ネットデマ被害の末に殺害予告を受け、その後も20年間に渡ってデマ被害のさまざまな後遺症に苦しめられている芸人のスマイリーキクチ(47)が、社会問題化しているネット上でのデマ拡散について「情報発信者が借金なら、リツイートは連帯保証人だ」と言及し、誤ったネット情報を鵜呑みにした情報拡散に警鐘を鳴らした。
先週、常磐道あおり事件の宮崎文夫容疑者(43)を匿ったとして犯人隠避容疑で喜本奈津子容疑者(51)が逮捕された。そして、23日には喜本容疑者が逮捕されるまでの間、同容疑者に似ているとネット上で身に覚えのないデマを流され、誹謗中傷を受けた都内在住の女性Aさんが東京霞が関の司法記者クラブで代理人の弁護士を伴って会見を開き、「早朝に起きたら名前と写真がインターネット上に流出していて状況が読み込めず、どうしてこうなっているのか、また今後どうなるのか分からずパニック状態だった。現実にこんなことが起こるのか……」と恐怖と被害の全容、さらに今後の訴訟などの対応について語った。
平穏な日常を突如として奪うネットデマ。2000年に芸人として活動していたスマイリーキクチが巻き込まれたネットデマのきっかけは「ある少年事件の犯人と歳が同じ」という、たったそれだけの理由だった。ネット上に拡散されたデマによって「ふざんけんなテメー」「人殺し死ねコノヤロー」「家族皆殺しにする」など、匿名による“言葉の暴力”によって苦しめられ、その数は軽く1000件に上ったという。その中には殺害予告まで含まれており、その影響もあり仕事は激減。本人はもちろん、家族まで命の危険を感じる日々を過ごした。20年経った今でも、その被害は続いているという。
即座に否定を試みたスマイリーキクチだが、その直後「火のないところに煙は立たない」「ネット上に多くの証人がいる」などと根拠のない反論が殺到した。さらに「やっていない証拠を見せろ」「死んで証明しろ」と事態はエスカレート。事態を重く受け止め所属事務所の掲示板で改めて否定するも、誹謗中傷は止まずに掲示板は閉鎖。怒りの矛先を失ったいわゆる“ネット民”たちの怒りは、同氏と関係のあるテレビ局や仕事のスポンサーに向けられるようになった。頼みの警察には「ネットのウソを信じる人なんかいない。見ているうちにあなたがノイローゼになってしまうんだ。実害がないから、こんなちっちゃな事件じゃ動けないよ」と門前払いを受けた。
自ら動くことで事態の打開を図ったスマイリーキクチは、3カ月間ほぼ寝ずに中傷コメントをまとめた。その資料は段ボール4箱分にも及んだ。その努力が実り、デマ発生から9年が経過した2009年には19人が検挙された。このケースは、個人に対するネット上での中傷における一斉摘発としては、国内で初の事例として注目を集めた。
しかし、事件は終わっていなかった。検挙された人の中には「二度とやりません」と表面上は反省の弁を口にするも、ネット上の掲示板に「あの野郎、殺人事件の犯人のクセに」と書き込んでいる者もいたという。また、ネット業界からは「釈明しろ」「取り下げろ」などの声が上がり、刑事告訴したことに対する呵責すら覚えた。
「正しいことをしたはずが……」
終わらないデマ、言われなき誹謗中傷に20年間苦しんでいるスマイリーキクチは最後に、今回のあおりデマ被害を大きくした要因となったSNSのリツイート機能について「情報発信者が借金(をした人)なら、リツイートは連帯保証人になりますよっていうボタンだ。自分の場所で情報をまた出しているので、最初の情報発信者と同じ責任が問われる。ネットが悪いみたいな雰囲気になっているが、悪いのはネットじゃない。悪いのは人間だ」と締めくくった。(AbemaTV『Abema的ニュースショー』より)
(C)AbemaTV
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