(スーパーバンタム級のベルトを獲得した江幡。KNOCK OUTの“顔”としても期待される)
18日、キックボクシングイベントKNOCK OUTが大田区総合体育館大会で開催された。REBELSを運営する山口元気氏をプロデューサーに迎え、新体制でのリスタートとなった今大会。REBELSルール(ヒジ打ちなし)の試合も組まれるなど、ヒジありのキックボクシングにこだわってきたこれまでの大会との変化が見られた。
メイン企画となるスーパーバンタム級王座決定トーナメントは、4人参加で1回戦と決勝を一気に実施。いわゆるワンデートーナメントだ。旧KNOCK OUTでもトーナメントは行なわれていたが、1日1試合で複数大会にわたるものだった。
今回のトーナメントで注目されたのは、日本を代表する軽量級キックボクサー、江幡塁と小笠原瑛作。昨年のワンマッチでは江幡が勝利しており、小笠原としては決勝でリベンジしたいところだった。とはいえワンデートーナメントはドラマがつきもの。小笠原は左ローキックを効かせてスペインのミケール・フェルナンデスに判定勝ちしたものの、転倒した際に反則の蹴りを食らって鼻を負傷してしまう。
江幡と対戦した大野貴志は“格下”と見られていたが、だからこそ「守るより獲りにいく方が気持ち的に楽」と思い切りのいい闘いぶりで反逆心を叩きつけた。
1ラウンドに江幡が左フックでダウンを奪ったものの、そこから大野が猛反撃。ヒジ打ちで江幡を出血させる。結果としては江幡の判定勝ちだったが、大野が株を上げる試合だった。
小笠原は鼻を負傷、江幡は目の上に傷を負った。ドクターは決勝を行なうことに難色を示したという。しかし両者が「(試合延期は)ありえない」とリングに上がったそうだ(このあたりは競技運営として賛否両論あるだろう)。
試合はリベンジを期す小笠原がサウスポーの構えから左の蹴りをアグレッシブに放つ展開。しかし江幡も要所でパンチ、ヒジを繰り出して主導権を譲らず、2ラウンドに右ストレートでダウンを奪取。前回の対戦でもフィニッシュになったパンチだ。
「僕は2回目の相手と相性がいいんです。研究してきたことが活かせました」
試合後の江幡はそう語っている。最終3ラウンド、小笠原がさらにエンジンをかけてきたが、それに応じて江幡も反撃。トップファイターらしい試合運びを見せた江幡が判定勝利でベルトを巻いた。
決勝戦は期待された通りの組み合わせ。しかしそこに至る過酷さはワンデートーナメントならではだった。そして重要なのが、このベルトをどう“磨いて”いくか。ただでさえキック団体は数が多いだけに「ベルトが一本増えただけ」では意味がない。
所属する新日本キックボクシング協会で打倒ムエタイ、タイの王座獲りを至上の目標としている江幡だが、KNOCK OUTでは「キックボクシングの魅力が伝わる試合を組んでもらえたら」と言う。そんな江幡が望んでいるのが、那須川天心との対決だ。
「(那須川は)キックボクシングを引っ張る存在。そういう選手と交われば盛り上がる。KNOCK OUTのチャンピオンとして発言権があると思うし、代表として闘える」
年内は10月と11月に後楽園ホールで大会を開催し、来年2月に大田区へ。KNOCK OUTがキック界で再び存在感を高めるためには、今後の江幡のカードがかなり重要になってくる。
文・橋本宗洋