今年の東京女子プロレスは、札幌大会に岡山大会、仙台大会と地方での新規開催が増えた。来年はアメリカ・フロリダ州タンパでの大会も。日本全国どころか世界的にファンを増やしている。11月16日には、今年最後の地方遠征となる名古屋大会(日本ガイシスポーツプラザ第3競技場)が行なわれた。メインイベントは伊藤麻希vsナイトシェイドのインターナショナル・プリンセス選手権。今年は首都圏以外の大会でもしばしばタイトルマッチが行なわれてきた。
これに加えもう一つ、「名古屋スペシャルタッグマッチ」と銘打たれた試合も。坂崎ユカ&瑞希vs上福ゆき&白川未奈という顔合わせだ。坂崎と瑞希の「マジカルシュガーラビッツ(マジラビ)」は元タッグ王者。団体を代表するコンビだ。そんな強豪に、成長著しい上福&白川のグラビアタッグ「PINK READY」が挑むという構図。
上福と白川は前タッグ王者・NEO美威獅鬼軍とのタイトル戦で善戦しており、今回の一戦も試練であると同時に期待の表れ。そうでなければ、あえて「スペシャル」という言葉が使われることはない。
また重要なのは、東京女子プロレスにおける「成長」とは、正統派レスラーとして強くなるという意味だけではないということ。結果を出し、タイトル戦線に絡みながら観客を爆笑させてもいい。個性を貫くことに価値があるのだ。
(善戦のPINK READYを地力の強さでねじ伏せた坂崎と瑞希)
マジラビとの試合は実力を示す絶好のチャンス。しかし上福と白川は、試合前の握手を拒否して観客にグラビアポーズ。結果、背後から攻撃を喰らうハメになった。それが彼女たちのスタイルであり、我流を極めることこそ東京女子のスタイルだと言える。
PINK READYは上福の目潰しから反撃開始。そこから白川のロメロスペシャルに上福のビッグブーツという鮮やかな合体攻撃も。坂崎の魔法少女スプラッシュは白川がヒザを立てて迎撃。実力で上回るマジラビに、ギリギリのところまで食らいついてみせた。
結果、瑞希のキューティースペシャルで白川が敗れたが、東京女子のタッグ戦線におけるPINK READYの存在感をあらためて示す試合になったのは間違いない。伊藤や上福は、いわゆる“個性派”だ。以前の彼女たちにとって、それは“実力はさておき個性は強い”という意味だったのだが、今は違う。セミファイナルやメインイベントでファンを沸かせる力を持った“個性派”に成長したのだ。
この名古屋大会、前半戦ではデビュー約1年の原宿ぽむが3wayマッチで(敗れたものの)インパクトを残した。11.3DDT両国大会での渡辺未詩のタッグ王座戴冠も含め、東京女子プロレスの風景、勢力図は確実に変化している。
文・橋本宗洋