(11日の会見にて。すでに団体の新ロゴも決定)

 DDTの“大社長”高木三四郎が、新たな団体運営に乗り出すことになった。

 先日、著書『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』を上梓した高木は、11月11日に出版記念イベントを実施。その中に緊急記者会見が組み込まれていた。

「マット界を震撼させるかもしれない」発表とのふれこみだっただけに会場を訪れたファンも興味津々。そんな中、高木に呼び込まれて登壇したのが松本都だった。

 発表されたのは、松本が代表を務める「崖のふちプロレス」を高木個人に事業譲渡するというもの(今後は「崖のふち女子プロレス」に)。DDTとは関係のない、あくまで個人的な活動で、「オーナー」である高木のポケットマネーで運営されるという。まさにワンマン体制だが、基本的には松本都に「丸投げ」といういつものパターンだ。

 高木の著書発売イベントということで、会場には一般メディアの記者も多かったのだが「崖のふちプロレス」と言われても目を「?」にするばかり。一部コアファンが歓喜する一方、会見がとっ散らかった内容になったのも当然だ。

 あらためて説明すると、松本都は今年7月にアイスリボンを退団し、フリーになった女子プロレスラー。完全な“非実力派”でありながらアイスリボンの頂点ICE×∞のベルトを巻いたこともあり、またアイドルデビューしたかと思えば後輩レスラーをアイドルとしてプロデュース、さらにフェス主催などプロレス以外の面でもバイタリティー(強引な実行力)を発揮してきた。

 そんな松本の“代表作”とも言えるのが「崖のふちプロレス」だ。一時的にアイスリボンを追放されていた時期の松本が立ち上げた団体で、松本が代表、所属も松本ひとり。まさに崖のふちで旗揚げしつつ、不定期開催ながら熱狂的なファンを獲得した。

 大会は基本的に1vs1、ワンマッチのみで開催。「五番勝負」形式が多く、その中で「なぞかけ対決」、「笑ってはいけない対決」、「魔界村対決」(1面のレッドアリーマーを倒すと勝利)など、プロレスの枠を大きく広げる、もしくは逸脱する闘いが展開されてきた。そんな興行にもかかわらず、鈴木みのるが参戦したこともある。松本の異能ぶりがそのまま大会に反映されていると言っていいだろう。実際、しばしば観客とスタッフを置いてけぼりにしながらも、最終的に「見てよかった」と思わせるものがこの団体にはある。

 ここしばらくは開催されていなかったが、高木オーナーにより「崖のふち女子プロレス」として新体制で再スタート。これまでは引退、退団していく選手の「見送り」イベント的側面もあったが、今後は従来の形式にとらわれず、より自由にイベントを作っていきたいという。対戦相手も女子にこだわらないようだ。

「サブカルチャーとして世界に発信していけるものがある。非常に文化的な女子プロレス。女子プロレスの新しい歴史を世界に発信していきたい」

 大社長のコメントもかなりの強気。才能を買われた形になる松本は「ヘッドハンティングされたということで。これから選手の青田買いもしていきたい。どんどん引き抜いていければ」と物騒なコメント。さすがに高木オーナーも「昭和が残ってる。もう令和なんですから」と苦言を呈した。高木オーナーはこの会見を重要なものと考えており「できれば明治記念館あたりでやりたかった」と濃い目の発言も。

 ともあれ、破天荒な動きをさせたら(リング内外で)業界随一の松本都を、マット界一おとなげない男・高木がバックアップする「崖のふち女子プロレス」への一部好事家からの期待感は非常に高いものがある。新生旗揚げ戦は12月24日、蕨レッスル武闘館で開催。首都圏最小クラスの会場から世界に何が発信されてしまうのか。ニヤニヤしながら待ちたい。

 なお、高木オーナーによると「崖のふち女子プロレス」はDDTグループのブランドになるわけではなく、東京女子プロレスとの交流も一切なし。また松本都のサイバーエージェント入りも「絶対にない」と念を押していたことも伝えておきたい。

文・橋本宗洋