”誰でもYouTuber”時代から、”アルゴリズムの奴隷”時代に!?箕輪厚介氏「テレビの息苦しさとあまり変わらないのではないか」
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 今月16日、人気YouTuberグループ「フィッシャーズ」が1万人規模の「鬼ごっこ」を開催、ギネス記録を達成した。また、YouTuber「ヴァンゆん」が初めて大手芸能プロダクション「太田プロ」入りを発表、こちらも大きな話題を呼んだ。

 今、世界で19億人に達するというYouTubeのユーザー数。「YouTuberの企画の方が自由!」「テレビタレントって発言が忖度していない?」「テレビで無理して仕事しなくてもYouTuberで食っていける」「上の顔色ばかり窺って面白いことできない」など、もはやYouTubeがテレビに取って代わられるのではないか?と感じさせる声も少なくない。

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 若者に聞いてみると、「kemio」「さんこいち」「はなお。QuizKnock」「かのくん」など、様々なYouTuberたちの名前が挙がる。また、年齢・職業などを問わず、誰でも参入できることも魅力だ。実際、YouTuber志望の子どもたちに向けた教室も盛況だ。80人の小学生が通う「YouTuber Academy」(千葉県柏市)では、企画から撮影、編集、音入れまでをこなし、見事なクオリティの動画を制作していた。受講生の一人、すけすけくんは「世界一のYouTuberを目指す」と意気込む。

 YouTuberを生業にする場合、再生1回あたりの単価を0.05~0.1円と仮定すると、月に20万円を稼ぐためには月間400万回再生が必要だ。つまり、毎日動画を配信したとしても、1本あたり13万3333回以上の再生回数を稼ぐことが必要になる。

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 サラリーマンを辞めてマルチ商法や時事問題に物申すYouTuberになったまっすうさんは、料理人をしていた弟を編集担当に迎え、現在は2人で活動している。稼ぎは「月によって結構上下はあるが、40~60万円くらい」と、退職前よりも収入は下がっているものの、今後に期待しているようだ。

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 AbemaTV『AbemaPrime』でMCを務めるカンニング竹山は「"テレビvsYouTube"のような対立構造で考えなくていいし、全部やれば良いというのが最近の僕の考え。YouTuberがタレントをやってもいいし、タレントがYouTuberをやってもいい。HIKAKINさんとはじめしゃちょーさんのテレビCMも素敵だと思う。ただ、タレントとしての技術でいえば、テレビやネット配信の番組とYouTuberとは違うと思うし、やり方を変えないといけないとは思っている」と話す。

 「『探偵!ナイトスクープ』のスタッフ話していたのは、依頼を受けてロケをやるが、中には答えが見つからない時もある。だけど"見つかりませんでした"はダメだ。それで着地点をどこにするかをみんなで話し合う。タレント、ディレクター、カメラマン、依頼者で"こっちのネタに落としていこう"と話す。結果、VTRを見ると依頼者も納得しているし、ああ良かったとなる。これはやらせではない。ナイトスクープがやっていることもリアルだが、YouTubeだったら"できなかった"もリアルだ」。

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 一方、「AbemaPrime」の元ADで、現在はコロコロチキチキペッパーズ、電撃ネットワークなどの動画制作やYouTubeチャンネルの管理を行い、自らもYouTuberを目指しているいとう氏は「テレビは古くて不自由!」だと主張する。「坊主にしたいと思ったときに、それを動画にしてお金にするというのはテレビではできない。電撃ネットワークも過激過ぎてテレビには出られなかったりする部分があるが、それらもどんどんアップしていく予定だ」。

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 2014年に「はっちゃんねる」を開設した吉本所属のお笑い芸人(株)はつだは、「ポケモンGO」の実況動画、あるある動画などを配信、登録者数は約11万人、視聴回数は約7126万回に上る。収入の実に9割がYouTubeからだという。「言ってしまえば、残りの1割もニコニコ動画に出させて頂いたものだったりもする。そのYouTubeチャンネルやニコ生を舞台化したりしているのが芸人としてのお仕事だ。YouTubeを2014年に始めて、2016年までは収益がお小遣い程度しかなかったが、アルバイトを辞めて全神経をYouTubeに集中させるようになった。やればやるほど楽しみを見出すことができて、毎日更新している。テレビにはチャンネルが10万人を超えるぞという辺りから呼んでもらえるようになった。今はYouTubeが一芸のようになっているのかなと思う」。

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 慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授は「テレビに出ていればとりあえずチャンスがあるというのは、あと30年以内に死に絶える人たちに対してはそうかもしれないが、若い人だけでなく、僕らの世代だって忙しくてテレビを見ていられない。これからは自分に感覚の近い人やファンにどれだけメッセージを届けられるかがカギだ。新しい人もどんどん出てくるし、テレビと違うものとして見た方がいい」との考えを示す。

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 また、政治や社会問題に関する動画を配信する「KAZUYA Channel」(登録者数は67万人・視聴回数は約7459万回)を運営するKAZUYA氏も、いとう氏同様、テレビよりも過激発言ができると話す。「尺的にテレビではできないことができるし、しかも失敗してもいい。テレビでは、あらかじめ捕まえておいた動物を動物を放してしまうといったことも起きるが(笑)、YouTubeだったら捕れませんでした、というテロップを入れ、オチにして10分の動画にすればいい」と指摘する。

 その反面、KAZUYA氏は「自己責任の上で、テレビではできないような過激な発言ができるのがネットの魅力だし、長く見られた方が広告単価は上がるし、視聴者維持率が高く、間に入れている広告が多ければ単価も上がる。しかし一歩踏み越えてしまうとチャンネルがBANされることがあるので、バランス感覚が求められている」と話す。自身もアップした動画の内容に問題があると判断され、プラットフォーム側にチャンネルをBANされたり、広告が非表示になった経験があるという。その基準はわからないため、暴力的な表現や差別的な表現には注意が必要だという。

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 ITジャーナリストの神田敏晶氏は「みんな衝撃映像を見たい。今のテレビはコンプライアンスがあるのでシャットアウトするが、昭和のテレビは今では絶対に無理なことをしていた。ただ、YouTubeの方も、世界的なYouTuberが青木ヶ原の樹海で自殺者のを探しに行くなど、過激さが問題視されるようになった。現在ではYouTuberとして広告料金を得られるのに4000時間以上の再生数、登録ユーザーが1000人以上いないとダメなど敷居を上げていくことで、ある程度のコンプライアンスを守ろうとしている」と話す。

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 この点については、ニコニコ動画を運営するドワンゴ社長でもある夏野氏は「ニコニコでは全チャンネル、全生放送を24時間監視していて、危ない動画を判別するAIも開発している。ただ、本当にクロなのかシロなのか、本当にBANして良いのか悪いのかは、後でトラブルになるので、人間も見ている。YouTubeを運営しているグーグルはそれをもっとすごい規模でやっていると思うが、最後は人が見ないといけない。ただ、そのための手法を言うと、それをかいくぐろうとして狙ってくるので、ルールは絶対言ってはいけない(笑)」とコメントした。

 幻冬舎の編集者・箕輪厚介氏は「興味深いのは、"好きなことをやっていきたい"といってYouTuberになったりするが、環境が整備されると、次は"こうやったら動画が伸びる。こうやったらBANされる"みたいなことがノウハウ化してきて、内容がどんどん似てくる。僕はYouTuberの友達も炎上系の友達もいるが、まるでそいつらが"アルゴリズムの奴隷"なんじゃないかと思ってしまう。たとえば"低評価とか関係なく、あえてやってるんでしょ"と聞くと、"ぶっちゃけ低評価になると、回転しなくなる(=儲からなくなる)"と。これはテレビの息苦しさとあまり変わらないのではないか」と指摘していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶動画:夏野氏、箕輪氏らを交えた議論の模様(期間限定)

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