最新鋭のステルス機「F35」や、陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の導入をめぐって、激しい議論が交わされている。27日放送のAbemaTV『NewsBAR橋下』では、数学の力を使って戦艦大和の建造や日米開戦を止めようとする天才数学者を描いた漫画『アルキメデスの大戦』の作者・三田紀房氏を招き、橋下氏が議論した。
三田:まず、国防というのは公共事業。わかりやすく言うと、家を建てて、そこに警備システムを入れましょうと。そして家計の中から装備を買う。買っただけじゃだめで、使えなきゃいけない。そして、買ったものについて知らないといけない。例えばF35ステルス戦闘機の場合、1機あたり120~130億円と、確かに高い。でも一番先に買うことで、日本にもメリットがある。戦闘機というのは最先端技術が詰まっている情報の塊だから、言ってみればテクノロジーを買って、それを真っ先にバラせるということ。もちろんアメリカだって肝心なところは見せないようにしているけど、日本はお得意さんだから、ある程度は情報交換もできる。言い値というところもあるんだけれど、買ってからの運用までの期間考えるとメリットもあるということ。
橋下:国内はものすごく安心・安全なんだけど、それは海上保安庁や海上自衛隊が尖閣で、あるいは航空自衛隊がロシアや中国の戦闘機に対して緊急発進したり、ものすごい鍔競り合いをやってくれていて、その中での平和だから。そして、"こういうのを持ってますよ"、というハッタリの部分も必要。ミサイルや戦闘機、護衛艦ばっかり買っているというイメージがあるけれど、実は防衛予算の内訳はほとんどが人件費と維持管理費。あとは過去に買ったもののローンとかね。新規に買っている部分というのは結構少ない。そういうのはコストとして重要。
そのためにどんな装備が必要なのかは専門家じゃないからわからないけれど、弾道ミサイルを撃ち落とすイージス・アショアにどんどんお金を入れていくのは疑問。ロシアの場合、 複数の弾頭を搭載できるミサイルも開発している。それをどうやって撃ち落とすのか。つまり、ミサイルは攻撃する方が圧倒的に強いということ。絶対に撃ち漏らさないなんてことは無理なのではないかと思うし、完璧を求めていったら、それこそお金がかかる。自衛隊幹部に「50発撃ってきたらどうするの?」って聞いたら、「無理です」と。「北朝鮮が実験しているようなものを2発、3発撃ったものが日本に入ってきたら撃ち落とせます」と。戦争になったらガンガン撃ってくるわけだから、そうなったらお手上げということ。それに2500億円もかけるなら、ミサイル基地を潰しにかかる、敵基地攻撃能力のために防衛費を使うべきではないかと思っている。でも国会は「憲法問題があるから、イージス・アショア、SM-3ブロック2Aだ」、と。
三田:ああいうのは、一回持つと新しいのがやっぱり欲しくなる。日本人って押しに弱いので、アメリカもセールスに来ると、"ああそうか"なっちゃう部分もあるし。会社の役員もそうだけど、新工場とか新規事業とか、"最初にやった"というのが自分の実績になるからね。お役所でも自分の事業を残して退職したいというのもあるし。防衛省の人たちも頭がいいから。想定問答を用意している。
橋下:『アルキメデスの大戦』の戦艦大和だってそうでしょう?一生懸命、必要性を説いた人たちがいたわけだからね。
三田:担当編集者と「次の連載は何にしようか」という話をしていたとき、ちょうど新国立競技場の建設費用の問題があって。そこから着想を得たました。太平洋戦争も、ああいう状況になると「やっぱり戦争せざるを得ないよね」と国民も結論づけちゃった。でもちょっと待てよと。本気で止める人はいなかったのか、それが自分の中にあった。どうやったら止められたのか、それを漫画の中でトライしていて、一人の力でもできないことはないんじゃないか、行動を起こした人がいれば戦争しなかったかもしれないという仮説を、一つ一つ描いている。
戦艦大和も、「作りたい」という人と、「いらない、やめとけ」という人がいて、その二つの派閥が対立する様子から書けば面白いんじゃないか、という提案をしてスタートしました。漫画の中でも、作りたい人は色んな理由を付けて、一生懸命主張する。漫画の一つの手法として、まず対立を作る、というのがあって、白組と紅組を作ってガチャガチャ喧嘩する様子から始めれば、読者は何?なんで喧嘩してるの?どっちが強いの?となって、読んでくれる。そこから様子を見て、作っていこうと。
橋下:大阪なんかが典型的だけれど、何かあるとすぐ喧嘩になって、それが人々を引き寄せて、視聴率や支持率に繋がってくる(笑)。歴史的にもそう。でも、主人公みたいな天才が出てこないと、防衛省を打ち破れないね(笑)。今の日本の仕組みでは選挙で選ばれた国会議員がその役割を担うわけだけど、あの天才のような能力を持たなくて、どうすればその役割を果たせるのか、だね。(AbemaTV/『NewsBAR橋下』より)
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