東京・中央区にある、倉庫のような外観の建物。プランテックスが手掛けている植物工場兼研究施設「PLANTORY tokyo」の中では、太陽光や土を使わず全てを“箱”の中で管理しながら野菜を育てる、新世代の農業が行われている。
「画面で表しているのはほんの一部。200を超える指標で管理していて、温度・湿度からCO2の濃度、肥料の濃さなどをはかっている。その中で特徴的なのは、光合成速度・蒸散速度がはかれること」(プランテックス・山田耕資社長)
様々な企業が研究を進めている植物工場で、プランテックスが差別化をはかるのが“閉鎖された箱”型という点。箱の中で管理することで、温度や湿度、光の量にムラが出にくくなり、均一な環境を棚ごとに設定することができるという。量産タイプの生産装置としては世界初だ。
植物工場では天候や四季を問わず環境に影響を受けないため、一定の量の野菜を安定して作ることができる。植物工場が世界中に広まることによる食料問題の解決が、いま期待されている。ただ、大きな問題はコスト面。
「電力は大きな課題。今までの農業では太陽光を使っていたので、ほぼ電力は消費しなかった。それをLEDに切り替えたことによって、電力の消費量は今までの農業と比べ上がっている」(山田社長)
インターネットが発達しなければここまで普及しなかった可能性のあるパソコンのように、植物工場には電力問題の解決が必要不可欠だ。植物工場が目指す未来について、山田社長は次のように語った。
「今までの野菜の品種は、病気抵抗性が高いことなどが第一要件。どんなに味が良くても、病気抵抗性が低いと商品化できなかった。そういったことが、植物工場だと第一要件を“味・健康成分を豊富に含んでいる”にできる。今まで食べたことがないような味のものを量産して届けられる可能性がある」
プランテックスの取り組みについて、『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏は「最適な水の量で栽培できたり、あとは農薬。今の工業化された農業では、農薬や肥料を与えすぎることによって土壌が破壊されてしまう問題がある。植物工場にすることによって資源を少なく使えるということと、地球を傷めずに収穫ができるということで期待されている分野。都市に住んでいると野菜は外から車を使って運ばれてくるが、その炭素コストを抑制できる点も期待されている」と話す。
12月12日発売の『WIRED VOL.35』では、「地球のためのディープテック」という特集でプランテックスを取り上げている。「地球のためのディープテック」とは、世界で急速に進む「深い社会課題」に対し、文明を大きく1歩前に進めるような「射程の深いテクノロジー」で解決していこうとする動きのこと。世界各地で様々なスタートアップ企業が取り組み、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾスらが投資するベンチャーキャピタルも資金を投入しているという。
こうした動きに松島氏は「地球の環境問題を解決するということは、一気に世界中にスケール(拡大)する可能性を秘めているテクノロジーばかり。それらはビジネスの文脈でもスケールが見込まれるので、世界中の投資家がこの分野に注目している」と期待を寄せた。
(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)








