6月19日、DDTが初開催した「プールプロレス」(すみだスポーツ健康センター)は、ウォータースライダーを使った攻撃に観客水没、競泳対決(自由形)と期待通りの大混乱となった。
5wayタッグマッチはシングル王座挑戦も決まっているクリス・ブルックスが中澤マイケルをフォール。ブルックス&渡瀬瑞基組が勝利したのだが、カオス状態はこれで終わらず。
試合後のプールに鳴り響いたのは“大社長”高木三四郎の入場曲だ。保持する「いつでもどこでも挑戦権」の行使である。後楽園ホール大会で使うと予告していた高木だったが、それはフェイント、というか真っ赤な嘘。「大人げない使い方をする」という宣言はこのことだった。
KO-D無差別級王座を保持する遠藤は初経験のプールプロレスを終えた直後で疲労困憊。そこに高木が容赦なく襲いかかった。
(史上初、プールプロレスでのタイトル戦で高木に逆エビ固めを決める遠藤。腰だけでなく呼吸できない苦しさも)
水中逆エビという文字通りの拷問技を食らった高木だったが、おなじみの武装チャリンコ「ドラマティック・ドリーム号」でプールサイドを暴走してのラリアットを敢行。ラダー上からテーブルに寝かせた遠藤へのボディプレスも決めると、ハードコアプールプロレスという、さらなる初体験で大ダメージを負った遠藤だったが、ここから王者の底力を見せた。
ラダーからプールに投げるブレーンバスター。さらにプールの上にかかった橋の上から水中にトーチャーラックボムで叩き落とし、そのままフィニッシャーであるシューティングスター・プレスへ。勢いがつきすぎて半回転プラス、セントーン状態でぶつかる強烈な一撃で、遠藤が4度目の防衛に成功した。
これで「いつどこ権」はすべて使用され、7月15日のビッグマッチ、大田区総合体育館大会のメインが正式決定した。チャンピオン・遠藤に挑むのはKING OF DDTトーナメント優勝者の竹下幸之介。現在進行形のDDT、その最高峰を決めるにふさわしい顔合わせだ。
(フィニッシュはプールにダイブするシューティングスター。大ダメージの高木をプールサイドで抑え込み3カウント)
竹下はプールプロレスにも出場しており、遠藤の防衛を見届けていた。遠藤は竹下と対峙すると「待たせたな!」。竹下は「最高の試合をしよう」と呼応した。
高校生レスラーとしてスポットライトを浴びてデビューした竹下は、常に遠藤の前を走ってきた。KO-D無差別級王座はすでに3度獲得。最多防衛記録を達成してもいる。後楽園でフルタイムドロー、両国国技館大会のメインでも竹下に挑戦して勝てなかった遠藤だが、今回は立場を替え、自分がベルトを巻いて竹下と対峙する。その決意を、彼はこう語った。
(タイトルマッチが正式に決定した遠藤と竹下。拳を合わせようとした竹下だが遠藤は中指)
「竹下やHARASHIMA、カリスマ(佐々木大輔)もそうだけど、そういう選手にベルトを取られたらDDTは進まない。何も変わらない。ここで俺が負けたらDDTは終わる。“結局、竹下か”となってしまう」
DDTを前進させるために、竹下にベルトは渡せない。変化を起こさなければいけない。そう考えている遠藤に対し、竹下は「次こそ遠藤(が勝つ)と応援している人には申し訳ないですけど、まだ僕は負けられない」。大田区大会の後にはオーストラリア遠征でのタイトルマッチも控えており「下半期はシングルのベルトを集めていく」と竹下は言う。
DDTのトップとして常に実力を示し続けてきた竹下。遠藤は人気ユニット・DAMNATIONでふてぶてしさや観客を手玉に取る巧みさを身につけている。久々の一騎打ちは、これまでのどの対戦よりも重く、かつ高みにあると断言していい。
文・橋本宗洋