5日に行われたキリンチャレンジカップのパラグアイ戦。一番大きな注目を集めたのは日本の勝利よりも、マジョルカに所属する久保建英のプレーだった。
45分間の出場に終わったが、久保の一挙手一投足は世界中が注目し、なかでもマーカー2人に対してしっかりとボールをキープし、相手選手の間から大迫勇也へ通したパスについて、スペイン『アス』紙は「久保がこの素晴らしいプレーでネット上をざわつかせた」と称賛するほど。10日に行われるワールドカップ・アジア2次予選のミャンマー戦だけでなく、その先にある2022年のカタール・ワールドカップでの活躍が期待される。
そんな久保のようにワールドカップでの活躍が期待されるもう一人の選手がいる。2020年に行われるフットサル・ワールドカップでエースとしての活躍が期待されているのが、ペスカドーラ町田の室田祐希だ。
Fリーグで今見るべき、魅せられる選手に
室田といえば、5年前に決めたゴールが世界中で大きな話題となった。
2014年10月25日にクウェートで開催されたインターコンチネンタルカップに出場した日本代表。当時22歳の最年少プレーヤーだった室田は、グアテマラ戦でスーパーゴールを決める。
ハーフウェイライン付近でボールを持つと、ゴール方向にスピードを上げてドリブルを開始。あっという間にGKとの1対1の状況を作り出すと、選択したプレーは「ヒールリフト」。右の足裏でボールをなめて相手の体勢を崩し、両足でボールを挟み込んで浮かせ、GKの頭上を通した。綺麗な孤を描いたボールはそのままネットに収まった。
このプレーはYouTubeにもアップされて、合計で1000万回以上の再生数となる。さらにイタリアの『La Gazzetta dello Sport』やイギリスの『Daily Mail』といった大手メディアに取り上げられるなど、室田の記念すべき代表初ゴールは世界が驚愕したプレーとなった。
言葉は悪いかもしれないが、当時の室田は「相手をおちょくる」ようなプレーで、観客を沸かせてきた。代表戦で見せたヒールリフトによるシュートはFリーグでも何度もトライしていた。さらにサイドラインを背負った状態から、ヒールリフトで相手を抜こうとすることもあるなど、まさに子供が仕掛けるいたずらのようだった。
しかしあれから5年が経ち、室田は大きく成長した。
これまでは“個”での仕掛けばかりが注目されていたが、今は味方をうまく使いながらプレーする場面が増えた。闇雲に得意のドリブルを仕掛けるのではなく、状況によってはパスを通して動き直すなど、自分で行くべき時、味方を使うべき時のバランスを身につけた。それはスラムダンクの名シーン、山王戦で見せた流川楓が一度パスを見せたことで、それまで抜けなかった沢北栄治を抜き去る場面に似ている。
もはやドリブルだけを警戒していればいい選手ではなく、チームの中心としてマークしなければいけない選手となった。それでも室田は止まらない。
8月18日に行われた立川・府中アスレティックFCとの東京ダービーでは、想像の遥か斜め上をいくプレーを見せた。
1点ビハインドで迎えた26分、左サイドでボールを持った室田は、クレパウジ・ヴィニシウスがマーカーのブロックに入った瞬間を見逃さずに縦にドリブルを仕掛ける。カバーに入った相手選手がコースを遮ると、室田は右足でボールを引いてターン。左足のヒールでゴール前に絶妙なパスを通すと、これを受けたクレパウジ・ヴィニシウスが完全にフリーな状況で同点ゴールを決めた。
このプレーに会場は拍手喝采。それはゴールを決めた選手よりも、誰もが想像しなかったプレーでお膳立てした室田に向けられたものだった。
やんちゃなドリブル小僧として会場を沸かせてきた少年が、今は観るものを魅了する選手にまで成長した。2020年のワールドカップで、世界は改めて室田のスーパープレーに驚愕するだろう。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
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