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(ファブルを決めた竹下は中指を立ててフィニッシュ宣言)

 KO-D無差別級王座4度目の戴冠を果たしたばかりの新世代エース・竹下幸之介が、早くも初防衛に成功した。

 7.15大田区大会で遠藤哲哉を下し、ベルトを巻いた竹下。30分超えの激闘だったが、一夜明けての会見で「負けそうな場面がなかった。僕を満たしてくれる相手がほしい」とコメント、底知れない怪物ぶりを感じさせた。

 その数日後、7月21日の後楽園ホール大会では、イギリスから来日中だったクリス・ブルックスと初防衛戦。実は竹下自身、2年ほど前からブルックスを団体に推薦していたという。竹下も楽しみにしていたタイトルマッチだった。

 ブルックスは来日すると「昔から好きだった」というDDTスタイルにどっぷり浸かった。リング内を自転車で暴走し、プールプロレスで勝利。「市原ぞうの国」では象の糞に頭から突っ込んだ。

 このタイトルマッチは、ブルックスにとってDDTでの初ツアーの集大成。リング内外で持ち味を全開にしていった。客席入場口のスロープ状になった部分を走り、テーブルめがけてのRKO。リングではDDT名物のアイテム・プラケースを積み重ね、そこに竹下を寝かせてダイビング・セントーンを叩き込んだ。

 竹下はプラスチックの破片とともに悶絶。しかしそこからチャンピオンの底力を見せた。雪崩式ブレーンバスターにラリアット。普段はフィニッシュにすることも多いファブルも決まったが、あえてそこでフォールせず、トドメのクロスアーム・ジャーマンにもっていった。“強い”勝ち方だ。それでいてブルックスの印象が観客にしっかり残る試合でもあった。

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(プラケースを積んだ上でのダイビング・セントーンなど破天荒な攻撃を連発したブルックス。「またすぐ日本に戻ってくるよ」)

「満たされた~! 痛み、歓声、アドレナリン。これだからやめられないんですよ、プロレスを、DDTを」

 試合後の竹下は、そう言って満足げな表情を見せた。またこんな言葉も。

「レスラーには自分に(相手を)合わさせる人と、自分が合わせる人がいる。僕は後者。だから僕にはチャンピオンが向いてるんです」

 挑戦者の個性に合わせ、やりたいようにやらせて持ち味を出し切らせる。その上で最後に自分が上回る。そういう“王者型”の闘いが竹下の身上なのだ。路上プロレスも、女子選手との闘いも苦にしない“懐”がこの男にはある。

 タイトルマッチでもそうでなくとも、誰が相手でも常に全力だと語っている竹下は、だからこそ次期挑戦者を指名しなかった。曰く「僕とタイトルマッチをやりたい人とやりたいです。早いもの勝ちで」。

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(メイン後に対峙した竹下と青木。1年前なら考えられなかったタイトル戦だ)

 そこで登場したのが青木真也だ。いまやDDTに定着、大田区大会では男色ディーノという難関をクリアした。すっかりなじんでいるようでいて、MMAの強豪としての“異物感”も保っている。これがKO-D無差別初挑戦。舞台は9月1日の大阪大会だ。

 ブルックス戦を終えた竹下に「大変だな、こんな試合して」と青木。「地に足ついたしょっぱい試合しよう」とアピールしてみせた。これに竹下も「歴史に残るしょっぱい試合しましょう」。

 しょっぱい、とはどういうことか。誰にでも分かりやすい、いかにもな“いい試合”をするつもりはないということだろう。だがそれは、単につまらない試合ということでもなく、プロレスの新たな可能性の探求であるはずだ。

 竹下と青木はこれまで2度対戦して1勝1敗。竹下が「プロレスリングの寝技」で青木のグラウンドに対抗し、名勝負となった。竹下は青木との攻防に手応えを感じて「ライバル認定」している。

 ただ竹下曰く「今回はタイトルマッチというより3度目というのがキー。1回目は何してくるか読めない。2回目は読めてくる。3回目になると、また振り出しに戻って読めなくなる」。

 男色ディーノと唇をかわし、リング上でケツを出すことも当たり前なのが今の青木だ。どんな闘い方でくるか分からないが、竹下は王者としてそれに合わせ、上回ろうとするだろう。異色のタイトルマッチで、王者の度量が試される。

文・橋本宗洋

写真:(C)DDTプロレスリング

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