ、同1位は準決勝(上位4人が決勝進出)に進む。主なルールは一発・裏ドラ・赤(各種1枚)あり、全自動卓による自動配牌のMリーグルール。
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