潜在能力なら佐々木・奥川クラス 創志学園・西純矢がU-18入り 韓国の地で見せる超高校級の力
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 西純矢(創志学園)。その名前が全国に知れ渡ることとなったのは昨年夏の甲子園だ。前年秋の明治神宮大会で大阪桐蔭(大阪)を破り、優勝候補の一角に挙げられていた創成館(長崎)を相手に16奪三振、無四球完封という圧巻のピッチングで全国デビューを果たして見せたのだ。しかしこの大会、西にとっては悔しい思い出も残るものとなる。続く2回戦ではマウンド上で大きく雄叫びをあげるガッツポーズを球審から注意されたこともあってリズムを崩し、3安打に抑えながら9四死球を与えて逆転負けを喫したのだ。

 続く秋季大会でも西の試練は続いた。選抜出場をかけた中国大会の準決勝で広陵(広島)の河野佳と終盤で1点を争う投手戦を演じながら、8回裏に味方のエラーから一挙に6点を奪われてまさかのコールド負けとなったのだ。この大敗が影響して選抜出場を逃し、精神面もピッチングも不安定という印象が強くなってしまったのだ。秋季大会が終了した時点では、その不安定さを指摘するスカウトの声も少なくなかった。

 しかしそんな悔しい経験を西は成長の糧にして見せる。冬の間に体つきが一回り大きくなり、春は野手としてもチームを支えることで視野の広さが加わって、そのことがピッチングの安定感にも繋がるようになったのだ。この夏の岡山大会1回戦では雨で制球を乱して先制点を奪われたものの、その後にしっかり立て直して7回を完投(コールドゲーム)。準決勝の倉敷商戦で0対2で敗れて甲子園出場は逃したものの、味方のエラーに動じることなく、最後まで試合を壊さずに投げ切ったのだ。この夏は他の試合でも終始安定した投球を続けており、悪い時に一気に崩れてしまうというイメージは完全に払しょくされたと言えるだろう。

 もちろん精神面だけでなく、ピッチングそのものも成長を見せている。ストレートの最速は154キロまでアップし、必殺のスライダー以外にも緩いカーブを上手く使うようになるなど幅が広がった。上半身と下半身のバランスが良くなり、力をそれほど入れなくても打者の手元で勢いのあるボールを投げることができている。投手としての総合力は間違いなく高校生ではトップレベルだろう。

 ドラフト候補という意味では佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)の2人が頭一つ抜けた印象を受けるが、ポテンシャルの高さでは西も決して大きく引けをとっているわけではない。大舞台で最初に強烈な印象を残したのはむしろ西である。その実績、そして成長度が認められたからこそ、今年の春夏の甲子園出場を逃しながらもU-18の侍ジャパンに選ばれたと言えるだろう。大学ジャパンとの壮行試合、そしてワールドカップ本大会(8月30~9月8日、韓国・機張)では昨年夏の甲子園から成長した姿を見せてくれることを期待したい。

文:西尾典文(にしお・のりふみ)

 スポーツライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

▶創志学園・西の登板機会は? 8月26日(月)18:00~【U-18野球壮行試合】U-18日本代表vs大学日本代表

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