12月6日マレーシア・クアラルンプールで開催されたONE Championship『Mark of Greatness』に出場したユン・チャンミン(韓国)は、ロディアン・メンチャベス(フィリピン)と対戦し2ラウンドニンジャチョークで勝利してONEで4連勝を飾った。それまでプロ経験ゼロだったファイターが、「格闘代理戦争」から旅立って破竹の連勝街道を突き進んでいる。
強い打撃を武器に、日本経由の韓国人ファイターとしていち早くONEとの契約を結んだチャンミン。今年3月の日本でのデビュー戦から全てKO勝ちと結果を残して来たが、4戦目はややリスクのある状況での参戦だった。
当初決定していたムエタイ選手・ファビオ・ピンカとの試合が10日前にキャンセルとなり、急遽変更されたメンチャベスはレスリングや柔術ベースと毛色が異なる選手。「キックやムエタイで100試合以上戦っているようなベテラン選手が試合の10日前に欠場をするなんて。全く思っていなかった。自分にはロディアン・メンチャベスと戦うしか選択肢はなかった」と回想するように、打撃戦予想のメニューを急遽変更して試合に臨んだ。
序盤は、身長もリーチも上回るチャンミンが強い右ストレートを放つ。試合中盤、チャンミンの左ローが、メンチャベスの下腹部にあたるアクシデントで中断となったが、蹴りパンチともに優位性は変わらない。後半に入りメンチャベスの蹴り足を掴んで払いチャンミンがテイクダウンを奪うと、対するメンチャベスが下からの腕十字。これを冷静に対処したチャンミンはサイド・ポジションでヒザ。さらにトップに体勢を入れ替えてからも、左ヒジ、肩を浴びせる「肩パンチ」と打撃の意識は高い。
ネット上でも「まるでヒョードル」とコメントがあるように、残り45秒で立ち上がり怒涛のパウンド、鉄槌、ヒザとエグい有効打を次々と叩き込みニア・フィニッシュまで追い込みラウンドを終えた。
2ラウンドに入ると、チャンミンのローやパンチがことごとく当たりはじめる。メンチャベスのロー1発に対して、左右のストレートや跳びヒザのコンビネーション。首をもたげたメンチャベスの首を掴みギロチンを仕掛けると、メンチャベスはたまらずタップした。
ONE Championshipとのプロ契約を結んでから1年半、チャンミンはルーキーイヤーで4連勝と着実に勝利を重ねステップアップを遂げてきた。あくまで結果論だが、彼の現在の位置を推し量るにはロディアン・メンチャベスはやや力不足の相手だった感もあり、やはりベンチマークとなるピンカ戦が観たかったというのが正直なところだ。
現在の立ち位置から飛躍するための実績を意識したのか試合後にチャンミンは、次の対戦相手に同じストライカータイプのエドワード・ケリー(フィリピン)を指名した。ケリーは連敗しているものの、フェザー級のタイトル戦線に絡んで来た実力者だ。ケリーに勝つことがあると、一気にタイトル戦線のキャストに名が加わるいわば「飛び級」的な対戦者指名だが、やはりその先にあるのは絶対王者の存在だ。
「ストライカー同士の試合が見たい? それならばONEのフェザー級で一番のストライカーはマーチン・ウェンです。だからこそ彼はチャンピオンで、もっとも稼いでいる選手なんです。自分のゴールはトップになることです。エドワード・ケリーと戦い、その次はマーチン・ウェンに挑戦したい」とケリー超え、さらにONEフェザー級を持つウェンの名を挙げた。
ONEフェザー級のトップに登りつめるには、同郷のキム・ジェウォンや、タン・リー(中国)、最強グラップラー・ゲイリー・トノン(アメリカ)や、日本の高橋遼伍など実力者との対戦は避けられない。4連勝で「負ける気がしない」と強気のチャンミンが、一気にタイトル戦線に加わるか、2020年の展開に注目したい。