工藤諒司、チームラカイの新鋭オルシム戦へ「強い選手だが、逆にチャンス」
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(工藤は決して多弁でない。ラウンドガールの控室前での撮影も戸惑いながら断ることができない朴訥さを見せていた)

 いよいよ明日、5日から始まるONEマーシャルアーツ・ファンフェス内で行われるONE Warrior Series。同大会に出場する日本人4選手をピックアップし、その意気込みとこの大会後に見つめる光景について紹介したい。第3回は本戦レベルの相手、フィリピンの名門チームラカイ所属のジェリー・オルシムに挑む工藤諒司の登場だ。

「泣いちゃいけない。ジムの皆に心配をかけてしまう。でも、涙が止まらなかったです……」

 視線を落とし、悪夢の瞬間を振り返る工藤諒司。ONE本戦で組まれても何らおかしくないチームラカイの新鋭ジェリー・オルシムとの一戦は、6月のウォリアーシリーズで組まれていた。しかし、工藤の練習中の負傷で発表前に消滅した幻の一戦だ。とはいえ格闘技にはケガがつきもの、さらに打撃と組みが融合し、下にならないことが第一とされる現代MMAでは特にその傾向が強い。

 工藤自身、大学を卒業しMMAファイターを目指してTRIBE TOKYO MMAに入門後、ケガと手術でアマチュア修斗に出るまで1年以上の年月を費やした。

 レスリングどころ青森県八戸市出身で小学生の頃からレスリングを始めた工藤は中学では柔道も経験しつつ、レスリングの名門・光星学院に推薦入学、国士館大学までレスリングを続けた。

 すでにMMAファイターになる夢を持っていた彼だが、力だけでは勝てない、しっかりとした技術が欠かせない大学レスリングで腕を磨き、満を持してのMMA転向だった。

 同門にはUFCと契約した佐藤天、年下ながら既にONEで脚光を浴びる若松佑弥が存在している。彼らの活躍に刺激を受けるとともに「負けらない」という気持ちのなか、ONE本戦出場への足掛かりとなる一戦を負傷で逃した。涙が彼の頬を伝うのも致し方ない。

 負傷が癒えた工藤の相手に、リッチ・フランクリンは再びオルシムを指名した。オルシムはONE本戦昇格のボーダーラインとみられる4勝を既に挙げている。さらにいえば日本のHEATで春日井たけし、赤尾セイジという実力者に一本勝ちを収めている韓国の実力者キム・ミョンギュすら一方的に下している。

 フィリピンのムエタイ王者の肩書を持つオルシムは、名門チームラカイが手掛ける人材発掘大会であるチームラカイ・チャンピオンシップで見い出され移籍を果たした選手だ。

 長身、伸びる右ストレート、何より首相撲やクリンチからのテイクダウンが強い。今すぐ本戦に出場しても、プレリミレベルの東南アジアの選手は相手にならないだろう。そんなタフな相手との対戦を前にして工藤は「確かに強い選手ですが、逆にチャンスです。ここで結果を残して認められたい」と言い、「首相撲は強いですが、技が豊富なわけじゃない」と言葉を続けた。彼には敢えて大学に進み、レスリングをやり込んだ自負と自信がある。テイクダウン勝負では負けられない。 

 そんな工藤にも課題は試合におけるペース配分だ。デビュー以来、主戦場にしている修斗でも序盤に飛ばし、体力を消耗することがあれば、ガス欠を恐れ思い切り出ることができなくなるという試合もあった。

「そこをこの間の練習でしっかりと修正してきたつもりです。自信はあります」。こう言い切った工藤、修斗でも世界王者からONEという路があるなかで、ウォリアーシリーズへの転出は後の無い状況に自らを追い込んだ選択だ。手強いオルシム相手だけに、リスクは高いが勝てばそれだけゲインできる工藤のウォリアーシリーズ初。流した涙の分だけ強くなっているのか、真価が問われる戦いとなる。

写真・文/MMAPLNAET

(C)AbemaTV

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