肛門日光浴、血液クレンジング…溢れるトンデモ医療情報に引っかからないためには?
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 Instagramを中心に、最近SNSで話題になっている「肛門日光浴」。アメリカのインフルエンサーが「始めてから元気が湧いてくるようになったし、よく眠れるようになった」として真面目に取り組んでいる健康法で、自ら実践し、その模様をInstagramに投稿する人が後を絶たない。

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 しかし『“意識高い系"がハマる「ニセ医学」が危ない!』の著者で、五本木クリニック院長の桑満おさむ医師は「あくまで気分転換、“お客様の感想”というレベル。数値化できず、科学的・医学的に肛門が選ばれる合理性が全く感じられない。写真を見ると、いかにも“パワースポット”のようなところでやっているし、気持ちはアップするだろう。そもそも健康な人たちだと思う」と一刀両断する。

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 こうした科学的根拠のはっきりしない医療情報、健康情報はしばしば“トンデモ医療”などと呼ばれるが、各種メディアを通じて私たちの生活の中に入り込んでいるのも事実だ。

 「子どもの熱が出た時、キャベツの葉を頭にかぶせる」ことや「風邪をひいた時に首にネギを巻くという方法」といった民間療法のようなものについて「おばあちゃんの知恵的なものは決して嫌いではない。肛門日光浴的なノリを面白がるのも好きだし、個人の趣味嗜好を学級委員的に規制するのは良くないと思っている」と話す桑満医師だが、不確かな医療情報が拡散されることについては、ブログなどを使って警鐘を鳴らしてきた。

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 中でも記憶に新しいのは、多数の著名人が“施術を受けた”と発信した「血液クレンジング」や、多くの人が愛用する「サプリメント」の効果にまつわる疑義だ。「本当に特殊な技術で効果のあるものであれば、それでお金儲けをするのは構わない。しかし、売らんかなのために科学用語、医学用語風のものを使って効果があると訴えるのはいけないと思う。ともすると、それは人を騙していることになるからだ。血液クレンジングについては意味がない。儀式としてやるなら否定はしない」(桑満医師)。

 そもそも医療機関で受けられるものには、標準治療と自由診療があり、前者は「医学的な有効性(エビデンス)の証明あり、保険適応、国の審査あり、例として肺がんの治療薬ニボルマブ(オプジーボ)など」、後者は「医学的な有効性(エビデンス)不明、全額自費、国の審査なし、例としてクリニックの免疫細胞療法、ビタミンCなど」といったものが該当する。

 桑満医師は自由診療について、レーシック手術など一般的に効果があるとされているものもあるとした上で、次のように注意を促す。

 「多くの方を、ある程度の率で助けられるのが標準治療で、だからこそ日本では保険適用でみんなが受けられるようにしている。しかし“標準”という聞くと、その上に何かプレミアムなものやトッピングがあるような気はしないだろうか。特にご家族の命に関わる話であれば、何かしてあげたいと思うだろう。そこが落とし穴だ。もちろん自由診療の中には海外では認められているものの日本ではまだ保険適用になっていないものも含まれているが、中には科学的・理論的にあり得ないものもある。また、標準治療の場合、1時間に10人の患者さんを診なければビジネスとして成り立たないが、自由診療なら1時間に1人、2時間に1人でも利益が出る。そうすると、患者さんとしては寄り添ってくれる良い先生に見えてしまいがちだ」。

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 医療ジャーナリストの鳥集徹氏は「“プラセボ効果”といって、偽の薬でも効くと思って飲んだり、すごいお医者さんにもらったものだと思って飲むと、それだけで多少良くなることがある。だから肛門を日光に当てることによって気分が良くなったり、健康意識が高まってより健康になったりすることは否定しない。しかし、問題はお金が絡む可能性があるということと、全てが安全だとは限らないということだ。本来、きちんと臨床試験を行い、本当に安全なのかを調べてやらないといけない。専門家や医師だったとしても、臨床試験のデータに基づかない主張は信用してはいけないだからこそ、サプリメントなどの広告では“個人の感想です”と出てくるのがそれで、あくまでも症例報告だ」と話す。

 「トンデモ医療をやっているお医者さん取材したことがあるが、すごい理屈を作っていらっしゃる。難しい医学用語を使って説明されるので、一般の方が聞くと、信じるしかないような感じになってしまうそうしたものを、がんの患者さんからお金をむしり取ってやろうと思っているような人が利用していることが問題だと思う。やはり中身が同じワインでも、高級なラベルをつけたワインと、安い値段で安いラベルをつけたワインだったら、高級なワインの方がおいしいと感じてしまうように、医療にも同じ面があって、高いお金を払うと、あるいは最先端と言われるとすごくいいものだと思ってしまう。そうではない。高いから良い、最先端だから良いではなくて、きちんと効果が確かめられて、保険適用になっていることが基本だ」。

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 両氏の話を受け、カンニング竹山は「テレビ番組も誤解を招いている可能性もあると思う」と指摘、ZOZO執行役員の田端信太郎氏は「情報の送り手として公告を手がけてきた立場からすると、例えば薬機法で規定されている部分もあるが、やはりグレーゾーンになっているところもあって、広告主が言えないからメディアが代わりにノンクレジットで言うといったことが起きてしまう。また、大手企業が水素水を出していたり、マイナスイオンやデトックスなど科学的根拠の疑わしいものも存在していたりするが、これらは害は無さそうだからまだいい。しかし、例えば肛門日光浴で痔や大腸がんが治る等と言い出し、そこにお金が絡みだすと危険だと思う」と話す。

 「ネガティブな方向の話で言えば、生活者や視聴者が不安に思うと、その感情が正しいこととされてしまう場合がある。例えば福島の処理水の話も、科学的には安全だけど、皆が安心じゃないからやめろという。醤油だって1リットル飲めば死ぬケースもあるわけで、単位や統計を脇において、ちょっとでも入っていると“汚染されている”という印象論になってしまう面がある」。

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 こうした状況を受け、インターネットサービスを提供する企業も対策を講じている。Yahoo! Japanは国立がん研究センターと共同で、がんについて検索した場合、センターが運営するサイトが1番上に表示するようにしているほか、Facebookは「奇跡の治療法」など、誇張・誤解を招くような投稿を制限している。

 桑満医師は「“インスタ医療団”という、インスタで正しい医療を広めようとしている医師のグループがいるが、ハッシュタグが悪用され、検索してきた人を“抗がん剤を使うと2つ目のがんを作る”といった情報にしようとしている人たちもいる。やはり騙す側も上手で、“何々って偽物なの?”みたいなタイトルのサイトを作り、読んで行くと、最後に“やっぱりこのサプリが効く”という広告を出すようにするなど、工夫している。私が対決しても、知らない科学用語、医学用語で攻めてくるかもしれないいし、負けてしまうかもしれない。だから騙されている人、惑わされている人を笑ったり、バカにしたりするのは絶対にダメだ。誰が言っているのか、その一次ソースが重要だ」と指摘。

 鳥集氏も「がんが消えた・治ったなど、とにかく何かに劇的に効く、という謳い文句は眉唾だと思った方がいい。以前はそのような体験談を捏造した書籍も出ていて摘発されたこともある。まずは公的機関の情報を聞き、何人かの医師に話を聞いてもいい」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

▶映像:トンデモ医療なぜ信じる?肛門日光浴も

トンデモ医療なぜ信じる?肛門日光浴も
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