北朝鮮のSLBM発射はトランプ大統領の反応を引き出し、日米韓の連携を突き崩すことか狙いか
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 北朝鮮の『労働新聞』が3日、「東部の元山湾で新型のSLBM・北極星3の発射実験を行い成功した」と大々的に報じた。

 同紙は、この「北極星3」が水中から大きな水しぶきとともに発射されている様子や上空から撮影された地球など多数の写真を掲載。河野防衛大臣は同日「このミサイルが通常の軌道で発射されたとすれば、その射程が最大で2500kmに達する可能性がある準中距離弾道ミサイルということになる可能性がある」とコメント。2016年4月に発射された北極星1の飛距離は約30km、北極星2は地上発射に変えていたのに対し、最高高度900km(最大射程2500km)、しかも海中からの発射となれば、着弾間際の速度がより高速になるため迎撃が難しく、発射の兆候も掴みにくくなる。

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 SLBMについて、軍事ジャーナリストで潮匡人氏は「敵からの先制攻撃で地上の基地がやられても海中からの報復ができるよう潜水艦を沈めておき、そこから発射する。米ロを中心に多くの核兵器を持っている国が保有していて、この"第2撃の能力"を持っているがために、お互いに先制攻撃ができない"核の均衡(パリティ)"が保たれている」と話す。

 「北朝鮮がそこまでの能力を持つのは数年先だろうと言われてきたが、たった3年間で脅威が非常に高まっていると言えるし、アメリカ軍関係者も驚きを持って見ていると思う。さらに新型の潜水艦を建造しているとも言われ、それが原子力機動ではないかという説もあるので、侮ってはいけないだろう」。

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 これに対し、日本の対潜哨戒能力やミサイル防衛能力は十分なものだと言えるのだろうか。

 潮氏は「海上自衛隊は世界最高水準のものを持っているが、北朝鮮は日本の3倍以上の潜水艦・潜水艇を持っているし、日本海が比較的深い海であることから、攻撃側にとっては有利だ。また、仮に在日米軍、場合によってはグアムへの攻撃を意図して核を搭載したものを発射する時には、日本の哨戒機が近くを飛ぶことを許すのは考えにくい。そういうものが組み合わさった場合、現状のような警戒監視体制が取り続けられるのか、高をくくってはいけないと思う。また、今回は地上レーダーが正確に観測しにくい910kmまで上がっていて、日本政府も当初は2発を発射した認識していた。これまでは発射ポイントに近い韓国の記録と海上自衛隊の記録を突合して分析してきたが、日韓GSOMIAの失効によりそれが難しくなる」との懸念を示した。

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 折しも北朝鮮の金明吉首席代表が5日に予定されているアメリカとの実務者協議に向け、スウェーデンに向かったタイミングでの発射。2月にベトナムのハノイでトランプ大統領と金正恩委員長が会談して以降、停滞していた両国の非核化協議が進むかと見られていただけに、最近では"様子見"の姿勢を見せてきたアメリカも「挑発を慎むように求める」と強いトーンで反応している。

 日米の安全保障政策に詳しいハドソン研究所の村野将研究員は「今年に入ってから北朝鮮が発射したミサイルは基本的に射程が1000km弱の、いわゆる短距離弾道ミサイルだった。しかし北極星シリーズのロケットエンジンは2000km程度飛ぶものだと明らかになっていて、今回も高度や射程を通常の弾道軌道に直すと、おそらく2000km強飛ぶことになる」つまり、北朝鮮が日本や韓国全域を捉える準中距離ミサイルの開発を再開したということになる。もちろん新しく作った兵器システムの実弾を発射して検証するという目的もあるだろうが、ここにきてそのようなミサイルの発射を再開したことが、どのようなメッセージ性を持つのかということが重要だ」と話す。

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 「アメリカにとっての脅威とするには射程をICBM並に伸ばすか、潜水艦の能力を向上させてアメリカの近くまで進出させられるようにすることが必要だが、北朝鮮が保有している潜水艦はかなり旧式で音も大きいので、アメリカや日本の対潜水艦能力に容易に探知されてしまうだろう。その意味で、アメリカは現時点では脅威であるとは考えていないだろう。それでもアメリカ政府で国防や安全保障に責任を持っている人たちはSLBMの発射や日本を射程に捉える中距離ミサイルの発射には強く対応しなければいけないと考えている。そこで4月以降、短距離ミサイルに対しては"大したことではない"と言っていたトランプ大統領の反応を試そうとしている可能性がある。加えて、もし日本、あるいは韓国との対応にばらつきが見られれば、日米韓の連携を崩すことにも繋げられる」。

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 一部の米メディアは「アメリカが暫定的に経済制裁を緩和する妥協案を提案する方針」だと報じている。これが本当であれば、緩和は完全な非核化後としていた従来の方針を変えることになる。一方、"対北朝鮮強硬派"と知られ、先日トランプ大統領の補佐官を解任されたボルトン氏は講演で"米朝間の現状を完全な行き詰まりだ"との認識を示し、"金正恩委員長は核能力維持のためには何でもするだろう。現状で自発的に核を放棄することはあり得ない"と主張している。

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 この点について潮氏は「非核化に真摯に向き合っているとは思えない。現に、着々とできる範囲の最大限の努力を傾注し続けている。その標的にされている日本としては、これを黙認すべきではない。仮にトランプ大統領が何も言わなければ、黙認したに等しいということになるし、日米同盟の信頼性も問われる」とコメント。

 村野氏は「確かに制裁緩和についての報道が出ているが、本当のところはわからない。2月に行われた2度目の米朝首脳会談で、アメリカは具体的にどの施設を放棄するのかを北朝鮮側に約束させたかった。しかし北朝鮮は放棄をすでに約束していた豊渓里核実験場と東倉里のミサイル実験場を放棄するというだけで、寧辺の核施設をどの程度放棄するかということについては明確な回答をしなかった。それにより会談は破綻、北朝鮮の求めに応じてアメリカが用意していた経済制裁緩和などの支援も提供されなかった。今回、首脳会談に向けた協議を進めるためには、どちらかが条件面で譲歩しなければならないが、アメリカ側が経済制裁を一時的にサスペンドするということで譲歩する可能性も入ってくると思う。しかしアメリカ側だけが譲歩し、北朝鮮がミサイル能力や、核能力を温存するということではいけない」と指摘した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:潮氏と村野氏の解説(期間限定)

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