勝負が決した瞬間、放送席から「あぁ…外れてる」という声が上がり、館内にはどよめきが起こった。
10月13日、両国国技館で開催されたONE Championship「ONE: CENTURY 世紀」で、ONE参戦2戦目を迎えた仙三が、リト・アディワン(フィリピン)に右ヒジの脱臼による1ラウンドTKO負けを喫した。“タップしない男”がアームロックを耐え抜いた末の衝撃結末だった。
第5代キング・オブ・パンクラシストとして日本を代表するMMAファイターの1人、仙三。前回は緊急オファーから準備期間2週間という強行スケジュールで参戦し、ONEを代表するトップファイター、ダニー・キンガッド(フィリピン)と激闘を演じたものの0-3の判定負け。3ラウンドの打ち合いでキンガッドを追い込み仙三の粘り強さ、打ち合うスタイルの片鱗を難敵相手にみせた。今回は、ONEでのベスト体重となるストロー級に階級を下げての参戦だ。
対戦相手のアディワンは、キンガッドと同じく、ONEでチャンピオンを数多く輩出しているチーム・ラカイ所属の選手。登竜門リーグ「ONEウォリアーシリーズ」から無類の強さで昇格を果たし、トップ戦線に加わるポテンシャルを持つ新たな才能だ。
元ボクサーの仙三は卓越した打撃スキルと持ち味の粘り強さが信条の選手。1ラウンド序盤から打ち合いに挑んだが、アディワンの奇襲の首投げから腕を取られ、完全に極められてしまう。ガッチリ決められた腕を仙三が徐々に抜きなんとか脱出。レフェリーが両選手を解くと、仙三の右ヒジがあらぬ方向に外れており試合は即ストップ。アディワンのTKO勝利がコールされた。
一瞬何が起きたか判らないアクシデント。スローでみると、アディワンの袈裟固めからアームロックの時点で仙三のヒジは外れていたようだ。本来タップすべき場面で耐え抜き、立ち上がる時にリングについた右ヒジが完全に脱臼し逆方向も向く凄惨なシーンがモニターに映し出され、館内にはどよめきが起こった。試合前日に「意識がぶっ飛ぶまでいく」と強い決意を明かしていた仙三にとってあまりにも不本意な結果だろう。
試合後にはツイッターで「なにもできずに負けました なんの言葉もなにも言えないです」と力無くコメント。「みんなと約束守れなくて本当にごめん 謝ったってなにしたってダメだけど でも生きなきゃだから 沢山応援してくれた人が力をかしてくれた人がいる自分が情けなくてダメだって頑張って生きなきゃ」と再起を誓う言葉を綴った。
極められてなおタップしない仙三の戦い方には、根性を称える声も批判する声も賛否両論だろう。しかし、これもまた「決して諦めない男」仙三がリングで体現する生き様なのかもしれない。ONE2連敗となってしまったが闘志溢れるファイトスタイルと共に、今度こそ3度目の正直、37歳でなお伸びしろを見せる男の再起に期待したい。
写真/井賀孝
(C)AbemaTV