(大石に逆エビ固めを決め勝利した我妻。フォームの安定感は完ぺきと言っていい)
世界最大級のアイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL」(TIF)にはたくさんのメジャーアイドルが出演するが、同時にブレイク前のアイドルが幅広いファンに“見つかる”場でもある。しかしTIFに出ることでプロレスファン、プロレス業界に“見つかった”アイドルは初めてだろう。ハコイリムスメの“ぽにょ”こと我妻桃実は、TIFでアイドルとしてだけでなくレスラーとしての逸材ぶりをこれでもかと発揮したのだった。
その舞台は、TIF初日の8月2日に行なわれたDDTによる路上プロレス。多数のレスラー、アイドルが参戦するバトルロイヤル形式の闘いだ。野外ステージ「スマイルガーデン」でアップアップガールズ(プロレス)が渾身のライブを終えたところで、男色ディーノたちが登場。ここから、いつでもどこでも誰でも挑戦可能なアイアンマンヘビーメタル級王座をかけた大乱戦がスタートした。
(塩川は大石にパロスペシャル。ディーノの尻に顔面を押し付けられた大石はあえなくギブアップ)
まずは大石真翔が坂口征夫を襲撃して王座奪取。観客が至近距離で見つめる芝生エリアへと戦火が拡大すると、参戦アイドルが次々とベルトを巻く展開に。塩川莉世(転校少女*)が大石にパロスペシャルを決め、ディーノがケツを押し付ける「男色ナイトメア3D」でアシストし勝利。塩川にディーノが勝つも、坂口が蹴りをぶち込んだところに追撃した沢口愛華(dela)が王者に。その沢口にスリーパーを決めた伊藤麻希もアプガ(プロレス)の全員攻撃を食らい、今度は夏目みさき(chuLa)が戴冠する。
さらにディーノ、大石とベルトが移り、伊藤がディーノのナマ尻にカンチョーを突き刺すと、その指を大石の鼻へ。伊藤はプロレスラーとしての成長とともに路上適性も上がり続けているところを見せたのだった。
ディーノの奥深くにこもっていた臭いで深いダメージを負った大石にアックスボンバーを決めたのが我妻。昨年、アイドル腕相撲ト大会を制した剛腕がここで活きた。フィニッシュは逆エビ固め。昨年、伊藤に仕掛けたハーフボストン以上の決まり具合で大石をギブアップに追い込み、ベルトを奪取した。そしてここで試合時間が終了、我妻がTIF路上プロレスの最終勝者となった。我妻は翌日のアイドル腕相撲で連覇を達成(決勝の相手は夏目)、TIFで“2冠王”となった。
(試合後のインタビュー中に伊藤に襲われ、ベルトを手放した我妻だがポテンシャルの高さは充分に見せた)
試合後、コメントの最中に伊藤に襲われベルトを奪われた我妻だったが、2年連続の出場でレスラーとしてのポテンシャルをこれでもかと炸裂させた。
繰り出す技はことごとくパワフルであり、なおかつ表情も迫力に満ちている。勝った時のガッツポーズも“ファイター”そのもの。言葉にするなら「やった~」ではなく「ウッシャー!」といった感じで、逸材としか言いようがない。「これで本格的な練習をさせたらどこまで伸びるのか」と思わせるのだ。
アイドル勢のセコンドを務めたDDTの“大社長”高木三四郎もその才能を絶賛。そもそもアイドルは“客前での度胸”という面でプロレス向きという持論を持っている大社長だけに、この日出場したアイドルたちをマット界にスカウトしたいと言う。
「みんなでデビューしよう! 事務所は俺が口説くから」(高木)
ちなみにハコイリムスメの運営スタッフも腕相撲、路上プロレスに並々ならぬ意気込みで臨んでおり、毎回レスリング用のコスチューム(シングレット)を我妻に支給。今年は「鬼になる」(我妻)をテーマとし、シングレットに「鬼」の文字が入っていた。“キックの鬼”沢村忠、“獄門鬼”マサ斎藤に続く“TIFの鬼”誕生である。
「まさか自分がプロレス方向にいくとは思ってなかったので……」と、自らの才能に困惑気味でもあった我妻。「9月末にグループを卒業するので。進路は間違いのないように、ブレないように決めていきたいです」と語っており、今後の活動はプロレスファンにとっても気になるものになりそうだ。
文・橋本宗洋