“管理職”が異常に多い日本企業、40代の早期退職が急増!これからはプライドを捨てて“仕事のプロ”を目指せ
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 働く現場で人手不足が叫ばれる中、40代、50代の社員に対し早期退職を募る企業が増えている。

 味の素は先月、「黒字だからこそ、厳しい事業環境を勝ち抜くために変化・構造改革を着実に進めていく必要がある」として、50歳以上の管理職約800名を対象に希望退職者を募集することを明らかにした。人数は100名程度(応募が超過でも受け入れる見通し)で、「特別加算金」を上乗せした退職金を支給し、再就職も支援するという。

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 東京商工リサーチによると、今年に入って希望・早期退職を募集した上場企業は実施企業35社、募集人員1万500名超に上り、昨年(実施企業12社、募集人員4120名)の数字を既に大きく上回っている。

■「手を打つならば今、ということで一斉に動き始めたのだと思う」

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 人事コンサルタントの城繁幸氏は「2000年代初頭の“リストラ”の時には、経営者の中にも“雇用に手を付けるのは恥だ”という意識があり、“赤字でやむにやまれず”やっていた。それが今は“先手を打つことができるのがスマートな経営者だ”という具合に価値観が変わってきたということだ。ただ、募集人員を満たすのは一筋縄ではいかないので、管理部門としても知恵を絞る。絶対に残さなければいけない人と、できれば手を挙げて欲しい人を事前にリストアップしておいて、面接をする人間が微妙に態度を変え、“はい”というまで何度も実施する。あるいは“セカンドキャリア開発支援センター”みたいな部署を作り、そこに集めて面談や再就職支援のセミナーを受けさせるという企業も多い」と話す。

 また、「空気が変わった決定的な理由は、政府が成長戦略の骨太の方針に“70歳雇用をいずれ義務化する”と明文化したことだ。80年代のバブル期の定年は55歳だったのが、90年代には60歳、そして今は65歳になった。次は70歳だ。企業からすれば、これは想定外だし、70歳まで雇うのは無理だ。そこで手を打つならば今、ということで一斉に動き始めたのだと思う。そんな中、“しがみついた者勝ちだ”ということでマニュアルを作っている弁護士もいるが、それは間違いだと思う。自分が必要とされていない職場に70歳まで居続けるのは、残りの人生を針の筵に座って過ごすのと同じだ。健康寿命が72歳とすれば、定年退職してから2年しかない。だからこそ、これからの人生をどう生きたいかで決めるべきだと思う」と指摘した。

■「一般社員と管理職の比率が1対1という恐ろしいことになっている」

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 ドワンゴ社長で慶応大学の夏野剛・特別招聘教授は「日本の就業人口でいえば大企業に勤めている人は20%くらいしかない。その20%くらいの中の話だ。ほとんどが中小企業でそんな余裕はない。また、希望退職は募るもので、迫るものではない」とした上で、次のように説明する。

 「安倍政権がこれを強気で進められる最大の理由は、完全失業率が3%を切っているからだ。経済学的には、ほとんど誰も仕事にあぶれていない状態が、日本ではここ何年も続いているということだ。確かに、昔は社員を切るのはカッコ悪いという意識が経営者にあったし、リストラした経営者の自宅が晒されたり、“こんなリッチなお店でご飯を食べていた”と週刊誌が報じたりしていた。加えて、“雇用に手を付けるくらいだったら赤字でも許してくれ”と言って楽をしている経営者も多かった。それが今は株主のメンタリティも変わり、きちんとした判断ができない経営者は失格、となった。また、“セカンドキャリアセンター”みたいなものを作ると、すぐにネット上に情報が拡散してしまうので、特にIT企業では条件で差別化しようとしている。もっとも、それによって優秀な人から辞めていってしまうという問題もある。僕が取締役をやっていた会社では、早期退職者に3年半分の特別手当を出すことにした。すると、それを企画した人事部長が辞めてしまった。それを狙っていたんだろうと思う(笑)」。

 さらに夏野氏は「味の素の数字を見ると、従業員3494名のうち管理職が1600名、一般社員と管理職の比率が1対1という恐ろしいことになっている。こんなことがあるわけがない」と指摘する。

 「こういう状況が生まれるのは、企業側に一定の年次になったら役職を付けないといけないという強迫観念があり、社員の側も一定の年次になれば役職が付いて給料も必然的に上がるのが当たり前だと考えているからだ。そもそも管理職というのは、1人では出来ないこと仕事に対して、人を上手に動かしながら成し遂げる世界。それができるのは全体の1割程度の人だと思う。そして、日本の大企業では未だに30年前に入社した人の中から社長が出てくるが、それもおかしい。世の中には優秀なやつが山ほどいるので、欧米では上に行けば行くほど雇用の流動性が高く、逆に現場に近い人は終身雇用にしている。その方が効率もいいからだ。それが日本ではプロフェッショナルな人材が少なくなる仕組みになっていて、例えばテレビ制作の現場で言えば、年次が上がるにつれて経営者っぽくされてしまうが、そういう人が経営のプロに勝てるわけがない。むしろ60歳でも70歳でも制作現場の方が出来ることがあると思う。だから年功序列を排すのであれば、終身雇用はあってもいいかもしれない」。

■「プロになれればニーズは必ずあるし、仕事が楽しい」

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 では、これからの時代のキャリアについて、どのように考えればよいのだろうか。夏野氏は「通常、どこの企業にも“役職定年”というものがあり、55歳で役職を外されたり、60歳で一般社員に格下げされたりする。それを楽しめるかどうかは本人次第のところがあって、プライドの高い人は大変だ。しかし、実力あってのプライドであって、実力がないのにプライドを持っている人が多すぎる。今の環境なら、選ばなければ仕事はいくらでもある」と指摘。

 城氏は「中途採用の世界には10年ほど前まで“35歳限界説”があったが、今では40代、50代の転職も普通だ。伝統的な日本の大企業ではなく、中小企業や新興企業、外資系企業も含めればいくらでもチャンスはある。だからこそ、“伝統ある会社で課長になったんだから、一国一城の主だ”というような変なプライドを捨て、“自分が今できることの対価を労働市場から頂くんだ”という覚悟を決めれば、まず食いっぱぐれることはないはずだ。以前、『AERA』の副編集長だった方が取材に突然いらっしゃり、“役職定年で外れたから、やっと記者の第一線に戻れた”と嬉しそうに話をされていた。これが本当のプロだなと思った。それぞれの仕事に対してプロになれればニーズは必ずあるはずだし、何歳で現場に戻っても楽しい。それが今後の仕事人生、キャリアの重要なポイントだと思う」と提言した。

 カンニング竹山が「僕よりも10歳くらい年上の、あるテレビ業界の方が管理職を捨てて、今はネットや小さなテレビ局の番組を作っている。“なんで辞めたんですか、もったいないですよ”と言ったら、“俺は番組を作りたかった。上に行ってもハンコ押すだけでつまらない"と言っていた」と明かすと、司会進行のテレビ朝日・小松靖アナウンサーは「名ばかり管理職という言葉があるが、黙っていても会社にはずっといられる。でも、“この仕事もやってみてね”、という話が来るかどうかは、人によって分かれると思う。それがどこの会社でも起きているということだろう。私も年次的に管理職になり、先週には45歳になった。いつ『大下容子ワイド!スクランブル』はやらなくてもいいと言われるかわからないし、テレビ業界だって将来どうなるかはわからない。退職してフリーランスになるという話ではないが、ずっと今のままやっていけるというは保障ないからこそ、考えることもある」と吐露。すかさず夏野氏が「フリーになれば収入は増えるでしょう?」と尋ねると、「売れている人はそうです。でも私は社畜なので骨を埋めます」と応じていた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶動画:早期退職を募る大企業が多数! 人生100年時代に考える終身雇用性の限界とは

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