東京五輪でメダル獲得なるか!? 実は日本発祥のスポーツ『ケイリン』

来る2020年、東京五輪が開催されます。

五輪自体となると1998年の長野冬季五輪以来22年ぶり、夏季五輪となると1964年以来56年ぶりに日本で開催される五輪。日本発祥のスポーツとして、先の東京五輪より正式競技となっていた『柔道』に加えて『空手』も今大会より初採用されると話題になりましたが、もうひとつ日本発祥の種目があるのをご存知でしょうか?

それが『ケイリン(KEIRIN)』です。

欧州を中心に人気の自転車競技。特に人気種目である「スプリント」にて1977年、中野浩一選手が日本人初の金メダルを獲得しました。1975年に競輪選手としてデビューした、わずか2年後のことです。

この功績を受けた日本自転車競技連盟は、世界選手権での『競輪』開催を国際自転車競技連合に打診しました。その後も中野浩一が連覇していったことも大きく関与したでしょう(1977年から1986年にかけて世界選手権10連覇!)。1980年より正式採用されたのです。

ケイリンと競輪の違い

日本ではこの自転車競技である『ケイリン』を公営競技の『競輪』と表記を変えていますが、それはルールに違いがあるからです。

●競技人数:競輪が「7~9人」に対して、ケイリンは「5~8人」

●バンクの素材:競輪が「コンクリート」に対して、ケイリンは「板張り」

●バンクの長さ:競輪が「333m~500m」に対して、ケイリンは250m

●カント:競輪が「約30度」に対して、ケイリンは「約45度」

●周回数:競輪が「4~6周」(約2km)に対して、ケイリンは「8周」(2km)

●レース形態:競輪が「ライン戦」に対して、ケイリンは「個人戦」

見た目に大きく違うのはバンクの形状です。

長いと500m、短くても333mという競輪を見慣れている人にとって250mはかなり短いです。それなのにカントが約45度。スキーやスノーボードをやる人なら感覚としてわかると思いますが、45度は“壁”と言ってもいいくらい急な斜面。1周333mでカントが35度の小田原競輪場が「すり鉢バンク」なんて呼ばれてますが、比べものにならないくらいのすり鉢です。グルグルと回る選手を見ていると目が回ってしまうほど……。

そこを8周するのですが、残り約2周半(600m)までは競輪と同じように先頭誘導員(ペーサー)が風よけになってひっぱります。以前は『デルニー』と呼ばれる原動機付き自転車を使用してましたが、現在は電動アシスト付き自転車を使用しています。

さて、ペーサー後ろに選手はどう付くのか。

競輪であればラインを組みますので、号砲後にラインを代表する選手のひとりが先頭誘導員の後ろを取りに行くかどうかの駆け引きが行われ、すぐ後ろに付くことを「スタート(S)を取る」と言います。

Sを取った選手が引いて捲るのか、突っ張って先行するのか。過去のデータと照らし合わせて展開を予想するのが、競輪の醍醐味のひとつとなっています。

一方、ケイリンでは積極的にラインを組まないことになってますから、自分の戦術に合わせたベストなポジション取りを個人ですることになります。

ペーサーは始め時速35kmで進行し、徐々に時速50kmまでペースアップすることが決まっています。徐々に速度が増していく中、ライバル同士の激しい駆け引きがくり広げられた後、残り600mでペーサーが退避すると同時に急なカントを利用して一気に加速! すり鉢をグルグルと周りながら、抜きつ抜かれつのデッドヒートの果てにゴールを駆け抜ける姿は圧巻の一言です!!

その様は世界の自転車競技ファンを魅了し、人気ナンバー1レースの「スプリント」に負けず劣らず人気となったケイリンは、2000年のシドニー五輪より正式種目として採用されました。

“メダル請負人”ブノア・ベトゥ氏の手腕に期待

2008年の北京五輪では「男子ケイリン」で永井清史選手が見事3位に入賞し、銅メダルを獲得しました。

ちなみに2012年のロンドン五輪から「女子ケイリン」が正式導入されましたが、世界で戦っていける女子選手を育てようということで『ガールズケイリン』は始まったのです。だから、ケイリンに近いルールで行われているのです。

男子競輪の『KEIRIN EVOLUTION』という単発のレースも同様のルールで開催されています。

さて、2020年は自国開催ということで、日本発祥のスポーツ・ケイリンで是が非でもメダルを獲得したい日本自転車競技連盟は、“メダル請負人”と呼ばれるブノア・ベトゥ氏を招聘しました。

過去にはフランス、ロシア、中国の代表チームを指導してメダルを量産している人物。今回、開催国のヘッドコーチという依頼に対し、母国フランス代表チームの話を断って来たとのこと。この並々ならぬやる気の表れか、就任から1年後の2017年には競輪選手としても大活躍している脇本雄太選手がワールドカップの「男子ケイリン」で金メダルを獲得。翌2018年には河端朋之選手が世界選手権の「男子ケイリン」で銀メダルを獲得しています。

そう、ケイリンの日本代表には有名な競輪選手が名を連ねているのです。前述の脇本雄太選手、河端朋之選手に加え、渡邉一成選手、新田祐大選手、深谷知広選手、雨谷一樹選手が「男子エリート強化『A』指定選手」。「『B』指定選手」には113期のエースといっても過言ではない松井宏佑選手や同じ静岡支部の113期、吉元大生選手。青森支部の107期、新山響平選手もいます。

なお「女子エリート強化『A』指定選手」には小林優香選手と太田りゆ選手がおり、悲願の金メダル獲得に向けて日々猛練習をしていることでしょう。

これらの選手は近年、ケイリンの国際大会出場やナショナルチームの合宿などで、競輪のほうの斡旋が少なくなっています。来年に向けて、さらに少なくなってしまうことは競輪ファンとしては寂しいところではありますが、競輪選手が五輪で金メダルを獲得したとなれば、それはそれで誇らしさすら感じることでしょう。

また、国際舞台の経験を積めば、ケイリンにおける仕掛けどころの妙などといったレースの運び方を大いに学ぶことになり、それが競輪に生かされることで、競輪というレースがさらに進化する可能性はありますし、自転車レースに対する心構えや準備といったものは後輩に受け継がれていくでしょう。

ケイリンによって競輪という競技がさらに魅力的に進化する可能性を感じつつも、純粋にレースとして楽しめるケイリンを、我々、競輪ファンも観戦&応援していきましょう♪

文・ウエノミツアキ

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