
(試合後、しばらく大の字になっていた大谷だが、ようやく体を起こすとこの構え。戦闘態勢を崩さなかった)
キャパ300人、新木場1st RINGという会場の規模をはるかに上回る闘いだった。
6月22日のZERO1。恒例のリーグ戦「火祭り」公式戦の好カードに加え、この日はメインイベントとして世界ヘビー級選手権試合が組まれた。チャンピオンは大日本プロレスの関本大介。これが5度目の防衛戦だ。
一方、“外敵”に奪われたベルトを取り戻すべく挑戦したのは団体トップにして象徴の大谷晋二郎。大谷は7月で47歳、キャリア27年の大ベテラン。しかしトレードマークであるその“熱さ”はまったく衰えていない。

(関本の圧倒的パワーに気迫で対抗していった大谷)
リングインすると選手入場ゲートを見据えて座り込み、関本から目をそらさない。「感極まるものがあった」という大谷の目にこもった力はただごとではなかった。
試合が始まっても、大谷は並外れた気合いと集中力を発揮していった。“マッスル・モンスター”とも呼ばれる日本最高のパワーファイター、関本をグラウンドに引きずり込み、巨体を支える足を殺していく。

(強烈なチョップも怯まず受け切ってみせる)
関本が蹴って突き放そうとしても必死の形相で食らいつき、ニーパットを外してさらのダメージを加えていく。ビクトル投げ、カニ挟みからのヒザ十字固めという引き出しもあけた。
関本の逆水平チョップには胸を突き出し、自ら足を踏み出して耐える。「負けてたまるか!」と叫びながらの打ち合いも。関本も容赦しなかった。振り返りざまのジャンピング・ハイキックは大谷の記憶を飛ばす強烈な一撃。大谷コールの中でラリアット、ジャーマン、スプラッシュとたたみかけ、トドメにもう一発。コーナーから後ろ向きにダイブする「天龍エルボー」で3カウントを奪った。

(最後は怒涛の連続攻撃。次は誰が打倒・関本に立ち上がるのか)
「ZERO1の総大将、倒したぞ!」
大谷に深々と頭を下げたものの、関本は敵地であえて挑発してみせた。その牙城はやはり強固だったというしかない。しかし、大谷も意地を張り通し、観客の胸に迫る試合を見せた。真骨頂である魂の闘いだった。試合後のインタビュースペースでも気力は消えず。
「俺はまだ生きてるぞ! 試合には負けた、けど生きてるんだ。俺もZERO1も生きてる。勘違いすんなよ、関本!」
関本は防衛回数を伸ばした。だがそれ以上に記憶に残るプロレスだった。流出したベルトを取り戻すための闘い、結果重視の試合で、だからこそ“ZERO1らしさ”が浮き彫りになったのだ。
文・橋本宗洋
写真/ZERO1
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