わずか3日で中止に追い込まれた、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」。6日、出展アーティスト93組のうち、72名が連名で抗議声明を発表した。
その声明文は「私たちアーティストは様々な方法論によって、人間の抱く愛情や悲しみ、怒りや思いやり、時に殺意さえも想像力に展開させ得る場所を芸術祭の中に作ろうとしてきました」と、殺意という強い言葉までも含んだ内容となっている。
今回の騒動に関して、新潟で開催される大地の芸術祭「越後妻有アートトリエンナーレ」のオフィシャルサポーターを務めるリディラバ代表の安部敏樹氏は「まさに津田さんの紹介で接点ができたので、今回の件はすごく難しいなと思って見ている」と率直な意見を述べつつ、「日本にアートの文化が成熟していない」と問題の側面を指摘する。
「世界のアート文化をみると、日本には元々アーティストが作った作品をお金を出して買うという文化がない。世界のアーティストからしても、“日本に来て作品を作るのは何か無駄だよね”となる。日本は美術館などにはお金を出すが、作品を買ってくれるギャラリストやコレクターの人たちがあまり育っていない状態で、アーティストからみて魅力的な国ではなかった。そうした中で、美術館の中だけでなく、文化や伝統を含めて地域の中にアート作品を作っていけばいいのではと、大地の芸術祭が始まった。その中にあいちトリエンナーレもあり、この流れ自体は海外的にはすごく評価されている。文化庁や県が、美術館よりももう少し広い概念としての芸術祭にお金を入れるということは、日本の文化政策として非常に合理的だったことは事実だし、とても意義があったと思う」
また、「芸術というのは常にロックンロールというか、反体制に近い文化がある」とした上で、「一方で全てのお金を自分たちで賄ってやれるほど、日本は文化が成熟していない。これまでプロデューサーの方々は、現場のアーティストの“とにかく色んな表現がしたい”という思いや表現の自由を守らないといけないと思っている一方で、国のお金が入っていることとのバランスを取りながら、調整しながら少しずつ積み重ねてきたところがある。それを踏まえて津田さんやあいちトリエンナーレがやれたのかということは、もう少し考える余地があると思う」との見方を示した。
今回、特に批判を浴びたのが慰安婦を想起させる少女像。安部氏は「表現の不自由展も少女像ひとつにフォーカスを当てたかったのではなくて、“表現の自由に対して不自由になっているものがある”と問題提起したかった。あいちトリエンナーレには他の作品もたくさんあって、この展示はほんの一部。語るのであれば、現地に行って見た上で冷静になって議論すべきだ。だが、ほとんどの人は“見た感”で終わっていて、見てもいないものをああだこうだと外から言うのが正しいのかというのも僕は思っている。あまり感情的になりたくないというのと、あいちトリエンナーレはまだ開催しているので、表現の不自由展はないけれど、見に行って芸術祭というものがどういう思想で行われているのかを多くの人に知ってもらって、感じてもらいたいなと思う」と も述べた。
(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
▶【映像】“表現の不自由展“中止に出展作家が反論
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