「匿名の正義」が凶暴化 ネットのデマ拡散に「批判能力がない人が増えている」と警鐘も
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「匿名の正義」という悪意のもと、一般の人たちが誤った情報を鵜呑みにして凶暴化。特定のターゲットに執拗かつ無慈悲な人格否定攻撃を加えるのはなぜか? ネット上のデマ拡散がいま社会問題化している要因について、東京大学大学院卒で元日経新聞記者の作家である鈴木涼美氏が「批判能力すらない人間が増えている証だ」と指摘した。

 今月、茨城県の常磐道で発生したあおり運転事件で、被害男性を殴ったとして大阪市の会社役員・宮崎文夫容疑者(43)が逮捕された事件に関連して、宮崎容疑者を匿ったとして犯人隠避容疑で喜本奈津子容疑者(51)も逮捕された。しかし、喜本容疑者が逮捕されるまでの間、「同容疑者に似ている」とネット上で身に覚えのないデマを流され、誹謗中傷を受けた都内在住の女性がいる。Aさんは23日、東京霞が関の司法記者クラブで代理人を務める弁護士とともに会見を開き、恐怖被害の全容および今後の法的対応について語った。

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 服装やサングラスが喜本容疑者と似ていた。さらに宮崎容疑者がこの女性のSNSをフォローしていたという二点だけで誤った情報が瞬く間に拡散され、誹謗中傷による精神的な苦痛に加え、女性が経営する会社では問い合わせの電話が300件以上かかってくるなどの実害も被ったという。宮崎容疑者についても、名前が公表される前に「元暴力団の男」などと噂され、まったく異なる名前がネット上で拡散されていた。

 一昨年に発生した東名あおり死亡事故の際には、石橋被告と名前が同じというだけで被告の勤務先というデマ被害を受けた石橋建設工業では、クレームの電話が鳴りやまず、同社社長はネット上にデマを書き込んだ8人を相手に損賠賠償を求める訴訟を起こす事態に至っている。匿名による無責任な情報拡散によって、無関係な人の名誉と自由を奪う行為は、社会問題に発展している。

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 「そういった間違いは起こしてはいけないものだが、ごく稀にある」とこの問題について触れた鈴木氏は「デマはSNSが出る前からあり、新聞でもIPS細胞の大誤報があった。尼崎殺人事件では、まったく異なる女性の写真が多くのテレビ局で晒されるということもあった」と話すと「一般人が、まだ刑も確定していないうちから『まるで私刑のように』誹謗中傷を行うのはおかしい。推測に基づく攻撃がまかり通っては無法の国になってしまう」とネット上で急増するデマ拡散、誹謗中傷について懸念を示した。

 さらに鈴木氏は「批判能力がない人が増えている」と持論を展開すると「批判は本来、労力を要する。本格的に批判をしようと思ったらその人の著書、発言を網羅して穴を見つけなければならない。SNS上で『バカ』や『死ね』と書き込むだけなら能力も手間も一切必要ない。批判する手間をかけない人が増えており、何かしらのデマにでも飛びついてしまう傾向は暴力的だ」と警鐘を鳴らした。(AbemaTV『Abema的ニュースショー』より)

(C)AbemaTV

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