（8.26TAKAYAMANIA、涙の大家劇場を大仁田と展開）
8月26日に後楽園ホールで開催された『TAKAYAMANIA EMPIRE 2』では、普段なら考えられない異色かつ豪華な対戦カードがいくつも組まれていた。
この大会は負傷と闘う高山善廣を支援するためのイベントであり、また8月26日はジャイアント馬場、アントニオ猪木がタッグを結成した日本武道館でのオールスター戦から40年という記念日でもあった。
ここに大仁田厚も参戦。DDTからは樋口和貞がガンバレ☆プロレスの大家健とチームを結成した。しかも対戦相手は藤田和之＆NOSAWA論外＆FUJITA。“邪道”大仁田と“野獣”藤田は2年ぶりの激突だった。
しかし試合ではDDT屈指の大型パワーファイター・樋口と藤田のぶつかり合いもインパクトを残した。最後は大仁田がNOSAWAをフォールしたものの、NOSAWAは大仁田に何度もイス攻撃を要求し、サンダーファイヤーパワーボムも返しまくって観客を沸かせている。
そして試合後のインタビュースペースで場をさらったのは大家だった。藤田とのタッグに意欲を見せる大仁田のコメントがひと段落しかけたところで“大家劇場”が幕を開けた。
「大仁田さん！ 俺は3年前に大仁田さんと試合させてもらって！ とても感動しました！」
大家が代表を務めるガンプロは3年前、初の後楽園ホール大会を開催。そのメインである8人タッグマッチで、大家と大仁田が対戦している（大家が浪口修をフォール）。“大仁田効果”もあって、後楽園は超満員になった。
後楽園が満員にならなかったら大家が引退、大会が成功したら電流爆破マッチで大仁田と対戦。そんな話もあったものの、大仁田は翌2017年に引退（そして復帰）。大家とは接点がないままだった。
「あれから大仁田さんが引退して俺は！ 俺は！」
大仁田の引退、復帰、そして今回のチーム結成という流れに、インタビュースペースで感情をぶちまける大家。あまりのテンションに圧倒されかかった大仁田だが、大家の手を握ると「大家！ 大家！ お前と絶対に！ 絶対に！ 電流爆破をやる！」。
この言葉に大家がさらなる号泣。
「お願いします！ 絶対に！ 絶対に！ 絶対に！」
叫びまくる大家に、大仁田も「3回言うなって。それじゃ俺だよ」と思わず苦笑。しかし「何十年か前の俺みたい。新日本ばかりじゃなく、誰か追いかける人間が必要なんですよ」と大家を評した。
“涙のカリスマ”と呼ばれたかつての大仁田に対し、大家には“カリスマ号泣師”の異名がある。大仁田あっての大家であり、その大仁田に“大仁田っぷり”で認められたこの日は、大家のキャリアにとっても重要なものになったに違いない。また普段はメジャー団体を取材することも多い取材陣も、大家の大激情ぶりに驚いたのではないか。観客が見ていない場所だったのがもったいない名場面であった。
（27日のDDT定例会見ではO-40選手権に向け王者・高木と大家が調印式。お互い猛烈な勢いで舌戦を展開した）
大家は9月1日のDDT大阪大会で、高木三四郎が持つOVER-40選手権に挑戦する。プロレスラーとしてデビューさせてくれ、また失踪からの復帰を許してくれた高木は大家にとって恩人。だからこそ超えたい相手でもある。絶対的な上下関係の中で無理難題と雑用に振り回された過去も忘れていないようだ。
この試合は「リサイクルデスマッチ」として行なわれることが決定。過去の試合で使われた凶器や、DDT道場引越しの際に出た産業廃棄物の使用が認められる。
試合形式について、“大社長”高木は「大家をリサイクルしたいという気持ちがあって。大家はガンプロ創成期のほうが輝いてましたから。最近、今成（夢人）とか勝村（周一朗）、石井（慧介）、岩崎（孝樹）が出てきて存在感が薄れてるお前が嫌なんだよ」という意図も明かしている。
ただし高木は「大家は昨日のTAKAYAMANIAから、ちょっと輝きを取り戻してきてる」とのコメントも。実は“大家劇場”の際、大家の絶叫を聞いたDDT勢が控室から飛び出してくる場面があり、高木も取材陣に混じって見ていたのだった。
高木が指摘するように、このところの大家はガンプロ戦線で一歩引いている感があった。それだけ今成や勝村の活躍が充実していたということなのだが、タイトルマッチ前になって大仁田と絡み、そのことで復調してくるあたりはさすが。
「お前だって昔のほうが輝いてただろうが！ お前こそリサイクルしてやる」と高木に食ってかかった大家。その魅力である闇雲なパワーは、ここ最近では最高潮に達している。
文・橋本宗洋
▶その他の注目記事＆動画
