日韓首相が1年ぶり会談…長さ20分、文大統領の親書に意味はあったのか?
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 きのう行われた、安倍総理と韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相による1年ぶりの会談。時間は10分の予定が20分に延長され、「日韓関係が冷え込んだままではいけない」「対話は継続すべき」という共通認識が確認されえた。また、会談の最後には、文在寅大統領からの親書が安倍総理に手渡されたという。

 関係悪化のきっかけとなった元徴用工への日本企業の賠償責任を認める判決からおよそ1年。今回の会談について韓国外務省は「両国関係の発展を望む文在寅大統領の親書を渡し、安倍総理も感謝を表明した」とコメントしたが、外務省幹部は「今のタイミングで日韓関係を改善していこうとだけ親書に書かれていても意味がない」、菅官房長官も「日韓関係の改善のためには、韓国が国と国との約束を遵守することによって、日韓関係を健全な関係に戻すきっかけを作る必要がある。こういうふうに考えている。引き続き韓国側に賢明な対応を求めていきたい」と発言している。

 李首相は、東亜日報の東京特派員や韓日議員連盟の幹事長を務めた“知日派”で日本語が堪能な人物だが、韓国首相(国務総理)の役割は大統領を補佐し、行政各部(各省庁)を統括するものであるため、日本の首相とでは立場が対等ではないとの見方もある。

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 この点について、同日放送のAbemaTV『AbemaPrime』に出演した、日韓関係に詳しい慶応大学の西野純也教授(現代韓国政治)は「韓国は大統領制の国の中でも極めて大統領の権限が強く、行政府のナンバー2である国務総理の役割は内政、国内政治に限定されている。その意味で、外交的な力がそれほどないということは事実だ。ただ、文政権の中で日本のことについて一番よく分かっているのは李さんであり、国務会議などで大統領と話す機会もある。昨年の秋以降、ハイレベルでの会談は行われてこなかったので、会うという事自体は無意味ではない」と話す。

 その上で、「極めて短時間の会談だったこともあり、懸案を大きく前に動かすきっかけになるかどうかは今後を見なければいけない。それから、安倍首相、官房長官がおっしゃったように、日本側の従来の“国と国との約束を守ってほしい。そこがまずスタートだ”と、韓国側に65年の協定の実行を促すポジションであることは変わらない。それでも“重要な日韓関係をこのまま放置してはいけない”という認識をハイレベルで共有できたことには意味がある。大統領の親書をナンバー2の国務総理に託したというのも、この状況を何とか管理したいという韓国側の意思の表れではないか。韓国国内でも、李首相の訪日が何らかの突破口になるのでは、ということで期待も高まっていた。実際には事実関係は何も変わっていないが、総理同士の握手によって雰囲気は少し良くなった。しかし、11月のASEAN関連会議、APECの会議でのサイドラインの首脳会談を韓国側は目指していると考えられるが、最高指導者同士が会うためには環境が整わなければいけないし、懸案に対するそれなりの前進の目途が付かないと会えない。その観点からすると、高い期待はできない」とした。

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 一方、韓国・文在寅政権はその土台が揺らいでいる。懐刀だった曺国(チョ・グク)氏の法相辞任を受け、政権支持率も初めて40%は切った。さらに24日には、前法相の妻で、大学教授のチョン・ギョンシム容疑者が表彰状の偽造や横領などの疑いで韓国の検察に逮捕されている。

 西野氏は「文大統領が当選した時の得票率が41%だったので、40%を下回るということは、岩盤支持層に亀裂が入りつつあるということ。この趨勢がこのまま続くのか、あるいは盛り返していくのかについては留意する必要がある。曺国さん本人にどれくらい捜査の手が伸びてくるのかということになるが、裁判の結果が出るまでわからないし、それは2年、3年とかかる話でもある。確かに文政権には打撃ではあるが、だからと言って、すぐに政権がレームダック化していくと見るのはまだ早いだろう。文大統領が目指す検察改革が進むのか、それとも国会で法案が通らずに挫折してしまうのかがポイントだ」と分析した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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