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(アンコールにもパンダ、ササダンゴ、ベッド・インたちが登場して賑やかなエンディングに)

6月12日、ムード歌謡グループ・純烈NHKホール公演が開催された。昨年、紅白歌合戦出場を果たしてさらに知名度を高めた純烈。年明けに報道されたスキャンダルにしっかり向き合う姿も印象に残った。2月には、マッスル坂井(スーパー・ササダンゴ・マシン)がプロデュースするDDTプロレスイベント『マッスル』の両国国技館大会にも登場している。

純烈のリーダー・酒井一圭は、かつて『マッスル』で選手として活躍していた。今回のNHKホール公演では、坂井が第一部(演劇パート)の脚本を担当。開演前のマスコミ向け囲み取材には初期・純烈のイベントで司会を務めていた今林久弥氏(現・DDTアシスタントプロデューサー)とササダンゴもメンバーとともに出席した。「ずっと支えてくれた仲間たちと一緒に、この大舞台に立ちたかったんです」と酒井は言う。

平日の午後3時スタート。チケット完売、3500人の純烈ファンで埋まったNHKホールで展開されたのは“事実上のマッスル”とも言えるエンターテインメント・バトルショーだった。オープニングVTRで今林扮する鶴見亜門(マッスルのレギュラーキャラクター)が純烈の統括マネジャーに就任し、「若返り」として酒井と小田井涼平をクビに。残った後上翔太と白川裕二郎に演歌界のプリンス的存在・最上川司と真田ナオキを加えて「純烈&プリンス」(純プリ)が結成されるというストーリー。観客は「ティアラ」と呼ばれることに。

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(NHKホールのステージで“煽りパワポ”が見られる日が来るとは)

酒井と小田井は純プリとバトルを繰り広げつつ、ササダンゴ得意のパワポプレゼンから“地下セクシーアイドル”ベッド・インと新グループに。その名も“日本を烈しくお元気にする地下セクシーお風呂屋さんアイドル”お戯烈(OGERETSU)。この新グループのライブも盛り上がったものの、やはり純烈は純烈。元の4人であらためて紅白連続出場を誓うことになった。

さらにラスボス役として、一般メディアでも話題のアンドレザ・ジャイアントパンダが登場。その対策を授けたのは、純烈の恩人・前川清だ。前川の登場はメンバーには知らされていなかったという。クライマックスではステージ上がスローモーションになり、酒井の心象風景がスクリーンに流れつつ闘いが繰り広げられた。アンドレザ(マッスル両国で一瞬、純烈のメンバーになった)やベッド・イン、ササダンゴは第二部のアンコールにも。純烈史上最大のステージは、仲間たちとともに大団円を迎えた。

この「鶴見亜門が無茶ブリ→メンバーが右往左往しながらのバトル→サプライズゲスト→スローモーション→大団円」という流れは、まさにマッスルそのまま。試合の代わりに歌があるマッスル、といえばいいだろうか。パワポにスローモーションにと、何か「白昼堂々の犯行」という言葉も思い浮かぶ驚愕の展開だった。

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(「純烈とは手が合うと思ってました」(坂井)というベッド・イン。「目を閉じておいでよ」、「あゝ無情」のカバー2曲でNHKホールにバブル再来)

純烈ファンも呆気にとられたはずだが、しかし場内の反応は決して悪くなかった。そこはマッスルが持つ、一種の“メジャー性”だろう。一つ一つのネタや登場人物が分からなくても、トータルで伝わるものが必ずある。スローモーション開始の際には、ササダンゴが酒井に語る形で「ドラマのクライマックスってスローモーションになったりするじゃないですか」という解説も加えていた。

終演後、坂井に話を聞いてみると、やはり「マッスル両国の続きのつもりで(脚本を)書きました」という。マッスルの世界観が純烈ファンに伝わらない不安はなかったかと聞くと「でも、僕に脚本の依頼があったということは、そういうものを(純烈が)求めてくれてるんだろうなって。それに演出の小池(竹見)さんだったり、素晴らしいスタッフが揃ってるので」。

この日は夜にDDTの春日部大会が開催されていたが、それがなければ「アントン(アントーニオ本多)だったり、いつものマッスルのメンバーにも出てほしかったんですけど」と坂井は言う。それだけマッスルの力に自信があるということだろう。

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(開演前の囲み会見。下積み時代をともにした今林(鶴見亜門)氏も感慨深げだった)

坂井が「コンサートの脚本」という未知の分野に挑むのかと予想していたら、そうではなかった。といって「純烈のコンサートをマッスルが乗っ取った」ということでもない。坂井によれば、そもそもマッスル両国の準備中に見た純烈出演の「前川清 特別公演」(明治座)に大きなインスピレーションを得ていたという。いわゆる歌謡ショー、歌手の座長公演のスタイルがマッスル両国、純烈NHKホールという2つのビッグイベントを通してマッスル的に昇華していったのだ。

「飯伏幸太やケニー・オメガが、DDTからどんどん大きな舞台で活躍するようになったじゃないですか。もちろんDDTを大きくするのも大事なんですけど、じゃあ僕や今林さんが外の大きなところに出て行くっていったら、こういう形かなって。純烈っていうもともとの仲間、友だちと大きくなっていきたいんですよね」

とはいえ、このコンサートでプロレスイベントとしてだけではない「フォーマットとしてのマッスル」が評価されれば、坂井がさらに“外”で活躍することになるかもしれない。本人は「いやいやいや、40すぎたら新しい友だちなんてできないですよ」と笑うのだが、少なくとも可能性は見えてしまったような気がする。何があっても驚かないつもりだが、それでもやっぱり驚かせてくれるのではないか。

文・橋本宗洋

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