「説明責任」に追われた安倍政権 支持率4割の要因に“消極的支持”? 「国民を熱狂させないのが上手い」
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 「私が選んだのは、物事が始まる『始』。まさに今年、新しい時代が始まった」

 1年を振り返り、安倍総理が選んだ“今年の漢字”は「始」。令和という新しい時代が始まり、日本はお祝いムードに包まれた。しかし、安倍総理自身については「説明責任」という言葉に追われた1年でもあった。

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 今年の初めに明らかになった、厚生労働省が毎月勤労統計で不適切な調査を続けていた問題。さらに6月、老後資金は公的年金だけでは約2000万円が不足すると指摘した金融庁の報告書が国民に不安を与えた。

 それでも、7月の参議院選挙で与党は改選議席の過半数を上回る議席を獲得。国政選挙6連勝と安定した支持を得た。しかし、初入閣をはたした法務大臣、経済産業大臣という重要なポストの2人が、政治とカネをめぐる問題で、相次いで辞任した。

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 追い打ちをかけるように野党の追及が長期化したのが「桜を見る会」問題だ。11月15日、「国会から求められれば説明する」と明言した安倍総理は急きょ2回目の会見を開き、自らの疑惑を払拭する姿勢を見せた。

 その後も、参加者のデータ復元問題など野党の追及は続いた。しかし、今月2日の本会議での答弁以降、与党側が予算委員会の開催を拒否するなど、安倍総理が直接野党側の質問に答えることはなかった。

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 13日、安倍総理はこれまで激しく野党の追及を受けてきた問題を振り返り、「モリカケ問題、今年の春は統計の問題、この秋は桜を見る会。政策論争以外の話に多くの審議時間が割かれてしまっていることを、国民の皆さまに大変申し訳なく思っております」と謝罪の言葉を述べた。

 最新のANN世論調査(12月14日-15日調査)によると、安倍内閣を「支持する」と答えた人は3.5pt減の40.9%で、「支持しない」と答えた人は6.3pt増の40.6%。また、桜を見る会について安倍総理の国会説明が「必要があると思う」と答えたのは59%で、招待者名簿の廃棄・復元をめぐる政府の説明に「納得しない」と答えたのは78%だった。

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 世論調査の結果について、臨床心理士で心理カウンセラーも務める明星大学准教授の藤井靖氏は「歴代の政権を踏まえると、問題が起こった際や政権末期には支持率が20%台、30%台という結果もざらにあった中で、安倍政権はこれだけの問題がありながら『支持する』がそれほど減っていない」と指摘。その理由について、批判も擁護もしない中立的な見方だとした上で次の3点をあげる。

 「1つは政策面で、安倍政権は外交や安全保障で一定の評価を受けていること。今年の参院選の投票率は48.80%で、投票率は概ね年齢層が上がるほど高くなる。心理学的研究のデータによると、年齢が上がれば上がるほどナショナリズムや愛国心が強くなるといわれていて、投票率が高い年齢層においては他国に対してプレゼンス(存在感)を発揮することは高く評価される。また、これまでのように短期で政権が交代していないことは海外の首脳からの信頼感が高くなったり、海外メディアからの評価につながっていると思われる。特に日本人は外圧に弱いので、外国の評価を受け入れてしまう側面がある。

 2つ目は、安倍総理が国民を『熱狂させない』のが上手いこと。野党がしっかりしておらず支持率が低い、安倍総理の後継者がいないということもあって、消極的に支持されているところもあると思うが、それが逆にいい。何らかの旋風が起こったり熱狂して人気が盛り上がった時期を経ると、何かネガティブな事柄が出てきた時のギャップがより大きく感じられることになり、プラスからマイナスへの振れ幅が大きくなる。『改革』といっても、例えば『自民党をぶっ壊す』といったような熱狂を生むようなやり方ではなく、既存の枠組みを壊さない範囲でのことなので、身内からの批判や嫉妬も出にくい。この点も、消極的支持を高め、維持していくうまいやり方だと考えられる。

 3つ目は、『人に嫌われる外面的要素』が少ないこと。総理や政権に対する評価をする際人に、結局のところ、人の好き嫌いは欠かせない要因であると思う。安倍総理は見た目的に特徴があるかというとそうではなく、あと大きなポイントは声。年齢よりも少し若さを感じさせる声と、滑舌に特徴がある。日本人の文化では、生活空間の中での夏のセミの鳴き声や、

水のせせらぎのような“雑音”を良しとしてきた部分があって、他にはガマの油売りや政治家なら田中角栄さんもそのような感じ。安倍総理は声質は違うが、滑舌の特徴が聞く人に無意識に悪い印象を与えないという意味で、嫌悪の対象になるポイントが少ないと思う。そのため、例え答弁がはぐらかしであっても、質問に答えていなくとも、そして多少キレていたとしても、内容の伴わなさがカバーされている側面がある」

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 また、ここ10年あまりで日本には「シニシズム(冷笑主義)」が広がっているとし、「『冷めた目線』『無関心』『感動が薄い』といったマイナスのイメージで捉えられることもある主義主張だが、その裏には具体的なメリットや論拠を求める姿勢も入っている。政治に対して、低下しているイメージや疑惑、評判だけで評価しなくなっているとすれば、それは社会の成熟を表すひとつの指標かもしれない」との見方を示した。

(AbemaTV/『けやきヒルズ』より)

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