今回は展開予想の重要な要素になる「勝ち上がり条件」についてお話します。
競輪のレースは通常「勝ち上がり方式=トーナメント方式」を採用しています。
トーナメントというと高校野球のように1対1で戦って勝ったほうが上へ進んでいくというのをイメージするかもしれませんが、競輪のレースは7車ないし9車が一緒に戦うため、その中の何着までが次に勝ち上がれるのかといった「勝ち上がり条件」が定められています。
基本は「初日:予選→2日目:準決勝→最終日:決勝」と勝ち上がっていく3日開催なのですが、グレードや開催日程などでいろいろと変わってきます。
例えばF2の「A級5レース(3日制)」の場合。
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○初日:「初特選」最終1Rと「特予選」全4R
↓「初特選」の1~9着と「特予選」の1~4着が無条件で勝ち上がり。5着は下述の条件
○2日目:「準決勝」全3R
↓1~3着が勝ち上がり
◎最終日:「決勝」最終1Rで1着なら優勝!
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さて、ポイントとなるのはまず初日の「特予選」5着だった場合。
準決勝に進めるのは9車立て全3Rで27人。「初特選」出場の9人全員と「特予選」の1~4着の4人×4Rで16人。合わせて25人なので、あと2人を5着から選ぶことになります。その選考条件は以下で、上から順に比較していきます。これは男子のレースであれば他の場合でも使われる条件です。
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<同着時の勝ち上がり条件・男子>
(1)競走の格優先の着順
(2)平均競走得点(直近4カ月。小数点第2位まで算出して比較)
(3)勝率(直近4カ月)
(4)連対率(直近4カ月)
(5)前期平均競走得点
(6)前々期平均競走得点
(7)抽選
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(1)の「競走の格」とか予選より選抜、選抜より特選のほうが格が上ということ。つまり同じ5着でも「特選の5着>選抜の5着>予選の5着」ということになるのです。今回の例では全員「特予選」の5着なので、これは参照されません。よって(2)から順にその数字を比べていきます。そして奇跡的に(6)まで同じだったときは抽選になります。
「勝ち上がり条件」と展開予想の関連性は?
これらの勝ち上がり条件が展開予想にどのような形で絡んでくるのか。
例えば「初特選」。無事故完走すれば全員が準決勝へ勝ち上がれます。そのような条件で無理をする必要はありますか? 基本的にはないはずです。強い選手が逃げの1車で他に積極的に逃げる先行型がいなければ、そのまんまライン決着になりますが、逆に強い選手が捲り型の場合は無理してかましたり捲ったりしにいかない可能性が高まります。そういった番組になっているなら、穴が空きやすいということになるのです。
「初特選で強豪ラインが捲り型なら穴狙い」
こういうことを書くと「選手は全レース本気で走っていますよ」と怒られるファンの方がいますが、もちろん本気なのはわかっています。本気で優勝を狙いにいっています。だから全レース全力で走ることはせずに、力を抜けるところは抜いて脚を温存する戦略も使うはずです。選手にとっては優勝することが第一目標ですから。優勝に向かって本気ですから。
もちろんこれは一般論で、「買ってくれるお客さんのために全レース全力」をモットーにしている選手もいます。地元の特選で知り合いがたくさん応援に来ているからがんばるということもあるでしょう。また、節間の後半で昇班するにはもう少し点数が必要な場合は勝ちに行くこともあります。つまり「節の変わった直後の1月や7月」で、「強豪ラインが地元じゃない」場合は上述の穴狙いの可能性はますます高まるはずです。
このような予想を聞いて「細かいなぁ~」と思うか、「奥が深いなぁ~」と思うかで、競輪を好きになるかどうか分かれるでしょう。
レースによって異なる「勝ち上がり条件」
さて、話をF2の「A級5レース(3日制)」に戻しますと、「特予選」の勝ち上がり条件が4着までというのもポイントです。3車の強豪ラインがあったとします。自分は捲りタイプなんだけど、頭までは難しいとなったらどうします? 無理せずそのラインのケツに付いて4着で十分ですよね。というわけで……。
「特予選に強豪ラインあればそのまんま決着」
このように着条件で予想は変わってくるのです。
他のレース形式での勝ち上がり条件での特徴的なものはというと、例えば「競輪祭」の場合。一次予選はポイント制なので獲得ポイントは要注目ですし、二次予選もAとBに分かれているので要注意です。このように二次予選はAとBに分かれているものは他にもいくつかあって「寛仁親王牌」もそうなのですが、AとBで勝ち上がれる順位が異なるのです。Aは4着まで、Bは2着までとなっています。
「競輪祭の二予Aはそのまんま、二予Bはヒモ荒れ注意報」
寛仁親王牌も同様なのですが、これがG2の「共同通信杯」になると二予Aが5着まで、二予Bが3着までと同じ名称の予選でも着条件が異なっているのです。だから……。
「共同通信社杯の二予Aはド本命、二予Bは連下荒れ注意報」
7レース7車立てのミッドナイト競輪やモーニング競輪の場合、初日「チャレンジ予選」はすべて3着条件なのですが、2日目「チャレンジ準決勝」全3Rは2着条件です。これで決まるのは3×2=6車。「チャレンジ決勝」に出られる残り1車は3着3人の中から上述した条件にしたがって1人だけ選ばれます。さて、自分が強豪ラインの3番手にいたとします。もしくは3番手を奪ったとします。このままゴールすれば3着確定。しかし決勝は条件になってしまう。「2着なら無条件かぁ……引っ張ってもらって申し訳ないけど、ちょい差しさせて!」となりますよね?
「ミッドナイト2日目の準決はハコ3狙い」
ハコ3というのは2番手の選手(ハコ)が3着になること。ミッドナイトでやけにハコ3を買う知人がいるのですが、このことをわかってのことだと思います。たぶん。きっと。
さて、続いてはガールズケイリンの勝ち上がりについてなのですが、男子の一般的なレースと違ってポイント制がメインとなるので、次回詳しく説明しましょう。
文・ウエノミツアキ