（得意技の一つ魔法少女プランチャで飛翔する坂崎。女子プロレス界屈指のハイフライヤーだ）
11月3日のDDT両国国技館大会はケニー・オメガの参戦もあって世界中のファンから注目を集めた。この大会には、DDTグループ全団体から選手が出場。中継で東京女子プロレス、ガンバレ☆プロレス、BASARAの選手を初めて見たというプロレスファンも多かったのではないか。
そんな初見ファンに、おそらく大きなインパクトを残したのが東京女子プロレスのシングル王座戦、中島翔子vs坂崎ユカだ。どちらも東京女子の旗揚げメンバー。2人で初代タッグ王者になったこともある。
スピーディーでテクニカル、かつ独創性の高い闘いぶりは東京女子の真骨頂と言っていい。他団体との本格的交流がないこの団体で、彼女たちは自力で“東京女子スタイル”を磨いてきた。DDT両国大会は、それを世界に向けて発信する最高の機会だった。
試合序盤、坂崎はマウントポジションからのゴゴプラッタ（フットチョーク）を仕掛ける。空中殺法を武器とする坂崎だが、総合格闘技の動きも“隠し味”として使ってくるから油断できない。
さらに中島のトペをエプロンでのコンプリート・ショットで迎撃。ロープに走っての攻撃にカウンターでブレーンバスターを合わせる場面もあった。いずれも絶妙なタイミングで、相手の動きを見切っていなければ不可能だったはずだ。お互い研究し、裏をかき、先の先まで読み合う攻防。パートナーとしてもライバルとしても切磋琢磨し続けてきた2人だからこその闘いだった。
（ライバルでありパートナー。その関係はこれからも続く）
坂崎は中島のフィニッシャー、ダイビングセントーンを自爆させるとマジカルメリーゴーランド、マジカル魔法少女スプラッシュとたたみかけて3カウント。2度目の戴冠であり、これが中島からの初勝利だった。
「あっという間だった。でも永遠に続くと思った。ベルト獲って嬉しいけど、中島翔子に初めて勝てた！」（坂崎）
「悔しいけど、悔しいってことはまだまだ上に行けるはず」（中島）
勝者も敗者も泣いていた。前哨戦から激しくぶつかってきたが、バックステージで顔を合わせると「ありがとう」と言って抱き合った。
団体の頂点の座をかけた試合であり、両国国技館のビッグマッチで海外のファンにも見られた試合。けれどもそれは観客の数に左右されない“2人だけの世界”でもあった。見る者の心を奪った独創的な闘いは、床にマットを敷いたライブハウスの試合からまっすぐつながっている。そこに東京女子プロレスの誇りがある。
文／橋本宗洋
写真／DDTプロレスリング
▶映像／女子プロレス界屈指のハイフライヤー
