アメリカのトランプ政権は8日、中国による少数民族の弾圧をめぐり、中国政府の関係者らにビザの発給を制限すると発表した。
アメリカ国務省によると、ビザ発給の制限対象となるのは、新疆ウイグル自治区での少数民族の弾圧に責任があると判断された、中国政府や中国共産党の関係者。新疆ウイグル自治区での人権侵害をめぐっては、中国の監視カメラ会社など28の企業や団体が少数民族の拘束や監視に関わったとして、アメリカ商務省が7日に禁輸措置を発表したばかりだ。
中国国内の新疆ウイグル自治区にある“再教育施設”には、イスラム教徒を多数派とするウイグル族が大量に強制収容され、ウイグルの文化・宗教戒律などを徹底的に否定するような教育を受けているとされている。“共産党の思想に洗脳するための場所”として国際的に非難される一方、中国政府は「あくまで自発的な職業訓練センターで、テロリズムと闘っている」としている。
そんな中、いま国外のウイグル族の間で話題になっているという動画がある。そこには、収容者数百人を目隠しで連行しているとみられる様子が映っており、再教育施設から刑務所に移す際の映像ではないかということだ。
CNNの取材に対して中国当局は、「法に準拠した犯罪の取り締まりは、あらゆる国で共通して行われている」と強調したうえで、「新疆での犯罪取り締まりは民族や宗教と一切関係がない。司法当局が拘置所の収容者を護送するのは普通の司法行為だ」と話している。
この映像が公になった経緯について、『ニューズウィーク日本版』の長岡義博編集長は「中国の高官への説明用に撮られたものだと思うが、流出した経緯はハッカーによるコンピューターへの侵入だと言われている」と説明。
また、アメリカが中国への措置を続けることについては「トランプ大統領としては下がり気味だと言われている経済に集中したい状況だ。米中貿易戦争で悪化した関係を改善するためにファーウェイとの交渉を軟化したり規制を緩めたりと、“アメ”を使おうとしているが、アメだけでは中国に言うことを聞かせることはできないので、時には“ムチ”も使う。このウイグルの問題はそのムチに当たる」との見方を示した。
アメリカでは来年に大統領選を控えているが、長岡氏によると外交はあまり得点にはならず、他国の中国での人権問題に国民の興味も薄いという。しかし「それは日本人にとっても同じこと」だといい、「ウイグルと聞くとシルクロードのドラマチックなイメージを持つ人は多いと思う。今日本人は香港に大きな関心を寄せているが、ウイグルではそれ以上に深刻な人権侵害が行われていて、日本もアメリカももっと関心を持っていい。先ほどの映像はこれまでに出てきていないニュース性の高いものだ。隣の中国で起きている人権問題を認識することが大事だと思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)
▶映像:ウイグル“目隠し連行”の様子
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