10月25日ジャカルタで開催されたONE Championship「ONE：DAWN OF VALOR」に参戦した日本の内藤大樹が、ムエタイルールでアレクシ・セレピソス（ニュージーランド）に3ラウンドTKO勝利。かつて那須川天心を追い続けた23歳が、新天地で圧倒的な強さを見せつけ、ムエタイ・キックのモンスターがひしめき合う「怪物リーグ」への殴り込みを果たした。
内藤は先月、ONE日本大会の前哨戦「Road to ONE：CENTURY」でWPMF日本スーパーバンタム級王者・渡辺優太に1ラウンド秒殺KO勝ち。そのわずか1カ月後のONE本戦への出場を決めた。ONEへの参戦には、先立ってタイトルマッチまでのぼりつめている所属ジム「BELLWOOD FIGHT TEAM」のオーナーでもある鈴木博昭の戦いに触発された面も大きいだろう。オープンフィンガーグローブへの対応など、ONE独特のルールや環境を知る鈴木のアドバイスのもと、着実なステップアップを遂げトップリーグ入りを果たした格好だ。
一方の対戦相手のセレピソスは地元ニュージーランドでタイトルを総なめ、ムエタイ、ボクシング、ラウェイなど複数の立ち技ルールを経験した実力者だ。
試合は内藤が序盤からカーフキックを効果的に繰り出す展開。総合格闘技でメジャーになりつつある、ふくらはぎを狙った蹴りで相手の出鼻をくじく戦略だ。カーフを軸に内藤のミドル、ロー、前蹴りと軽快なコンビーションが次々と入る。蹴りを嫌う相手に対し、内藤の左右のストレートも当たりセレピソスが早くも後退。1ラウンド終了間際には内藤の強烈な右ストレートが顔面を捉える。
2ラウンド開始時からサウスポーにスイッチし流れを変えたいセレピソスに対し、内藤も即対応し左のカーフぎみのローを蹴り込む。距離が近くなり相手のパンチを交わしながら、冷静にジャブを1発2発と正確に当てていく。セレピソスにも強烈な左右のストレートがあるが、左足のダメージが大きくパンチの精度にも影響を及ぼしている。ラウンド後半に意地のコンビネーションを当てるが、このラウンドも内藤優勢で終えた。
最終3ラウンド、逆転を狙い前に出るセレピソスに対し、内藤は前蹴りや首相撲でのヒザと相手に合わせながら着実に1発を当てる落ち着いた入り。大ぶりぎみの相手のカウンターを狙いパンチ、ハイキック、前蹴りと効果的な攻撃を加えていく。ラウンド残り1分、内藤が狙いすましたような右フックを当てダウンを奪った。これまでのダメージの蓄積も大きいセレピソスは後退し、アッパー、ヒザ、ヒジとまとめて打ち込み続けると、終了間際にレフェリーが試合をストップした。
試合後、内藤は勝因について「気持ちハートの部分」とコメント。ONEスーパーリーグでの戦いについては「フライ級は世界の強い選手がたくさんいて日本人が勝つのは難しいですけど、僕が日本人を代表してモンスターたちと戦って勝ち抜いていきたいと思う」とアピールした。
内藤のキャリアを辿ると、RISEなどに参戦し打倒・那須川天心を掲げ2度敗れたことから「天心を追い続けた男」というニックネームが独り歩きしてしまった感はある。しかし工藤政英やMOMOTAROなど、ONEに参戦している世界基準の選手たちを次々と倒してきた日本を代表するムエタイ・キックの強豪を着実に倒してきた。
ムエタイとキック2つのリーグがあるONEスーパーシリーズは紛れもなく世界一の強豪がひしめき合う「怪物リーグ」だ。フライ級にはロッタン・ジットムアンノン（タイ）、ジョナサン・ハガティ（英）、パンパヤック・ジットムアンノン（タイ）、シットンノーイ・ポーテラクン（タイ）、ペッダム・ペッティンディーアカデミー（タイ）などタイや欧州の王者クラスのビッグネームがひしめき合っている。
ONEにひと足先に参戦したMOMOTAROや鈴木博昭も最強ムエタイ・キック勢を相手に健闘するなか、モンスター相手に内藤大樹がどこまでのぼり詰めるか注目だ。
