5日、ベルサール渋谷ガーデンで開かれたONEマーシャルアーツ・ファンフェス内で「ONE Warrior Series」が開催され、内藤頌貴が初の国際戦に挑んだ。この大会はONEチャンピオンシップの人材発掘と育成を目的としたイベントでもある。

「アニキに続けという気持ちは一切ない」「修斗フライ級で地位をあげたい」「外国人と戦ってみたかった」

 2度のONE世界ストロー級チャンピオンに輝いた内藤のび太を兄に持つ内藤頌貴は戦前、そのように意気込みを語った。内藤の相手はタイのタイガームエタイ在住の米国人ファイター、アレックス・シルドだ。

 両者がリングに並び立つと、普段は水抜き減量をして56キロで戦う内藤が、同じ61キロで計量を終えているシルドより一回り小さく見える。胸板が厚く、肩の筋肉が発達しているシルドはタイガームエタイでグラップリングの指導者でもあり、当然のようにレスリング&柔術で内藤を攻略してくると予想された。しかし、シルドは様子見の打撃から組みつくと思いきや、思い切りの良い右ミドルを放ち、内藤の前進を左ジャブで止めるなど、思いもしない打撃主体の攻撃を繰り出してきた。

 そんなシルドの勢いのある打撃を目にしたファンは、内藤の苦戦を予想したに違いない。内藤の登場までMMAで国際戦を戦った日本勢はキャリア2戦目や負け越しているカンボジア勢から挙げた2勝のみ。内藤と同じ修斗で7勝しウォリアーシリーズでも勝利している長田拓也がモンゴル人ファイターにギロチンチョークで敗れ、キャリア最多のSARAMIも韓国人選手に殴り負けた。シルドの右ミドルを見て、『あぁ、内藤もか』という空気がリングサイドを支配するなか、彼はミドルをブロックし左ストレートを顔面に打ち込んでいった。

「打撃で来たのは意外でした。やっぱり大きかったし、グラップルで来られるとテイクダウンされて下になることは覚悟していたので。逆に僕は戦いやすくなりした」

 そのように試合を振り返った内藤。確かにシルドの打撃はパワーがある。ただし、パンチも蹴り単体で掛け引きもなく、種類も多くない。パンチはただ勢いよく振れば当たるとわけではなく、その前の段階の駆け引きや手順が必要になってくる。その手順がないシルドの打撃を内藤が見切るのには時間はそれほど要しなかった。シルドの攻撃にカウンターを合わせ、自ら距離を詰めて細かくパンチを纏めていった。

 ただ内藤は殴られるとムキになり、足を止めて手痛い反撃を食うという課題があったが、今回は冷静に自ら攻撃を当て、焦ってテイクダウンを仕掛けられても、問題なく対応できていた。途中で内藤の左を被弾して鼻が折れたシルドも、最後まで心が折れきれずに戦い続けたことに対して、内藤は「逆に様子を見過ぎて、仕留める動きができなかった」と反省しきりだった。

 それでも「デカくても人間。外国人も変わらないことが分かりました」と確実に経験値を増した内藤は、今大会出場前と気持ちは変わらず修斗フライ級でトップを目指す。そして「のび太の弟じゃなくて、アニキが頌貴の兄と言われるよう……内藤兄弟として見てもらうよう頑張る」と、勝利の余韻に浸る時間も短く、既にこれからを見据えていた。

写真・文/MMA PLANET

【映像】内藤の左を被弾して鼻が折れたシルド

内藤の左がシルドの鼻を粉砕
内藤の左がシルドの鼻を粉砕
「ストVとコラボ」が大好評! ONE WARRIOR SERIES KO集 |
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