「アンパンチ」が暴力的!? 漫画の“表現自粛”懸念も… 江川達也氏「滅菌した世界ほど世の中は甘くない」
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 12日、Twitterでトレンド入りした「#アンパンチに代わる非暴力的な解決策」というワード。きっかけとなったのは、11日に投稿された「『アンパンチ』で暴力的に?心配する親も…メディアの暴力シーンは乳幼児にどう影響?」という記事だ。

 「アンパンチ」とは、『それいけ!アンパンマン』(日本テレビ系)の主人公・アンパンマンが繰り出す攻撃のこと。悪さをするばいきんまんを「アンパンチ」でやっつけるのが恒例だが、記事によると「この場面を見た乳幼児が『暴力的になる』と心配する親の声がネット上で見られる」という。

 そもそも、なぜいま「アンパンチ」が槍玉に上がったのか。トレンド入りしたことで、昨今話題の“表現の自由”への規制につながるきっかけにならないのだろうか。12日放送のAbemaTV『AbemaPrime』は、記事を配信した「大人んサー」編集長の星大樹氏と漫画家の江川達也氏らとともに議論した。

■「正直ここまで大きい反響があるとは思わなかった」

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 記事は、アンパンチの暴力的影響を懸念する親の声を発端に、暴力シーンがどれくらい成長に影響するのかを狙いとしたもの。創価大学文学部の渋谷明子教授の解説を交え、「親が描写を心配することは必要」「心配なら見せないことも選択肢のひとつ」という懸念とともに、「作品からは優しさも同時に学ぶことができる」「一緒に見せながら様々なことを教えるのもよい」という良い影響についても伝えている。

 記事の反響について星氏は「ある程度はあるだろうという予想の元に記事を出したが、正直ここまで大きい反響があるとは思っていなかった。実際に書いた記者は戸惑いの方が大きかったようだ」と話す。

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 また、このタイミングで記事を配信したことについては、「特に時事性があるとか季節性があったということではなく、うちの男性記者が電車の中で『アンパンチをうちの子どもがやって困る』という会話を耳にしたことが発端。『じゃあそれって実際に影響するんだろうか』というところから記事に至った」と明かした。

 記事が反響を呼んだ理由について江川氏は「みんなが心の中で暴力的だなと思ってるところがちょっとある。データとして出ているのが、暴力と性描写は売れるということ。それは暴力的なものを見ていたから暴力的になっているわけではなくて、人間の本質として好きだから。それをどううまく社会的にするかが作品だ」との見方を示す。

 一方、WEBクリエイターのシモダテツヤ氏は「こういう話って親がその都度注意してあげればいいと思うのに、最近はその責任すら誰かのせいにしたいというのがまかり通り始めているのかなという気がする。自分が強く言えればいいけど言えないから、じゃあアニメのせいにしよう、ドラマのせいにしようと。それこそ、『育児放棄してますよ』って自ら声をあげてるんじゃないのかというくらい。実際にアンパンマンを見て育った人は大勢いるが、その中で人を殴ったことがある人はむちゃくちゃ少ないと思う」と語った。

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 幻冬舎の箕輪厚介氏は「ある表現があるからといって社会がそうなるわけではないから、多種多様な表現があっていいと思う」とした上で、「アンパンマンはあのままでいいけれど、それとは別軸としてまったく新しい概念のヒーローが生まれてきてもいいという空気感があるのかもしれない」と説明。「悪い奴らと揉めるとテーブルを挟んで話し合いになるとか?」との意見には、「あながちジョークのようだが、20年後からしたらそっちが主流で、『なんで毎回パンチで解決してんだ』ってなるかもしれない。暴力で解決というのは、100年後の子どもが見たら『ウケる』という世の中になってもおかしくないような気はする」との考えを述べた。

 記事をめぐっては賛否が分かれ、様々な意見が飛び交っているが、それも狙いなのか。星氏は「ないと言えば嘘になる。読んでもらうためには、記事のタイトルでいかに引っかかりを作れるかが我々のスキルでもあるので」と明かす。

 また、記事が議論を呼ぶ構造についてシモダ氏は「僕も話題になるような広告・プロモーションを色々作ってきた。まず、アンパンマンはどの世代も知っていて、見てきた人口も多い。かつ暴力がありかなしかがアニメーションの世界でどうなのかということは、どっちが正しいかも決まっていないから議論に乗っかりやすい。いろいろな要素が入ってるなと思った」と見解。一方で、「これによってすごく面白くない世界に転がっていくようなことにはなって欲しくないとも思う」と懸念を示した。

■タバコ→キャンディ、銃→ジョウロに 表現自粛の是非は

 今年3月、少女漫画誌『りぼん』で連載を持つ漫画家の津山ちなみさんがTwitterで「りぼんにおけるタバコ描写規制がどんどん厳しくなり、(作中のキャラクターである)レイジに煙管(キセル)を持たせることも今月号で最後になります」と明かしたが、実際に日本や海外の表現規制はどうなっているのだろうか。

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 日本の人気作品『ONE PIECE』の海外での表現を見ると、くわえタバコがキャンディに変わっていたり、流血する右腕の血が消えていたり、手に持っている銃がジョウロに差し替えられたり、さらには刺青も消去されるなど規制は厳しくなっている。

 江川氏によると「タバコはかなり規制される」そうで、「海外に持っていくと全部書き直されたりとか。俺は気を使わずにガンガン書いていたけど、編集者と喧嘩になった。性描写もかなりやったけど、『載せられない』と言われてシールを貼った。いずれ取れるように、描いたものが全部公開できるような時代が来ると思ったけど、14年以上経ってもそういう時代が来ない。余計タイトになってしまった」と自身の体験を踏まえて話す。

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 続けて、「あまり多くの人が見ないところでは(規制は)緩くなっている。それはそれでいいと思うが、メジャーなところももっと緩い方がいいなと思う。要するに、滅菌した世界を知っていても、世の中はそんなに甘くないしいい人ばかりじゃない。それをちゃんと見せて、その中でどうするかを作品で問うた方が社会的には絶対にいいと思う」と訴えた。

 これに箕輪氏は、「テレビとかメジャーな作品だけがパブリックな規制にあって、どんどんきれいなものになっていくと、現実もそうなれば辻褄が合うが実際は変わらない。触れるものがあまりにも時代遅れというか、嘘の作り物に見えると人は離れていき、今テレビに起こっているのはそういうこと。そんなものに若い人は熱狂しない」との見方を示す。

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 最後に江川氏は「日本のアニメとか漫画は、エロの規制は強いけどバイオレンスは結構緩い。それを結局、海外に出す際に抑えても、いくらでも海賊版とかがで出てくる。どんなに規制しても“闇”でどんどん出てくるので見ちゃうし、描く人は描くので、それよりも親とか周りがこういうものだよって教えたりとか、監視内にあればいいんじゃないかと思う」と語った。

(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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