大企業&終身雇用vsベンチャー&パラレルキャリア、あなたならどちらを選ぶ?
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 現在ベストセラーになっている山口周氏の『ニュータイプの時代』によれば、「正解を探す。生産性を上げる。ルールに従う。一つの組織に留まる。綿密に計画・実行。奪い、独占する」というのが「オールドタイプ」の特徴で、「問題を探す。遊び心を盛り込む。自分の道徳観に従う。組織間を超越する。とりあえず試す。与え、共有する」のが「新人類第2世代」の特徴だという。

 いつの時代にもある世代による価値観の隔たり。「ゆとりがありすぎるのではないか」(53歳・団体職員)、「素直なところはあるけどね。もうちょっと気をつかえよ」(64歳・IT講師)、「自分本位で生きているとあとで後悔するぞ」(45歳・会社員)などと心配するおじさんたちの声をよそに、多様な生き方や複数の仕事を持つ"パラレルキャリア"を模索する若者が増えている。

■大企業から"パラレルキャリア"を実践するYouTuber

 プロの「ヒューマンビートボクサー」として活動、海外を中心におよそ14万人の登録者を持つ人気YouTuberでもある"TOMOKIN"こと友金良太さん(30)。さらにTikTokでは得意の英語を教える動画コンテンツを配信、こちらも20万人ものファンがついている。しかし実はTOMOKINさん、平日は正社員としてAIエンジニアの仕事に専念している。大企業に勤務、日常につまらなさを感じていたところ、YouTubeに出会ったことで生活が変わり始めたという。

 「トップを狙うって割としんどいことかなと思っているし、"YouTubeだけ"になってしまう。そういう人ってめちゃくちゃたくさんいるし、そこに埋もれてしまわないようにするためには、AIエンジニア×YouTuberでオンリーワンになることだと思う。あくまで持論ではあるが、それぞれの仕事が相乗効果を生む。そして、今の日本にはなかなか好きなことが見つけられないという人が多い。でももう仕事をもう一つやることでアイデアが湧き、好きなことを見つけられると思う」。

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 年収は1500万円を超えるというが、お金に固執することはなく、今も個室なしのシェアハウスに住む。「家に1日中いるということは絶対にない。YouTubeの撮影などがあるので家にいないし、だからシェアハウスに住んでいる。ブランド物も、お金で買えるものにはあまり興味がなくて、どちらかというと世界中に友達を作る、信頼のおける仲間を作るという方に価値観を置いている」。

 そんなTOMOKINさんを面白がり、まさに"ジャンル違い"なオファーが次々と舞い込むようになったという。最近では大阪の人気ラーメン店から「コラボラーメンを作らないか」という依頼が。TOMOKINさんは決してラーメン通ではないが、仕掛け人のコラボプロデューサー・財津和也さんは「面白い人には興味のあることを何でもフットワーク軽くやるということが共通していると思う。どんな化学反応が起きるんだろうと興味あった」と説明する。

■大企業・安定志向か、自分の生きる意味か

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 TOMOKINさんと同世代の教育社会学者の福島創太氏は「自分の好きなことにエネルギーを使う、と若者の特徴が表れているのかなと思う。僕たちの世代は生まれながらにして経済的には右肩下がり。変化の激しい時代なので、先を見据えてお金を貯める、といったことにも価値を感じづらい。そうなってくると、"今、ここ"が大事になってくる。"現在思考"と呼ばれるものだ。関連してゆとり教育が進んだということもある。高い点数を取ることよりも、関心、意欲、態度を評価しようという価値観だ。これが遊び心といったものにもつながっていると思う。また、ゆとり教育と軌を一にして始まったのが、就職してキャリアを描いていくのではなくて、自分でキャリアを勝ち取っていくというタイプのキャリア教育だ。学生の頃から"もう終身雇用はないよ"と言われてきているのが大きく影響している。上の世代は"所属欲"を満たそうと思うのに対して、若い世代はそこで獲得して次に行こうと考える」と分析する。

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 エッセイストの小島慶子氏は「年功序列でずっと上がっていく時代は別として、今は"世代論"には無理があると思う。むしろどんな人や情報に接しているかが大きい」とした上で、「大企業志向を持つ若い人もいる一方、昔からある大企業の人たちとご一緒した時に面白いなと思ったことがある。20代が"僕の同期で、10年後もここに残ると思っている人はいないでしょうが"と前置きして話をするのに対し、"この会社が生き残るためには"ということを考える50代の人たちは"申し訳ない。君たちがずっと居たいと思えないような会社ではいかんと思った。反省した"と言うそうではなく、これからの人たちは、どんな会社であっても10年いるとは思っていないということ。企業の側も、社員は入れ替わっていくものだし、それでもどうすれば良いパフォーマンスが出せる組織になるのか、そのことを考えるべきだと思う。愛社精神とか、社員を家族だと思うというような考えに染まらずに、引いたところから見るというのは、会社が嫌いなわけでも冷めているわけでもなく、他でも通用する能力を身につけようとしているということだと思う」と話す。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「3、40年前は、やりたいことが実現できるのは大企業だという部分もあったと思う。それでも、終身雇用は東京の大企業を中心とした価値観だと思うし、時代や場所によってみんながそうだったわけでもないだろう。ただ、最近の若い人たちの特徴として、例えばシェアすることや、自分の生きる意味を大事にするという傾向はあると思う。こういう価値観は2、30年前なら"何言っているの?甘ちゃんだ"と言われている可能性が高かったと思う」と指摘した。

■多様なキャリアを実現するためのセーフティネットを

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 一方、全員が多様な選択肢を必要としているわけではなく、全員が企業や挑戦する必要はないことも事実だ。

 パナソニックを退職後に起業、その後、古巣の100%子会社のShiftall社CEOとしてグループに"出戻り"するという経験を持つ岩佐琢磨氏は「僕は立場的には大企業の中にいる人間だし、確かに起業するのが全てではないと思う。ただ、転職は別だと思う。終身雇用・大企業にしがみつくのもありだが、15、20年もいてしまうと、今度は外に出られなくなってしまう。実際に僕の周りでも次のキャリアを目指して出ようとしてみたら、大企業が世の中とは違う、非常に特殊な場所になってしまって行き先がなかった、というケースがあった。若い人たちはそういう危機感を持っていると思う。世の中には大企業もあれば中小企業もあるし、食品や家電など、様々な業種もある。色んな会社を見て、色々な体験をしようということは煽っていきたい」と指摘。さらに「一つの会社でだけ役に立つ仕事、スキルに特化するパターンもあるが、汎用性のあるスキルを磨いておけば、いつ、どこに移っても、あるいは起業しようと思っても役に立つ。これは年齢関係と関係なく、50代の人も今からでも遅くない。英語も2年頑張れば、結構上手くなる」とした。

 これに対し、安部氏は「そこで矛盾が生じてくるのが、汎用性のある能力がつけばつくほど、逆に替えのきくパーツになってしまう可能性があり、今度は自分の存在意義が感じづらくなってしまう。だからこそ僕らの世代は"何のために生きるのか。自分はいったいどこに向かっているのか"が見えづらくなっているのではないか」と指摘。小島氏は「自分が何のために生きているのか、何のために働くのかがわからないのは不安かもしれないが、そこから自然と自分と社会の関わりにに目が向くのはいいことだと思う。それは"会社のために"と思っていると辿り着かないことだ。そして、挑戦しても失敗できる仕組み、フリーランスでも安心して働ける仕組みを整備することが大事だ」とした。

 福島氏も「SNSで発信力のある人が"こうしろ"と言わずとも"これが素晴らしい"と言うだけで影響を与えてしまうし、"こんなに自由な時代なのに、上手くできないのは自分が悪いんじゃないか"と考えてしまう人も出てくる。やはり機会は必ずしも平等ではないし、やむを得ない部分もある。また、自己肯定感ではなく自己有能感の中でやっていると、能力は上がっていても不安や満たされない気持ちを抱えた子が出てくる。そもそも日本は企業が若者の育成をしていたが、企業の成長が難しくなって余裕がなくなると、しわ寄せ的に若者のキャリアに期待がされてしまう。だからといって彼らにキャリア形成の全てを任せていいのかというと、そうではない。やはりチャンスを与えるとともに、うまくいかなかった時のサポートや、キャリア支援が重要だと思っている」との考えを示した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶動画:小島慶子氏らを交えた議論の模様(期間限定)

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