20日、漫画村出張所を名乗って不正に漫画を販売していた20代の男が著作権法違反の疑いで逮捕された。人気漫画『闇金ウシジマくん』などのデータを無断で販売した疑いが持たれている。3000億円以上の被害額を出した海賊版サイト「漫画村」が記憶に新しい中での犯行。同一の「漫画村」を名乗っているが関係性は分かっておらず、漫画村がHP上で閲覧できたのと異なり、漫画村出張所はLINEで送られてきたURLからデータを購入(1冊80円)し、ダウンロードするという仕組みが異なっている。度重なる著作権侵害の背景にあるものは、一体何なのだろうか。
再び浮上したこの問題について講談社のモーニング編集部に所属し、これまでに『宇宙兄弟』や『聲の形』などを手掛けた小宮山祐紀さんは「また、いたちごっこが始まるのか」と憤りを隠せない。さらに小宮山氏は「僕らは漫画家と毎日接している。原稿1枚を描く、1話20ページを描くということがどれだけ時間かかって、命削っているかということをよく見ている。奪われている感覚がある」と悔しさも滲ませた。
一方、『着たい服がある』などの代表作を持つ漫画家の常喜寝太郎さんは「悲しい。自分もめちゃ頑張って描いたものだ」と心境を明かすと「電車とかで(違法サイトで)見ているのを発見するが、気持ちいいものではない。作品をそれで知ったとか、好きになったとか言われても複雑だ」と話した。
雑誌不況が叫ばれる昨今、出版社も無料サービスなどを提供している。そのことについて小宮山さんは「アプリやウェブの公式での1話無料、あるいは冒頭の数話無料で作品や作家の認知を上げて、読んでくださるファンの数を増やし、最終的に単行本の売り上げを最大化する。ウェブやアプリを使うことで、拡散する力が強い」と出版元の立場を説明した。
実際に漫画村を利用したことがあるという若者に街で話を聞くと「罪悪感はありつつ、やったことはある」「違法ということは知っていたが、みんな使っているからいい。YouTubeと同じ感覚」「神的なツールだったので読ませていただいた」といった本音が聞かれた。
“無料サービス”に慣れてしまっている世代との向き合い方は、今後の出版界はもちろん、エンターテインメント業界全体における大きな課題となる。
漫画家の江川達也氏は「厳しい時代になってきた」という認識を示すと「ユーザーに倫理を求めても問題解決にはならない。読者はタダで見るのが当然になっているので、新しいビジネスモデルを作って対応するしかない」と私見を述べたが、そんな江川氏に「勝ち逃げした」とツッコんだのはお笑いタレントの千原ジュニアだ。ジュニアは「音楽界もそう、少し前の時代の人たちはめちゃくちゃ売れた」と時代の変化を指摘した。
さらに千原ジュニアが「漫画家に対するリスペクトの角度が変わってきたのでは?」と問い掛けると、江川氏は「昔からのファンの中には、『今もしっかり買っています』という律儀な人も多い。しかし最初からネットの人は……」と言葉を詰まらせた。(AbemaTV『Abema的ニュースショー』より)
(C)AbemaTV
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