増税からもうすぐ2カ月…「キャッシュレス還元には撹乱効果あり」「さらなる増税の前に“稼ぐ力”を」
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 少子高齢化が進行して働き手が減少する一方、年金や医療費などの社会保障費の増大に歯止めがかからない日本。IMF(国際通貨基金)が日本経済について分析、2030年までに消費税を15%に引き上げる必要があるとの報告書を公表、2050年までにさらに20%にまで段階的に引き上げるべきとも提言している。

 ネット上には「消費税15%になったら、私はもう生きようと思わなくなる」「消費税無くしたら皆ものを買う。間接税上げるより法人税を上げるべき」「IMFの言うことを聞いた結果、破綻した国があった。ギリシャとアルゼンチンだ」「年金など老人の医療費に使うなら反対。保育などに使うなら良い」といった意見が投稿されている。ただ、他国の消費税率と比較してみると、韓国10%、中国13%、ドイツ19%、イギリス20%、フランス20%、イタリア22%、スウェーデン25%となっており、日本の10%は決して高いとは言えない。

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 元日銀マンでエコノミストの鈴木卓実氏は「増税直後のタイミングだったので注目されただけで、IMFだけでなくOECD(経済協力開発機構)などの国際機関が毎年のように言ってきたことだし、日本の民間シンクタンクも、このままでは持たないと訴えてきた。そもそも少子高齢化は今に始まった話ではないし、今年は台風被害が出たが、防災にもお金がかかる。そのためにはどこかで税を確保しなければならないが、税収が少ないため、このような指摘を受け続けている。確かにIMFには外務省や日銀からの出向者もいるし、出資枠もあるので日本人理事もいるが、日本側が言わせているということはない。スウェーデン(税率25%)のような北欧の国の場合、高負担の代わりに福祉をしっかりやって、ある種のバランスをとっている。一方、日本の負担は高くなく、福祉は中ぐらいというアンバランスさがある。常識的に考えて、いきなり5%上げることはないだろうが、数年後に再増税の議論は始まるだろう」と話す。

 一方、全国のスーパーの10月の売り上げは駆け込み需要などの反動などで前年の同月比で4.1%減少。11月に入っても衣料品や住宅関連商品は伸びていないのが現状だ。また、政府は今月の経済報告で製造業を中心に新規の求人が減少していることから、雇用についての判断を「着実に改善している」から「改善している」に下方修正した。有効求人倍率も4月以降は下降傾向にあり、9月は1.57倍となっている。

 こうした数字について、鈴木氏は「景気動向の先行指数でいえば、米中貿易摩擦の影響で製造業の受注が弱くなっているため、2018年くらいから下がり続けている。消費税の駆け込み需要もあったが、これだけ下がってくると、一致指数が今の水準から下に引っ張られてくる可能性があり、さらに景気が悪くなるのは間違いない。また、企業や実際に商売をされている方に景気について尋ね、“良い”から“悪い”を引いて数字を作る景気ウォッチャー調査の結果は肌感覚に近いが、これも駆け込み需要で上がった一方で、雇用関連はずっと下がり続けている。まさに皆さんの所得が上がらないと感じているところが問題だ。やはり雇用関係、所得関係は先行きも厳しいと見ているということだ」と説明。「この点は、大企業の経営が過去の成功を捨てることも重要だと思う。バブル後の不良債権処理などの時に、リストラで生き残った皆さんだが、給料を下げてコストカットすれば、どんどんジリ貧になる。もっとスキルに投資して、稼ぐように切り替えなければいけない。役員も多すぎるので、その分教育コストに回すことは意味があると思う。私が銀行について書いた記事のコメント欄を見ると、“銀行員は給料が高いのでもっと下げろ”という声が多い。それは感覚としては分かるが、それをやっていくと経済はどんどん縮む。“給料に見合った分、ちゃんと稼げ”というのが正しいと思う」と提言した。

増税からもうすぐ2カ月…「キャッシュレス還元には撹乱効果あり」「さらなる増税の前に“稼ぐ力”を」
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 IMFは10月から始まった「プレミアム付き商品券」(来年3月まで)、「キャッシュレス決済ポイント還元」(同年6月まで)といった増税緩和措置について、2020年以降も延長すべきとの見解も示している。

 「プレミアム商品券は手続きが面倒なのでやらない人も多いが、キャッシュレス決済は大きいし、日常的に使えるので消費税の負担感を抑えられている。実は源泉徴収などで社会保障などは上がり続けているが、そちらはあまり問題になっていない。 消費税はリタイアされたお年寄りからもとれるので再分配の政策としては意味があるが、消費税が嫌われるのは、取られたことが分かりやすいからだ。その点、今はコンビニでキャッシュレス決済をした時、8%と10%があり、さらに5%引かれてと…となるので、消費税をいくら払ったのか、自分でも分からなくなっているのではないか。その目くらまし、攪乱効果が重要だ」。

 その上で鈴木氏は「増税批判の一つに、“法人税は下がって大企業は得をしているのに、なんで我々が苦しまなければいけないのか”というものがある。それはその通りだ。やはり取れるところからしっかり取っていくということをしないと、そもそも消費税を上げることへの恐怖感、嫌悪感で難しくなる。一方で、必要な税収は確保しなければいけないので、その筋もつけないとダメだと思う。何に、どのように使われるのかの納得感があれば、皆さんも納めてくれると思う。いずれにしろ、消費税は20%、30%と上がることになるだろう。しかし、それよりも先に給料が上がっていけば、その部分でかなりの税収が確保できる。だからこそ、稼ぐ力をつけないといけない。そうでないと、消費税の議論は未来永劫、不毛なままだ」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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