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 北朝鮮の核・ミサイル問題が再び緊迫の度合いを高めている。5月以降、少なくとも4種類の新型ミサイルを20発以上も発射してきた北朝鮮に対し、表立って問題視はせず、静観の姿勢を見せてきたトランプ大統領。しかし、8日に北朝鮮メディアが発表した「非常に重大な実験」への懸念を受け、アメリカは国連に緊急会合開催を要請した。

 この「非常に重大な実験」とは何だったのか。米CNNテレビは、北朝鮮の東倉里にある「西海衛星発射場」の衛星写真を分析した結果、土砂が吹き飛ばされた形跡があるとして、ロケットエンジンの燃焼実験が行われた可能性が高いと報じている。また、このエンジンが大陸間弾道ミサイル(ICBM)のものだったとの報道もある。東倉里は2018年9月19日の平壌共同宣言で恒久的に廃棄されたはずの施設だ。

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 今回の実験について、ハドソン研究所研究員の村野将氏は「“廃棄する”という宣言をしただけで、試験場が恒久的に使えないよう加工がされているわけではなかった。むしろ11月末ごろ頃からは試験場を改修しているような動きがあるということが、公開情報の中からでも分析できていたので、それほどサプライズではない。土の地形の変化から見て、エンジンの噴射試験が行われたのは間違いないのではないか」と話す。

 「すでに北朝鮮はアメリカ全土を射程に収めるICBM級の液体燃料のロケットエンジン技術を持っているが、サイズが大きすぎるので、小型化した、より燃焼効率の高い液体燃料ミサイルにすることを意図している可能性がある。あるいは、今年に入ってから北朝鮮が行ったミサイルテストは即応性が高く性能に優れる固体燃料ミサイルなので、今回も固体燃料のロケットモーターを持ち込んで実験したのではないかという分析も出ている。ただ、西海衛星発射場は基本的に液体燃料のロケットエンジンをテストするために設計されているので、実際はどうだったのだろうか。私は、液体燃料の可能性がやや高いと思っている」。

 北朝鮮外務省はこの実験の直前、非核化交渉をめぐって「クリスマスプレゼントに何を選ぶかはアメリカにかかっている」とアメリカを挑発。トランプ大統領が「彼はロケットを撃つのが好きだろ?だから私は彼を“ロケットマン”と呼んでいる。米軍を動かさずに済むことを願うが、必要なら動かす」と軍事力行使の可能性をちらつかせると、さらに北朝鮮側は「破滅的結末を見たくなければトランプは考え直すべきだ」、金英哲副委員長も「我々は、これ以上失うものがない」と発言をエスカレートさせた。また、非核化協議の期限は年内いっぱいだと繰り返し強調。アメリカが応じなければ、相応の対応に出るとも示唆している。

 この応酬について村野氏は「トランプ大統領としては、自分と金正恩委員長が良好な関係を維持していることによって得られているメリットが大きい。だからこそ2回のツイートではどのくらいの深刻度で受け止めているかはわからないので、もう少し様子を見る必要があると思う。米軍の偵察機の活動もここ何週間かで活発になっていたし、アメリカとしては軍事的に何らかの兆候があることは分かっていると思う。そんな中、今回のようにそれなりに大きな規模の噴射試験が行われたということで、少し態度を変えたのかなという気がする」とした。

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 講談社特別編集委員の近藤大介氏は「経済制裁はかなり効いている。地方はすごく疲弊しているし、首都・平壌も夏から配給が1日300gに減っている。こんなことは90年代半ば以降なかったし、ある中国の専門家はあと2年くらいしか持たないのではないかとまで言っている。軍人たちもリゾート地の建設現場で働かされるなど、相当な不満が溜まっている。かなり追い詰められていると思うし、金正恩委員長としては何としてもトランプ大統領を振り向かせたい。そのためにどこを押せば振り向いてくれるかということで、最後の色んなボタンを押しているところだと思う」との見方を示す。

 そうした中でアメリカが要請した緊急会合。これまでアメリカは議題入りに消極的だったが、今回はアメリカの要請で緊急会合が開催された。開催には中国やロシアも含む15カ国のうち、9カ国の賛成が必要だ。

 中国の事情に精通する近藤氏は「中朝は完全に良好な関係ではないと思うが、完全に悪化しているとも言えない。中国の対北朝鮮政策は中米関係の一部で、アメリカとの交渉の中で北朝鮮という駒をどう使うかということ常にある。期限が迫るアメリカとの貿易交渉への影響を勘案しながら、国連安保理での対応を考えていると思う。もう一つ、ロシアとの関係だが、ロシアとは準同盟関係にあるので、一緒に作戦を練りながら答えを出していくことになると思う」と話した。

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 今後の北朝鮮の動きについて、村野氏は「アクションをさらにエスカレートさせることはあり得ると思う。2018年から米朝が交渉フェーズに入ったことで、2017年のような軍事的緊張はなくなっている。ただ、北朝鮮がミサイル技術や核技術の進展を進めているにもかかわらず、トランプ大統領が脅威認識を下げてしまっている状況はある。ここでもしトランプ大統領が再び認識を改めるのであれば、日米韓が歩調を合わせて行く上では必ずしも悪いことではない。脅威認識の擦り合わせをするタイミングになってきていると思う」と指摘。
 
  さらに「北朝鮮が燃焼実験など地表で行っている活動は、アメリカや日本、韓国に見られているという前提で動いているし、メッセージングの部分があるのは間違いないと思う。我々の業界で“エスカレーション・ラダー”というが、一足飛びに行動を起こしてしまうとアメリカに怒られてしまうので、なるべく刻んで相手がどう出てくるかを伺っているのだろう。これでアメリカが反応しなければ、再び2017年にやっていたような、高い軌道でミサイルを発射して日本海に落とすことを再開するかもしれないし、日本列島を飛び越えるものを発射する可能性もある」と話した。

 近藤氏も「日本を巻き込もうとするなら、日本を飛び越えるミサイルを発射するのが一番だ。来年にはあるかもしれない。私は米朝関係について、かなり悲観的に見ていて、来年前半は相当悪くなると思う。それを後半に止められるかどうかだが、金英哲副委員長が言うように、『我々に失うものはない』というのが事実だと思う。日本で言えば、小さい会社に独裁者の社長がいて、その社員みたいなもの。常に社長のことを考えている」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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