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(タッグパートナー同士の記念試合に臨む潮崎と中嶋)

 プロレスリング・ノアのGHCヘビー級タッグ王者チーム「AXIZ」の潮崎豪と中嶋勝彦は、今年ともにデビュー15周年を迎えた。中嶋は2004年1月5日にプロレスデビュー、潮崎は7月24日に初ファイト。デビュー時の所属は違ったが、同年デビューの“同期”となる。その2人のシングル対決が、12月3日の後楽園ホール大会で行なわれることになった。デビュー15周年記念試合だ。

 すでにシングルでも実績のある両者のタッグは、結成からの期間こそ長くないものの抜群のチーム力を誇る。潮崎はチョップとラリアット、中嶋は蹴りを武器としておりファイトスタイルは違うが「似ている部分もある。同じ時代を生きてきた同期にしか分からない感覚があるんですよ」と中嶋は言う。「15周年記念試合で、タッグ王者対決として勝さんと試合するとは思ってなかったけど、運命的な気がしますね」とは潮崎の言葉だ。

 2人は直前の11.26新潟大会でもチームを組んで闘い、今回のインタビューを行なった11月28日にはノアのテーマ曲集CDの発売記念イベントに揃って出演している。この取材自体も一緒だった。

 そういう状況でも、対戦に向けてのスイッチはすでに入っているという。「自分たちは憎しみ合っているのではなく、お互いに認めて認められてという関係。その上でベストな闘いを見せたい」(潮崎)。中嶋は「嫌いな奴は嫌いですけど(笑)、リスペクトしているからこそできるいい試合ができるのもプロレス」と語った。

 ライバル意識なら、そもそも15年前から持っている。所属団体に同期がいなかったため、新人時代からお互い気になっていた。初遭遇は2005年のノア・東京ドーム大会。それぞれの師匠である小橋建太と佐々木健介の伝説的名勝負があった大会だ。潮崎は小橋、中嶋は健介のセコンドにつきながら、ひそかに対抗意識を燃やしていたという。「俺のほうが紙テープを一本でも多く回収してやる」という意識まであったそうだ。

「タッグとしてはお互いの力が相乗効果になる闘いをしてますけど、対戦するとなったら奪い合いですよね。やっぱり絶対に負けたくないんです。こっちが一発でも多く攻撃してやろうって気持ちになる。他の選手以上に、豪さんに対してはそうなります」(中嶋)

「同じ試合に出てなくても、勝さんの試合は気になるから見ますよ。内容でどっちが勝ったか、お互い勝手に比べてるんです。タッグを組んで試合していても、実は“自分のほうが目立ってやろう”という気持ちはありますし」(潮崎)

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(イベント中は息の合ったトーク。中嶋といると潮崎の“自由”っぷりも際立つ)

 キャリア15年。ともにすごしてきた時代を、中嶋は「シンプルに言えば大変でした。厳しい時代でしたね」と表現する。「何しろ凄い先輩たちばかりでしたから。そしてキャリアを重ねてきたら、今度は下がどんどん伸びてきた。自分たちは板挟みというか、中間管理職みたいなもんです(苦笑)」。

 ただ逆に言えば、今は団体全体を見渡せる位置にいるし「体力は万全、かつ経験値もある。本当にいい時期を迎えているし、自分たちがノアの中心にいるべきだと思ってます。チーム名のAXIZも中心っていう意味(AXIS)ですから」と中嶋。

 49歳の杉浦貴がまったく衰えを見せず、丸藤正道は“天才”ぶりに円熟味を加えてきている。GHCヘビー級チャンピオンは成長を続ける23歳の清宮海斗。そのライバルとして拳王がいて、新人の稲村愛輝も急速に存在感を増している。そんな状況だからこそ、中嶋と潮崎に対し「シングルでももっと主張して目立ってほしい」と考えているファンも多いのではないか。

 シングル戦線について聞いてみると、潮崎は「いつでも行ける準備はあります。虎視眈々と狙ってます」。中嶋は「今はタッグ戦線を盛り上げたいという気持ちが強いですけど、シングルで退くつもりはまったくない」と言う。

「勝さんと組むことは現状を打破するために必要なこと。もちろん現状に満足はしていない。16年目に自分がいかに加速していけるか、勝さんとのシングルは、そのため絶好の機会になるはず」(潮崎)

 ただの記念試合にはしたくないという思いもありつつ「純粋に豪さんとの闘いに没頭したい」と言うのは中嶋だ。「今、このタイミングで自分たちが闘う意味、ストーリーを感じてほしい」。

 中嶋からは「本当はやりたくないですけど」という言葉も。なぜなら「豪さんの攻撃は一発たりとも食らいたくない(笑)。チョップは力がまっすぐきて、刺さるんですよ。そして背中まで突き抜けていく。今はタッグを組んでるから、久しく豪さんのチョップ受けてないんですよ。嫌だなぁ(笑)」

 潮崎には、中嶋の蹴りについて聞いてみた。「痛みが伝わる」ことを信条としているその蹴りは“プロレスの蹴り”として業界ナンバーワンと言ってもいいものだ。

「いつも言ってるんですけど、勝さんの蹴りは全部的確で、全部同じところに入るんです。他の選手は少しずれるんですけどね。もらったら本当にきついですよ。でも食らってるうちに気持ちよくなってくる。夢の中にいるみたいな感じで」(潮崎)

 お互いの技を食らうのが嫌だからこそ「リングに上がったら覚悟を決める」と中嶋。「何発食らっても倒れたくない。そこは15年の意地ですよ」と潮崎。お互い、どれだけの蹴りとチョップを繰り出すのだろうか。

「この試合を誰よりも楽しみにしているのは自分自身」(潮崎)

「他の選手が嫉妬するような試合を」(中嶋)

 ノンタイトル、どちらが勝っても負けても恨みっこなしのパートナー対決にして記念試合。しかし内容の激しさについては「間違いない」と口を揃えた。信頼もライバル意識も特別な同期との対決は、おそらく“意地の張り合い”がポイントとなる。

文・橋本宗洋

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