自殺や餓死者も…限界に達する日本の「入管」の実態を、元職員と長期収容されていた外国人に直撃
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 年々増加の一途を辿る訪日外国人旅行者や留学生。その出国・入国に関する業務を担っているのが「入管」だ(今年4月に出入国在留管理庁から入国管理局から名称変更)。入管は、不法滞在している外国人などを把握、取り締まる役割も担っており、6月末の時点で入管の施設に収容されている外国人は1147人で、そのうち長期収容者(6カ月以上)は679人と、実に半分以上を占めている。

 その入管が、滞在資格などの確認のため一時的に収容した女性外国人らについて、着替えやトイレなどを24時間体制で監視を行っていたことが判明。森まさこ法務大臣は改善する方針を示した。問題はそれだけではない。今年9月には長期収容者がストレスで自殺を図るという事態が発生、さらに全国の施設で抗議のハンガーストライキを行うケースが相次ぎ、餓死者も出るなど、健康被害も深刻化している。

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 2017年から2年にわたって収容されていたクルド人男性のアリさん(仮名、22)は、民族迫害の絶えないトルコから難民として来日。しかし難民として認められず滞在資格を失い、収容された。その後、ストレスで精神的な病気に罹り、現在は治療のため一時的に帰宅することができている。しかし“仮放免”の期間はわずかに2週間で、再び収容される可能性もある。「17時間も同じ部屋にいて、動物園と同じ。自由はない。医者はいない。何かあったらどうするのか」「入管のせいで17人死んだ!自殺!精神的におかしくなって17人死んだ」。

 16歳で日本に来たというアリさん。「周りの人に、“日本はいい国だ”と言われた。(地域、周囲の)日本人の対応はやさしかったが、入管の中は辛い。職員の対応も悪かった。このご飯はまずいから食べないと言ってもチェンジできない。いつも同じ食事だ。今は家に帰って来たが仕事はできないし、違う県に行くこともできない。保険もないし、何かあったらどうすればいいのか。誰が責任を取るのか。そこをまず直して欲しい。難民を認める国に行きたい。カナダとか。(日本には)恨み(がある)」。

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 こうした現状は世界からも批判されており、国連自由権規約委員会・国連人種差別撤廃委員会は「収容は最短期間であるべき。他の手段が十分検討された場合にのみ」と日本政府に求めている。法務省は改善の必要性を認め、対策を検討中だ。

 お笑い芸人のパックンは「今は永住権を持っているが、数年前までは入管に通って手続きをしてきた。職員さんは丁寧で優しいし、同じ建物でこういうことが行われているとは、ほとんどの人が意識できないと思う。僕たちは正規ルートでビザを取っていたが、彼らも難民申請をしているという意味では正規ルートだろう。同じような対応をしてほしいと思う」、ジャーナリストの堀潤氏は「正面玄関はパックンさんのような人たちが出入りするが、脇に回って見ると、上の階の窓に収容されている人たちが見える。三脚を立ててカメラを向けると、大きな声で“映像をテレビ局に持っていってくれ!”と訴えてくる。とても東京23区内だとは思えない光景だ」と話した。

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 そんな中、18年勤めた入管を今年3月に退職、「入管問題救援センター」を立ち上げた元入国審査官の木下洋一氏だ。“反入管”ではなく、システムを見直す必要性を訴える“脱入管”の立場で活動している。

 「入管は主に3つの仕事をやっている。一つ目が出入国と在留管理。正規在留者の人たちの在留審査もここに含まれる。二つ目は、日本は難民条約を批准しているので、難民認定申請の審査。三つ目が、オーバーステイなど、非正規在留者の人たちの退去強制手続き・送還業務、あるいは問題となっている収容の処遇業務だ。そして、入管には入国審査官と入国警備官がいる。入国審査官は入国審査、在留審査等を担っていて、入国警備官は収容や送還業務を主に担っている。基本的にはビザを持っていない人たちは在留資格を持っていないことになり、法律上は全員が収容されることになっている(全件収容主義)。また、日本から出ていきなさいという退去強制令書が出されている人たちは送還が可能になるまで収容が継続できることになっているので、そもそも期限がない」。

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 また、入管を取り巻く現状について、「ひと頃は2万人近い申請者がいたが、現在も難民認定申請をしている人が1万人を超えている。そして、その中には難民ではない人もかなり含まれているのが実情だ。なぜかと言えば、以前は難民認定申請をして半年間、我慢していた。例えば観光ビザで入ってきて難民認定申請をすると、半年間で働けるビザがもらえた。それを目的に難民認定申請をする人たちが結構な数いたからだ。また、難民認定申請をすると、その期間は強制送還されない。そのため、送還を忌避する手段として利用する人たちもいる。真に難民として保護を求めている人たちもいるはずなのに、全て一緒になって審査されているし、そもそも1万人分を処理できるだけの能力がない。また、収容能力にも限界がある。そうすると、ある人は仮放免されるが、ある人はそれが認められず、収容が継続されることになる。
その仮放免の基準が法律で定められているわけでもない。そして、退去強制は国が責任をもって送還することになっていて、国費で賄われることもあるが、それがなかなかできない。そのため、実は95%くらいの人が自分で出国している。やはり入管そのものの問題というよりも、システムの問題だ」と指摘する。

 その上で木下氏は「第三者機関を入れるべし」「全件収容主義を見直せ」「基準を作ること」という3点を挙げる。「入管が収容する時に、令状主義の例外で、裁判所の令状がいらない。仮放免をする・しないが入管の裁量で決まる。その裁量に全く基準がない。仮放免だけではなくて、あらゆる入管のほとんど手続きは裁量で決められている」と話した。

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 堀氏は「弁護士の皆さんが支援活動をしていて、どのくらいの医療的処置が行われたのかなどの情報公開を求めているが、出てくる情報はいわゆる黒塗りの“のり弁”の資料だ。しかも、留め置かれている方々のご家族の方々が地域コミュニティの中で、“難民ということは何か怪しい人なのか”と、あたかも犯罪者のような、いわれのない差別を受けていることもある。先進国として、そういうことに対して責任を果たせない国ということは恥ずかしい。そもそも冷静に考えて、クルド系のアリさんたちが本国に戻れるのか。戻る場所がないからこそ、難民条約に加盟している日本を頼ってきたはずだ。そのことを入管もよくわかっているから、長期収容せざるを得なくなっている。非常に宙ぶらりんだ。国連などから指摘されているのは、入管での難民認定申請の判定基準が厳しすぎるということだ。本人に迫害を受けているかどうかを証明させるのは厳し過ぎるから、もう少しグレーゾーンの幅を広げるべきだということだ」と指摘。

 「いま貼られている入国警備官募集のポスターを見ると、「日本の安全を守る。」と書いてある。確かに水際で日本を守るのは大変な役割だ。ただ、その話と難民申請をした方々に対する手当ての問題は別の話だと思う。本来だったら難民申請の方々への対応は、入国警備官ではない担当者によって行われるべきではないか犯罪歴がある方々もいれば、行き先がなくて日本を頼って来る方々、全てを一緒くたに扱ってしまっているのを丁寧に仕分けする必要がある」。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:「日本は良い国と聞いていたのに...恨んでます」入管施設の実態とは

「日本は良い国と聞いていたのに...恨んでます」入管施設の実態とは
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