今月16日、IOC(国際オリンピック委員会)が東京オリンピックのマラソンと競歩の開催地を札幌に移す検討をしていると発表、翌日にはバッハ会長が「IOC理事会は東京の組織委と緊密に協議しながら、マラソン協議を札幌に移すことを“決めた”」「日本の気温はここ数年で上昇している。選手を第一に考えなければならないし、札幌は東京よりも気温が5~6度低い」と発言した。
■すでに300億円以上を道路舗装に投入
背景にあるとみられているのは、9月にカタール(ドーハ)で開催された陸上世界選手権だ。暑さを考慮して夜に開催されたにも関わらず、多くの選手が棄権、続々と車いすやカートで運ばれる事態となった。2019年8月2日の東京・札幌の気温の変化を見てみると、朝5時の気温は「東京:27.1℃」「札幌:23.2℃」、午後2時の気温は「東京:34.9℃」「札幌:33.2℃」という結果となっている。
納得できない小池百合子東京都知事は「なぜ札幌なのかということ、いつ誰がどのように検討してきたのか。開催都市であるこの東京都に協議もなく、札幌という提案が突如なされたことにつきましては、大変疑問を感じざるを得ないというところだ」と憤慨、「これまでも準備を重ねてきたので、東京でという気持ちは変わらない」と主張。
事実、都では路上競技の暑さ対策として、舗装表面に赤外線を反射させる遮熱性樹脂を塗るなどして、昼間のアスファルト舗装の路面温度の上昇を減少させる“遮熱性舗装”の工事などを進めてきた。18年度末の報告によると、目標のおよそ136kmのうち95%にあたる129kmがすでに整備が完了しており、これまでに300億円以上の予算が投入されている。都側は21日、マラソン競技の開始時間を午前6時から午前5時からに前倒しする対抗策を提案した。
しかし大会組織委員会の森喜朗会長は「健康第一に、アスリートファースト。IOCとしてはこれが一番いい案じゃないだろうかと。組織委員会としては、受け止めるということは当然じゃないか」と札幌案への理解を示している。
■千葉真子氏「札幌なら日本のメダルは遠のく」
元マラソン選手でスポーツコメンテーターの千葉真子氏は「懸念も残る中、スタート時間やサマータイムの導入など、色々なことを検証した上でスタート時間を午前6時に決めていた。選手や運営側もそこに合わせて準備をしてきたわけで、大会スケジュールが発表された後の変更というのは異例だ。日本選手の場合、5時スタートであれば1時には起床して準備をする。自国開催でありながら、そのようにして時差生活をしていかないといけない。また、東京は暑いのでスピードの上がらない“耐久レース”だが、札幌は涼しいので比較的スピードの上がるレースになるので、準備の仕方も変えなければならない。20℃前半という気温は全て選手にとって走りやすい気候になるので、耐久レースの方が得意な日本選手にとってはメダルが遠のくことになる。ただ、健康第一の平和の祭典・オリンピックで健康を害してしまうことになれば問題だし、札幌としては2030年のオリンピック誘致にもつながると思う」と話す。
■「ナイトマラソン」という選択肢も
一方、交通規制しやすい首都高速道路で夜間に競技を実施する“ナイトマラソン”というプランもある。
建築家で都市計画家の重松健氏は「夜は直射日光もなく気温も下がってくるので、健康対策にもなる。同時、選手に首都高速で走らせ、ドローンで追跡する映像を撮影することで、東京の夜景の俯瞰が世界に流れることになる。例えば一瞬でも汐留あたりの地下トンネルを通るのであれば、チームラボさんに作ってもらって、近未来のコースを通ってもらう。そのくらいのことをやってもいいのではないか。そのようにして、“道路中心”から“人中心”の都市に変わる象徴として、都心環状線の解放というメッセージを打ち出し、東京が未来都市としてどう変わっていくのか、その覚悟を見せていければ、オリンピックを開催する意味にもつながってくるはずだ」。
こうした提案について、千葉氏は「選手目線で言うと、早めに開始時間が分かっていればそこに合わせるだけなので、そこまで大きな支障はない。ただ、高速道路は傾斜があり、体が傾いてしまうのは少し辛い。一部なら良いが、全て首都高速というのは厳しいのではないか」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)
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