「愛国心=反日が成立してはいけない」「日本のプリンが食べられないのは嫌」韓国人・在日コリアンが語る“日韓の溝”
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 日本製品の不買運動に、反日デモ。連日報じられるのは、戦後最悪とも言われる日韓関係だ。韓国の調査会社によると、韓国政府の日本への強硬な対応を支持する人は54%、韓国経済の見通しについては62%が悪化すると答えている。

 互いに引くことなく、主張し合う日本と韓国。しかしそれは、政治だけの問題ではなくなってきている。では、日本で生活している在日コリアンや韓国からの留学生、日本で働く韓国人は、戦後最悪の日韓関係をどう見ているのだろうか。9日のAbemaTV『AbemaPrime』は議論した。

■「母から『なるべく流ちょうに日本語を話して差別を受けないように』と」

 日韓関係が悪化する今、日本で生活していることについて、ソウル出身の韓国人留学生ハ・ゴンウさんは「母から『なるべく流ちょうに日本語を話して、服装も日本人のように着て、差別を受けないように』と心配された。そこまで問題が深刻なのだと思う。(差別を受けた経験は)今のところはない」と話す。

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 ソウル出身で立命館大学を卒業後、日本で働くシン・チヒョンさんは「韓国に1週間くらい戻った時、家族も友達もみんな真っ先に口にする言葉が『心配。大丈夫なの?変な目に遭ってないの?』。日本に住んで10年近いが、今まで1回も(差別を)受けたことがない。心配しているのは日本も韓国も一緒だと思った」と説明。

 在日コリアン3世でフリーライターの金村詩恩さんは「私も父親に『電車に乗るときは気をつけろ』『在日として物を喋るということ自体がひとつリスクになっているから』と。27歳だが、いまだに親に『今日何時に帰るからね』とLINEを送っている」と明かした。

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 文大統領は、日本による輸出規制は「徴用工問題の報復だ」として、日本を非難する姿勢を崩さない。韓国の日本に関する報道は、彼らにどのような影響を与えているのだろうか。また、日韓の政府に対してどのような考えを持っているのだろうか。

 ハさんは「日本の輸出規制を(徴用工問題の)経済報復だというが、その言葉が事実なのか疑う必要があると思っている。今の韓国はプラトンのいうような洞窟に例えられる。政治によって限られた視野しか見せられていない。物事を本当に疑うことからまず始める。あとは自分のこと。自分の先入観とか国、メディアを疑って、それで真実とは何かを求めなければいけないと思う」との考えを述べる。

 一方、シンさんは「両方のニュースにあまりにも感情的すぎる記事がたくさんあると思う」と指摘。「韓国で一番ユーザーが多いNAVER、日本だとYahooだと思うが、真っ先に出てくる日韓関連の記事が小学生レベルの感情的な言葉になってしまっている。日本人だから日本のニュースだけを見るとか、韓国人だから韓国のニュースだけを見るのではなくて、第三国でもいいから世界ではどう見られているのかとか、情報を自分で精査しながら積極的に取ろうとする努力が大事」との見方を示した。

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 また、ハさんは「文大統領は『ウリクミン』といって、“私たち国民”という言葉をよく使うが、本当に国民のためなのか考えてみないといけない。ニュースでも、徴用工問題で補償金をもらった人がいるが、それについてはあまりニュースや記事で取り扱われない。そのように韓国政府に有利な情報が出ているので、注意してみなければならない」とし、「僕の幼馴染は日本が大嫌いな子だが、彼女は日本人。その子が言うには『お前韓国人だろ。韓国人なのに愛国心ないの?』と。僕が注意してほしいのは、“愛国心=褒められること=反日”という数式がそのまま成立してはいけないということ」と訴えた。

 シンさんは、SNSを通じて「#好きです韓国」「#好きです日本」という動きがあることをあげ、「メディアではそういうのは一切報じない。私たちはテレビだけで情報を取り入れる世代ではないので、そういう面では希望を感じている。ニュースや記事で情報を仕入れている人は反日やケンカになりやすいと思うが、そういう人たちと直接話してみると、どちらも現地の友達がいないような気がした。『韓国人の友達、知り合いいるの?』と聞くといない。韓国も一緒で、リアルな接点の経験がひとつもない中で、なにが起こっているのかが分からないという感覚になってしまう。意見が分かれることは健全なことだが、せめて自分が持つ意見に対しては、正確な情報のもと、自分の頭で考えて自分の言葉で主張してほしい。それで喧嘩が起きるなら賛成」と語った。

■韓国国内での日本の認識は「加害者」?

 文大統領の「加害者である日本が盗っ人猛々しく大口をたたく状況を決して座視しない」「我々は二度と日本には負けない」という対立姿勢はどのようにとらえているのか。

 ハさんは「“盗人猛々しく”という言葉の原文は“チャッパンハジャン”といって、加害者なのに逆に怒るとか屁をこいたのに逆に怒るといった意味が含まれている。それを盗人という単語で表現するのは注意が必要。逆に、韓国側が安倍総理の言葉を翻訳して記事にする場合にも注意して読む必要がある。加害者というのはいろんな意味があると思うが、今回は“やり始めた側なのに”という意味」と説明する。

 では、一般的に韓国国内で「日本は加害者」と認識されているのだろうか。ハさんは「補償金を受け取っているということが実はある。パク・ユハという教授が言うには、謝罪も11回していると。結果ではなくて、因果関係。どういったことが実際にあったのか、事実関係とか結果だけを見てはいけない」と指摘。さらに、「留学の準備をしている友達は、韓国政府のこうした政策は疲れたと。あまりにもメディア操作が多いので本当に疲れたと言っている。最近、円高もあり、留学生にとって本当に不幸な話だが、そういった原因が文大統領にあると学生や若い人たちは思っている。僕が聞きたいのは『どうして韓国側は日本が謝罪しているのに受け取ってくれないのか』。それをどうしたら受け止めてくれるのか。なぜ今までしなかったのかということを考えてみなければいけない」と疑問を呈する。

 シンさんは「自分の周りの人たちだと、完全に『補償されていない』『騙されている』という感情がベースにあったうえで、全ての出来事を解釈している気がする。実際に日本人が韓国の慰安婦のセンターみたいなところに行くと、『見に来てくれてありがとう』とすごく歓迎されるらしい。彼女たちが望んでいるものとか、国民の感情もその辺にあるような気がする。誰が間違っているとか、やることをやったという話の以前に、発言をころころひっくり返して、ちょっと治ってきた傷をまた広げてというようなことは止めてほしい」と述べた。

 金村さんは「私のおじいさん、おばあさんは植民地の朝鮮半島の出身者で、よく彼らから日本の話を聞いた。そのおばあさんは、実際に神社参拝拒否運動というのをやって憲兵に捕まりかけた人。私は日本の公立学校に通っていて、授業でおじいちゃん、おばあちゃんの戦争体験をまとめてきなさいとなると、おばあさんの植民地の体験話になる。そんなものは先生に出してもダメだと子どもながらに思った。なので、本に頼って自分で書いてみたりしていた。根底にはそこがある。日本の問題、韓国の問題というふうに、対岸の火事にしてしまうというのがある」と自身の経験を交えて語った。

 金村さんは一方で、「例えば日韓基本条約を一緒に議論している時に、『日本が植民地統治したおかげで、韓国は近代化した』ということを言ってしまう。まだまだ日本の中には(そういう思考があり)、非常に難しい」とし、「上の世代の人ほど傷が大きい。在日2世の人たちとかと話していても、すごくいろいろな傷があったんだなと感じる。その分こっちが受け身にならなくちゃいけない部分と、その人たちに『そうではない別の面もあるのでは』というパスを出す能力が必要」と述べた。

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 日韓関係の悪化で、文化交流などに影響を及ぼすとの懸念もある。ハさんは「韓国の場合はK-POP、日本の場合はアニメーション。それが若い世代の中で支持されているが、国の政治がどうのこうのではなく、自分が好きなもの、自分の意志で選んでいる。僕も緊張したので今日プリンを買って食べたが、韓国には卵を使ったプリンがなかなかない。韓国で日本のものは買わないとなってプリンを食べられなくなるのは、個人の自由の前に国が先にきてしまうのは本当にそれでいいのかと考えてしまう。アニメが好きとかK-POPが好きとかは、個人の自由を貫いてほしい」と述べた。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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