芸歴20年を迎えるお笑いコンビ・キングコングが今、注目を集めている。中でも話題になっているのは昨年10月からYouTuberとして活動を始めた“カジサック”こと梶原雄太の活躍だ。
公式YouTubeチャンネルの登録者数が、2019年末までに100万人を達成しないなら「芸人を引退する」と宣言していた梶原。7月11日、見事登録者数100万人を突破し、芸人引退を回避した。
今回、編集部では『しくじり先生 俺みたいになるな！！』に“先生”として出演が決まった梶原雄太にインタビューを敢行。人生の転機になった『快傑えみちゃんねる』（上沼恵美子の冠番組）への出演、ストレスによる病気で仕事を休養した過去などを聞いた。
公式YouTubeチャンネル登録者数が100万人突破 相方・西野亮廣には「100万人いった時点で連絡」
「（登録者数100万人を受けて）本当にありがたい。100万人いったとき、深夜24時半くらいに生配信をさせてもらって。時間も遅かったので、次の日に僕のYouTubeに出てくれた芸人さんたちには全員連絡しました。僕の連絡より先に『おめでとう！』って連絡をくださる方もいて。とてもあたたかい言葉をいただきました。相方の西野には100万人いった時点で連絡しました」（キングコング・梶原雄太）
キングコングといえば、梶原の相方である西野亮廣が、2016年より肩書きを“絵本作家”としたことで話題を集めた。オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の立ち上げもあり、以降西野といえば「ベストセラー絵本作家」「日本最大のオンラインサロンオーナー」などの“異名”がついている。
そんな西野と梶原の出会いは約20年前。吉本総合芸能学院（NSC）で出会った二人は1999年9月にコンビを結成。翌年にNHK上方漫才コンテストで最優秀賞を受賞し、これは結成5カ月かつ19歳での受賞となった。NSC在学中におけるこの快挙はキングコングが初であり、それ以後も在学中の受賞者は出ていない。
その後も2001年にABCお笑い新人グランプリ最優秀新人賞、OBC上方漫才大賞新人賞、YTV上方お笑い大賞最優秀新人賞と、その年の賞を総ナメに。2002年、キングコングは若手の中でもレギュラー9本を抱える“超売れっ子”の存在になった。そんな二人だが、梶原によるとNSCでは「ほとんどの人に嫌われていた」という。
▲梶原雄太、NSC在学中は「ほとんどの人に嫌われていた」
「周りからの嫌味はすごかったですね。でも、僕が逆の立場だったら、嫌味を言う側になっていたと思うんです。対して実力もない、高校卒業してちょっと経った若いやつが、面白くもないのにキャーキャー言われて、すぐテレビ番組に呼ばれてレギュラーになっていたら、人間だから妬むと思います。そんな中でも仲良くしてくれたというか、優しくしてくれた人も少なからずいるので、そういう方々と今YouTubeで話をするのがすごく幸せです」
今ではYouTubeで動画を約300本配信し、トータル視聴回数が2億回を超えた梶原（※データは2019年8月20日現在）。中でも南海キャンディーズ・山里亮太とのガチンコトーク動画は、再生数が300万回を超える人気となっている。
▲同期の南海キャンディーズ・山里亮太とYouTubeでガチンコトーク
「山ちゃん（山里）とは19年間共演がなくて。初の2人トークでしたが、あいつはクソですね（笑）。でも、山ちゃんのことを考えると、全く僕の動画に出る必要はなかったんですよ。出なくてもいいのに出てくれたってことは、やっぱり彼には愛情があるなって感じています」
2001年に『はねるのトびら』の放送が始まり、10年以上続くロングラン番組になると、キングコングの知名度は爆発的に上昇。番組も最高視聴率24.1％（※水曜よる8時台）を記録し、それに伴いキングコングも多忙を極めた。
そんな絶頂期の中、2003年、突然キングコングが活動を休止。休止の理由は「梶原が体調を崩し入院したことによる休止」と発表された。しかし、真実は梶原が「大阪のロケを連絡なしで飛ばして消息不明になっていた」という。
2003年の2月、22歳で芸能界から失踪した梶原。原因は仕事が激増し、キャパオーバーになり、「精神的に参っていた」と当時を振り返る。
失踪中、すべての人から連絡を絶っていた梶原だったが、ふと携帯の電源を入れるとすぐに着信が鳴った。とっさに電話に出るとFUJIWARA・藤本敏史からの電話だった。
▲梶原のYouTubeにゲスト出演した際に、FUJIWARA藤本が涙？！
医師からの診断結果は心身症。梶原の場合、症状として対人恐怖症や記憶喪失などがあったという。藤本の言葉もあり、紆余曲折を経て、病から復活した梶原は、当時は「自分との“打ち合わせ”ができていなかった」と振り返る。
「病気を経験して、復活した後は逆にめちゃくちゃ強くなれました。今思えば、当時は忙しすぎて自分との“打ち合わせ”が全くできていなかった。どうしてテレビに出てスベってしまうのか、どうして番組に呼ばれなくなったのか……そういうことが考えられていなかった。今は、自分のことを冷静にちゃんと俯瞰して見られるようになった。だから今、焦りは全くないです」
『快傑えみちゃんねる』レギュラーが転機に「上沼さんとの出会いがあったから、今の僕がいる」
梶原は関西テレビのトークバラエティ番組『快傑えみちゃんねる』にも、レギュラーとして出演中だ。2018年の「関西人1万人が選ぶカンテレ人気番組ベスト20」でも第1位に輝いている同番組だが、どのような出会いがあったのだろうか。
「僕はレギュラーになる前は、関西出身なのに上沼恵美子さんのことを『きっと面白い人なんだろうな』って思っているぐらいで、本当に何も知らなくて。番組には2015年の1月からレギュラーとして出演していますが、いざ自分がプロの芸人になって、初めて上沼さんとがっつり番組をすることになって。最初は衝撃でした」
上沼といえば、1971年、姉妹漫才「海原千里・万里」の海原千里としてデビュー。コンビ解散後はタレント・上沼恵美子として活躍し、NHK紅白歌合戦の司会やM-1グランプリの審査員などを務めてきた。
そんな上沼を梶原は「偉大な方なのに、すごい礼儀正しいんです。面白い人って礼儀正しい人が多い。僕は日本で一番面白いのは上沼恵美子さんだと思う」と断言する。
「YouTubeを始める前、上沼さんが僕に『あなたはスターになれる』って言ってくれたんですよ。本当に正直なところ、上沼さんのあの一言で今の僕がある。YouTubeも登録者数が100万人を超えましたが、まだまだこれで終わりじゃなくて。僕は自分がスターになったとは全く思っていませんから。これからも上沼さんが言ってくれた『あなたはスターになれる人』という言葉を胸に生きていきたいです」
梶原はYouTuber・カジサックとして活動を続けるが、もちろんキングコングとして相方・西野との漫才も続けていくという。
「漫才に関しては、セーブしたことはないので、今まで通り月20本以上はやっていきます。西野とは心の中でつながっているというか、暗黙の了解ですよね。『結局僕らのスタートって何だった？』って考えたときに、やっぱり僕たちは漫才がスタートだと思う。吉本には『なんばグランド花月』という大きい劇場がありますが、病気で休んだ期間を除いて、デビューからそこへの出演は1回も途切れていないです。1カ月に1回は絶対に出ていて、それは絶対に続けていきたい」
最後に、梶原から心の病を抱えている人に向けてメッセージをもらった。
「とにかく『自分ひとりで抱え込まえないで！』って言いたい。相談できる人が近くにいたらいいのですが、誰に相談したらいいか、分からない人もたくさんいると思う。でも、そういう人はまず自分と“打ち合わせ”をする時間を取ってみてください。自分との“打ち合わせ”ができなかったり、一人で考えたときにやっぱりしんどいなら、絶対に親や兄弟、信頼できる人と話した方がいいです。心の病は、ひとりで抱え込まないことが本当に大切なんです。今、働きすぎで苦しんでいる人やストレスに悩む人が目の前にいたら『負け顔を見せてもいいんですよ』って伝えたい。僕は負け顔を見せられずに、大失敗をしてしまった。どうかあなたの負け顔を見せてください」
9月2日と8日に放送される『しくじり先生 俺みたいになるな！！』では、梶原が“先生”として登場。キングコング結成時のエピソードや、多忙によるストレスで休業した過去を赤裸々に語る。
【放送に向けたコメント】
▼梶原雄太さんより
「今回『しくじり先生』の先生として出演するキングコングの梶原雄太です。精神的な病の話もあり、今回の出演には自分でも葛藤がありました。リアルに考えたとき、この授業を苦しんでいる人に聞いてもらいたいなっていう気持ちが強かったので、出演することを決めました！ カジサックとしてYouTubeで投稿している内容とはまた違いますが、仕事が忙しくて限界になって苦しんでいる人、過密スケジュールの中で苦しんでいる人の心に届くと嬉しいです」
■テレビ朝日系『しくじり先生 俺みたいになるな!!』放送概要
放送日時：毎週深夜0時20分～深夜0時50分 ※一部地域を除く
■『しくじり先生 俺みたいになるな!!』地上波完全連動企画 配信概要
・Abemaビデオ配信開始日 ▶︎ 9月2日（月）深夜0時50分から
Photo：野原誠治
