先月30日、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が非武装地帯(DMZ)の板門店で再会。現職の米大統領として初めて南北の軍事境界線を越え、3度目の米朝首脳会談を行った。
29日朝、G20後の韓国訪問に合わせ「もし金委員長がこれを見ているならDMZで握手して挨拶する用意がある」とTwitterで呼びかけていたトランプ大統領。実際に軍事境界線を境に金委員長と相対し、握手を交わすと、「私にここ(軍事境界線)を越えてほしいかい?」と尋ね、歴史的な一歩が実現した。
会談の実現に、金委員長は「大統領の親書で合意があったという話があるが、昨日ツイートを見て本当に驚いた」、トランプ大統領は「歴史的な瞬間。SNSで呼びかけを行った。もしいらっしゃらなければ、私は気まずい思いになっていた」とコメント。ネットでは「史上最大のオフ会」とする声もあるが、テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は「両首脳が1日で決まったと言っているが、その前から準備していた可能性はある」と指摘。一連の言動が“演出”である決定的な証拠があるという。
先月10日に金委員長から、23日にトランプ大統領から親書が送られているが、名村氏によるとその後に会談を示唆するやり取りがあったといい、「24日にアメリカの政治専門誌『THE HILL』の記者がトランプ大統領にインタビューしている。そこでトランプ大統領は『金委員長と会うかもしれない』と発言しているが、ホワイトハウスがセキュリティ面を考えて記事に待ったをかけ、すぐには表に出なかった。(会談実施は)決まっていたか、協議をしていたか」と指摘した。
会談が事前に決まっていたなら、トランプ大統領のTwitterでの呼びかけや、それに対する金委員長の対応は演出になる。もしそうであった場合、「私にここを越えてほしいか?」とあえて尋ねたトランプ大統領の心理について、臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は「突然かのようなことを言って自分のムードを作る、主導権を握るというのはトランプ大統領がよく使う手法。今回、金委員長の『来て下さい』という要望に応える形にしたのは、やっかいな相手に対する有効な交渉やコミュニケーションの手段。最終的に軍事境界線を越えることを決めた、この会談を生んだのは金委員長だという気にさせる意味があると思う」と推察した。
一方で、名村氏は北朝鮮の非核化に関して懸念点があると話す。金委員長は今年4月に「年末までは忍耐を持ってアメリカの勇断を待つ」とした一方、トランプ大統領は今回「非核化についてスピードは求めていない」と発言した。
名村氏は、懸念材料は2つあるとし「トランプ大統領は来年に大統領選を控えていて、内容がなくとも目立てばいいというのがこの発言の狙い。一方で金委員長は、トランプ大統領以外の大統領では自分に会ってくれない、厚遇してくれないというのはある程度わかっているはず。この時間軸のズレが、今後逆に摩擦になること」「非武装地帯に来るメンバーに入っていたはずのボルトン大統領補佐官が、この日モンゴルのウランバートルにいた。予定されていたことだと言っているが、この会談に北朝鮮強硬派のボルトン氏を入れたくなかったという思惑がどうもある。そうした米政権内での意見のズレも今後、米朝交渉の不安定材料になることが相当程度あるのでは」との見方を示した。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)







