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(10月20日の後楽園大会で睨み合う両者。22日の大会では清宮の負傷もあったが王座戦にどう影響するか)

 キーワードは「新しい景色」だ。11月2日、プロレスリング・ノアが両国国技館でビッグマッチを開催する。そのメインイベントは、王者・清宮海斗に拳王が挑むGHCヘビー級選手権試合。

 23歳と若い清宮だが、海外遠征から帰国するとトップ戦線へ。昨年12月、史上最年少でノアの頂点の証であるベルトを巻いた。その後も先輩レスラー相手に防衛を重ねた清宮。新たな親会社がつき新体制となったノアで「ファンに新しい景色を見せる」と言い続けてきた。ここ数年、選手の離脱や興行の不振が目立ったノアだが、清宮はそこから脱却していく“復興”の象徴だ。

 若い王者が軸となってフレッシュな闘いを展開することで、ベルトを狙う中堅・ベテランの個性も際立つようになった。その中で飛躍していったのが拳王だ。リーグ戦「N-1 VICTORY」に優勝してタイトル挑戦を決めた拳王はキャリア12年目。重い蹴り、ダイビングフットスタンプに加え鋭い舌鋒も武器の一つだ。

 新体制ノアでユニット「金剛」を結成すると反主流派にポジショニング。「会社、いや親会社のリデットエンターテインメントが……」と毒づくのが定番になった。そのマイクアピールは笑いの隠し味も絶妙。自身が「クソ野郎ども」と呼ぶファンの支持を得ている。

 かつては良くも悪くも「真面目」なイメージがあったノアだが、この拳王に杉浦貴、丸藤正道に中嶋勝彦と主力選手が実力と同時にマイク、コメント、SNSでクセ者ぶりを発揮。そのことで格段に見応えが上がった。

 清宮は初防衛戦で拳王を下しており、両国からは防衛ロードが“2週目”に。ここで勝つことで清宮政権はより強固になる。ノアの「新しい景色」のためには、時代を逆戻りさせるわけにはいかない。

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(前哨戦で清宮が披露したストレッチプラム式フェイスロック。いわば「三沢光晴+川田利明」の技で、川田の指導でさらに強化している)

 しかし拳王は「清宮がチャンピオンになってGHC戦線に刺激がなくなった」、「会社、いや親会社のリデットエンターテインメントに持ち上げられて綺麗だった心が曲がったんじゃないか」と挑発。10.20後楽園ホールでの前哨戦を終えると「期待されて、チヤホヤされて苦しくないか? 今のお前の目には迷いがあるぞ」と揺さぶりをかけた。

 対する清宮はマイクを奪い取って「プレッシャー? あるよ。でも俺は応援してくれるお客さんの気持ちを背負ってここまできたんだ」。拳王の言葉に比べると直球で青くさくもあるが、そこが今の清宮のよさでもある。若さをそのまま武器にしているのだ。コメントがまだ達者ではないところまで含めて、圧倒的に好感度が高いのである。

 個性が違う先輩と後輩。23歳のチャンピオンと34歳の挑戦者。そのライバル関係自体が「新しい景色」と言えるかもしれない。ノアマットでは三沢光晴vs小橋建太、丸藤vsKENTAなど数多くのライバル対決が生まれてきたが、清宮vs拳王は今の“最旬”カードにほかならない。

 11.2両国では丸藤vsグレート・ムタ、杉浦vsマイケル・エルガン、谷口周平vs藤田和之といった新鮮なシングルマッチも組まれている。その中でメインのGHCヘビー級タイトルマッチが最大のインパクトを残せるかどうか。それも「新しい景色」更新への重要なポイントだろう。

文・橋本宗洋

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