若者を中心に警官隊との激しい衝突が続いた香港。大規模なデモ活動などが影響し、区議会議員選挙では民主派が8割超の議席を獲得し圧勝する結果となった。
実はこうした民衆による動きが起きているのは香港だけではない。いま世界的に反政府デモの波が押し寄せている。
イスラム教シーア派大国・イランの影響力が強い中東の国々では政治不安が広がり、レバノン共和国で10月、サード・ハリリ首相が辞任に追い込まれた。政府への抗議活動の引き金は、スマートフォンの通話アプリ「ワッツアップ」への課税方針。生活苦や汚職に対する市民デモは瞬く間に広がり、国のトップを追い詰める結果になった。
同じく中東のイラクでは、デモ隊と治安部隊の激しい衝突が続いている。香港同様、治安部隊の催涙弾とデモ隊による火炎瓶の応酬。イラクではこれまでに300人以上が死亡している。
さらに、エジプトでも首都カイロで大統領辞任を求める大規模なデモが起こるなど、中東では政情不安が拡大している。
中東と同じく市民が立ち上がったのが南米だ。チリ共和国で22日に行われた、一見お祭りのように見えるデモ。チリでは10月25日、地下鉄の運賃値上げをきっかけとしたデモ行進が行われ、40万人を超える人々が参加した。行進だけではなく激しい衝突も起こり、デモ隊による火炎瓶で警察官が火だるまになる衝撃的なシーンも。治安の悪化が影響し、11月に予定されていたAPEC首脳会談の中止をチリ政府が決断した。
同じく南米のエクアドルでは10月、政府が燃料費の補助を廃止したことをきっかけに反政府デモが発生。
コロンビアでは労働組合や学生らが経済改革を批判する大規模なストライキがあった。座り込みなど平和的な訴えが目立ったが、一部が過激化し、警察や軍の鎮圧により少なくとも3人が死亡した。
ボリビア多民族国では、10月に行われた大統領選挙での不正疑惑をきっかけに抗議デモへ発展。当のエボ・モラレス大統領は辞任を表明しメキシコに亡命するなど、国内は大混乱となった。
テレビ朝日元アメリカ総局長の名村晃一氏は、世界で起こる反政府デモの波が香港デモと関係があると指摘する。
「香港のデモはアジアだけではなく世界的に注目されている。そのニュースを知るのはスマホやSNSで、香港の動きを見て『我々も』と続く人たちが多くいる。香港のデモが約半年前からで、中東・南米各地での暴動も夏以降ぐらいの時期に集中している。香港デモをリアルタイムで感じ取った民衆が不満をぶつける動きになっている」
では、これまでのデモとSNSで広がる今のデモに違いはあるのか。名村氏は「今年の傾向としてワシントン・ポストは『街頭抗議者の年と言ってもいいのではないか』としている。路上で抗議をするということでSNSで広がりを見せているが、カリスマ性のある人が率いているわけではない。こういった抗議活動は1960年代に多く、当時は強いリーダーが現れて、それに民衆がついて行って社会を変えるという形だった。今はひとつの方向性のようなものはあまりないが、様々なきっかけから政権の腐敗などに発展してデモも大きくなる」と指摘。
一方、リーダーがいないことでデモの終着点が見えづらくなっているとし、「ヨーロッパは不況に入りつつあるとされ、南米は1次産業に頼った経済構造から変化する時代がこれから来る。これらのデモはこの先の世界を占うきっかけ、まだ序章に過ぎないと思う」と述べた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)









