ニューヨークの国連本部で開かれた環境関連のイベントに出席した小泉進次郎環境大臣。初めてのスピーチで「日本は1997年に京都議定書を採択したが、リーダーシップを発揮してこなかった。今日から我々は変わる」と通訳を介さず英語を披露日本の存在感を強調したが、国内外のメディアが取り上げたのは、演説前に行われた記者会見での「気候変動のような大きな問題は楽しく、かっこよく、"セクシー"であるべきだ」という発言だった。
これは一緒に登壇したUNFCCC(国際連合枠組条約)の前の事務局長であるクリスティアナ・フィゲーレス氏のコメントを受けてのもので、小泉大臣は「セクシー」という言葉を計3回使用した。少々長いが、以下がそのやりとりだ。
Q. このイベント中にどのような議論をされたのでしょうか?他の参加者からの反応はどうでしたか?
A. It was an exciting meeting and I like the last comment made by one person from a private company, industrial company. He said on tackling on this issue, everything's got to be fun. And she added “also sexy!” All right. I totally agree with that.
So, in politics there are so many issues, sometimes boring, but on tackling such a big scale issue like climate change, it's got to be fun! It's got to be cool! It's got to be sexy, too.
As I said, the young generation is the key. For mobilizing them and empowering them it's got to be fun. How to make the way of resolving this issue cool and happy and sexy, I think young people know how to make it cool and fun.
(和訳:エキサイティングな会合でした。ある企業、工業会社の人が最後に発言したコメントが気に入りました。彼は、「この問題に取り組むのは、楽しいことになるはずです」と言いました。すると彼女(フィゲーレス前事務局長)が「セクシーなことでもあるわ」と付け足しました。私はそれに全面的に賛成です。
政治ではしばしば退屈な問題(取り組むテーマ)も多いです。しかし気象変動のような大きなスケールの問題に取り組むことは楽しいはずなんです!クールなはずです!セクシーでもあるはずです。
先程も言ったように鍵を握るのは若い世代です。彼らを結集し力を与えるのは楽しいことに違いありません。この問題の解決策をクールに、ハッピーに、セクシーに見出していくこと。若い世代はどうしたらクールに楽しく解決するのか知っていると思います。)
ロイター通信はこれを記事のタイトルに使用し、批判的な意味で報じ、日本メディアも取り上げることになった。
慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は、「全く失言ではない。いいじゃないかと」と強調する。「アメリカの政治家などはシリアスな政策の問題に反対の概念を付けて話すことはよくある。そうすることによって"掴み"というか、物事の印象を変える。政治家が普通は"should be"というところ、"ganna be"と、かなりくだけた感じで話したが、これまでこういうことができる政治家、環境大臣はいなかったと思う。大体、英語ができる政治家がどれだけいるかという話だ。新時代を演出した。"セクシー"という言葉をここに持ってくるのも小泉氏らしい。悪い意味ではなく、"いま考えなければならない大事な"とか、"かっこいい問題だと思ってほしい"とか、そういう意味合いも含んでいる。僕も小泉さんと対談したことがあるが、この人は日本語で喋る時にも必ず何かの"キーワード"を入れてくる」。
「今回の内閣で、環境大臣は最も難しいポジションの一つとも言われていたし、いわば修行、チャレンジをさせてやろうということで小泉さんを据えたという解釈もある。先日、福島に行った時には"そんなこと言って大丈夫?"ということを言ったところもあったが、全部これでひっくり返したと思う。そもそも環境大臣になった瞬間に外遊が入ってるいるというのもラッキーだ。やっぱり政治家として"持ってる"。そして国連に行って英語でコミュニケーションをとり、"セクシー"という言葉を使うなんて、本人が計算してないのに舞台が設定されてる感じがする。なんか"王子様"という感じ。
今まで海外メディアが日本の環境大臣を取り上げられたことなんて大してないんだから、批判的にでも取り上げられただけでかなりの得点。悪いけど、騒いでいるネット民は影響力もない。これでまた60歳以上の女性の有権者をわし掴みにしたと思うし、今後のキャリアの中で得点を稼いだなという感じはする。これからは任期中に何をするかだ」。
マッキンゼーに勤務経験があるピン芸人の石井てる美も「発言の前に、"今から言ってやるぞ"、みたいな雰囲気を感じた。言ってはまずい言葉ではない思うし、してやったりだと思う。"クールであるべきだ"というのも、温暖化とかけてあるのかなと思った。おっさんの政治家が言うのではなく、進次郎さんが言うのも様になったのではないか」と評価した。
電撃結婚の発表に続き、何かと注目が集まる小泉氏。一方、その発言には「中身がない」などの批判もある。Twitter上ではこの週末、"小泉氏が言いそうな発言"として、「赤を上げて、白を下げないとどうなると思いますか?そう、赤と白が、上がるんです」「年末年始。年の瀬。師走。こういう言葉を聞くたびにね、いつもこう思ってきました。もうすぐ新年だな、と」「皆さん、私は、みなさんに、12時の7時間後は7時であり、19時でもあるということを真剣にお伝えしたい」といった大喜利も拡散した。また、ニューヨークでステーキ店に入り、夕食を楽しむ様子も報じられたが、「牛のゲップに温室効果ガス(メタンガス)が含まれている」として批判されてもいる。
幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「会見の全編を見てみると、隣の登壇者の発言を引用した形のものなのに、ネットの中だと完全にネタ扱いされている。そもそもネットの人たちにとって小泉さんは嫉妬の対象だ。あんなにかっこよくて2世議員で、滝川クリステルさんと結婚した、みたいな。だから、なんかミスってほしいとずっと待っている人たちがいる。 ZOZOの前澤さんなどもそうだが、ちやほやされてた人を一斉に叩くみたいな空気の餌食になると、永遠に抜け出せない。確かに本当に中身がないと思う時もあるが、そんな感じで切り取り始めたら、実態とは関係なくなるし、そうやってネタにされ続けるのは結構しんどい。今回の発言も大した事ではないのに、これで笑いにし続けようというだけ」と"切り取り"やネット民の態度を厳しく批判した。
夏野氏は「お父さんもそうだったが、そういう批判に対応しないというのがいい。そんなくだらないことは知らんと。"俺は俺の道を行く"という感じでやっているから餌食になりにくい。いまだかつて環境大臣の仕事がこれほど注目を浴びたことはないので、むしろいい機会だ」と指摘。箕輪氏も「1ミリでも対応したら終わりだと思う。これから何をやるかだ。その行動が今後を分ける」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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