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(ヒジ、ヒザの強烈さは団体随一。潮崎に勝ちリーグ戦4連勝となった杉浦だが「優勝しなきゃ意味がない。次勝って全勝だから」)

 プロレスリング・ノアのシングルリーグ戦「N-1 VICTORY」の決勝カードが決まった。

 Aブロックを勝ち上がったのは杉浦貴。49歳のベテランが4戦全勝で決勝進出を決めた。後半2試合、丸藤正道戦(9.7横浜)と潮崎豪戦(9.9後楽園)で見せた闘いぶりは圧巻。

 年齢を超越したフィジカルから繰り出す強烈な打撃に加えロングマッチを苦にしない耐久力も抜群。丸藤とはサブミッションの切り返し合戦で鮮やかなテクニックも見せた。

 一方、混戦のBブロックは拳王が抜け出した。望月成晃に黒星を喫したが最終戦で中嶋勝彦との蹴り合いを制し、3勝1敗に。星の潰し合いの中で光ったのは、やはりキックの切れ味だ。中嶋戦ではハイキックでKO勝利を収めている。

 現GHCヘビー級王者の清宮海斗が不参加、両国国技館大会(11月2日)で優勝者と防衛戦を行なうと宣言したことで、このリーグ戦は賛否両論を呼んだ。

 しかし始まってみると熱戦の連続で、ノアの充実ぶりをあらためて実感させられるものに。その結果として杉浦と拳王が決勝に進出したのは、ファンなら誰もが納得するところではないか。

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(9.9後楽園、決勝進出を決め対峙する杉浦と拳王)

 リデット・エンターテインメント社を親会社とする新体制として再スタートした今年のノアで、拳王は反体制ユニット「金剛」を結成。マイクで悪態をつきつつ試合は熱く、時にユーモアも感じさせる独自のムードを確立した。「拳王が親会社の名前を出して楯つくことで、リデットの名前が浸透したんじゃないか」というファンもいる。

 杉浦はシングル、タッグ双方のタイトル戦線で活躍。とりわけ三沢光晴メモリアル大会での清宮戦は、敗れたとはいえ王者が「限界を超えた」と言うほどの死闘だった。また拳王とは逆に「ノアのプロレスを広めるためなら」と“会社の犬”宣言。これが支持され、愛犬の写真を使ったTシャツもヒットしている。

 試合内容も存在感も決勝にふさわしい2人は9月16日のエディオンアリーナ大阪第一競技場大会で対戦する。まだ勝ったことがない杉浦をここで超え、「ノアで一番存在感のある男になってやる」と拳王。杉浦は「誰にも負けない闘いをする」とファンの前で誓った。

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(9.16大阪で藤田和之を迎え撃つのは新人の稲村愛輝。参戦表明した藤田に張り手を見舞うとタックルも。これで藤田の形相が一変した)

「誰にも」という言葉には意味がある。9.16大阪大会には武藤敬司、秋山準、桜庭和志と豪華ゲストが参戦。海外からはライノが初登場、また藤田和之も乗り込んでくる。このメンバーの中で「やっぱりノアの選手が一番凄い」とファンに言わせることができるかどうか。それがもう一つの闘いなのだ。「敵はお前(拳王)だけじゃない」と杉浦。

 豪華ゲストの参戦は、新生ノアの“攻め”の姿勢の表れでもある。両国でのビッグマッチに続き、来年1月4日と5日に後楽園ホール2DAYS興行を開催することも発表になった。新日本プロレス・東京ドーム大会を向こうに回しての大勝負だ。

 この後楽園2連戦に王者として登場するのは清宮か杉浦か、あるいは拳王か。4日はドームと時間が完全に重なるためファンには悩みどころだが、常に話題を提供し続けようという姿勢は“アリ”だろう。団体として「試合は面白いのに…」で終わるつもりはないというわけだ。9.16大阪、11.2両国でボルテージを高め、それを1.4&1.5後楽園にもつなげたい。

「なんだろうね、隣(ドーム)に当てにいくって」という杉浦だが「ノアを選んでくれた人を満足させたい。そして向こうを選んだ人が悔しがる試合ができれば」とも語った。その自信があるからこその言葉だろう。

文・橋本宗洋

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