DDTの赤井沙希が、シングルマッチ七番勝負をスタートした。題して「赤井沙希、おきばりやす七番勝負」。プロレス界では、古くから様々な選手が“七番勝負”や“五番勝負”に挑んできたが、基本的には期待の新鋭によるもの。だが赤井は、芸能界からプロレスにチャレンジして7年目になる。このタイミングでの七番勝負実施は「もう1段階ステップアップを」という団体からの期待の表れだろう。ただ結果と内容が厳しく問われるという意味では試練にもなる。
11月24日の後楽園大会における七番勝負第1戦、対戦相手はアイスリボンの取締役選手代表、昨年の女子プロレス大賞受賞者である藤本つかさだった。デビュー前から赤井を知る藤本は「華があるのはもう分かっていること。お客さんはそれに飽きているかもしれない。華以外の部分を見せてほしい」と試合前にコメントしている。DDTでは“華やか”というイメージが先行しがちだった赤井が、後楽園という大舞台で“喜怒哀楽”をいかにぶつけるかがこの試合のテーマと言えた。
赤井はゴング直後に走りこんで顔面蹴り。エプロンでのPK、ダイビング・クロスボディとたたみかけていく。その後も蹴りを中心に攻め込む赤井。藤本は赤井の攻撃を真正面から受けまくり、激しさを引き出しているようにも見えた。
藤本も随所でドロップキック、サッカーボールキックを正確に打ち込むと、張り手の打ち合いも。女子プロレスらしい意地の勝負だ。最後は粘りに粘る赤井を、レジェンド・豊田真奈美から受け継いだジャパニーズオーシャン・サイクロン・スープレックスホールドで藤本が下した。
(靴跡クッキリの藤本はどこか満足気)
試合後の藤本の顔には、強烈な蹴りでできた靴底の跡がクッキリ。「これがすべてじゃないですか」と満足げに語った藤本は「DDTのメインイベントに立ってほしいし、ベルトも獲ってほしい」と赤井へのエールも。
敗れた赤井にも手応えはあったようだ。藤本への声援を受け止めつつ、その上で「顔面を蹴ってやりました」。後楽園のファンの前で激闘を展開した経験から「次からはもう負けない。七番勝負の最後まで勝ち続けます」。
藤本の“女子プロレス”を味わうことで、赤井沙希の新たな覚醒が始まった。大会中に発表された第2戦(12.28後楽園)の相手は旧姓・広田さくら。藤本とは打って変わって、女子プロレス界で最もトリッキーな選手と言っていい。これも赤井にとって大きな試練となり、だからこそ覚醒を促すはずだ。
文/橋本宗洋
写真/DDTプロレスリング