(ブルックスに変形ゆりかもめを仕掛けていく遠藤。渾身の連勝で決勝進出)
今回が3度目となるDDTのリーグ戦・D王グランプリのAブロック代表は遠藤哲哉に決まった。竹下幸之介に続く新世代のトップランナーだ。飯野雄貴、上野勇希と後輩に黒星を喫した遠藤だがライバル・竹下との直接対決を制すとリーグ最終戦で石井慧介に勝利。さらに同店で並んだクリス・ブルックスとのAブロック代表決定戦もクリアした。黒星先行から最後は1日2連勝、ハードな闘いだったが「すべて予想通り」と遠藤は言う。
12月28日の決勝戦(後楽園ホール)では、ZERO1のベテラン・田中将斗と対戦する。試合を前にリング上で向き合うと、所属ユニットDAMNATIONに「看板持ち」に勧誘した。対戦に向けて「黒さでも負けたくない」と週3で日焼けサロン通いをしているとも語った遠藤は、17日の定例会見では「今は週5。最終的には週7、8回に」となぜか日焼け予告がエスカレート。真顔で無軌道なコメントをするあたりはDAMNATIONの“カリスマ”佐々木大輔譲りだ。
ただ、隠そうとすればするほど本音が伝わってくることもある。ふざけている場合じゃないからこその、このコメントなのだ。常に竹下を追う存在だった遠藤は、4月のニューヨーク大会でKO-D無差別級王座を初戴冠。しかし7月の大田区総合体育館大会で、ほかならぬ竹下にベルトを奪われてしまう。「やっぱり竹下」、そんな印象をファンに残してしまったのは、本人にとって大きな屈辱だったはずだ。
(竹下は毎回充実した闘いを見せたが、最終戦でブルックスに敗れる)
そこから雌伏の時を経ての、このリーグ戦である。「冬なんでお腹を温めるものを」と、独特の言い回しでベルト奪取への思いも語った。現王者のHARASHIMA、竹下、佐々木に“続く”存在から“並ぶ”存在になれるかどうか。D王決勝戦は正念場だ。
田中は過去に対戦した選手と比較し「技の奇麗なところがハヤブサ選手に似ている」と遠藤を評している。ハイフライヤーとして最上級の評価だ。会見でのこの言葉に、遠藤は思わず表情が緩みかけていた。
その一方で見逃せないのは、このリーグ戦では必殺技シューティングスター・プレスでの勝利がないこと。竹下、石井、クリスにはグラウンドの変形ゆりかもめで勝利している。これまでも使ってきた技を“大一番で強敵相手に勝てる技”に昇華させたのは大きい。遠藤自身、その手応えを語っている。
「これまで遠藤イコール飛び技というイメージだったかもしれないけど、自分でもそれ以外の可能性が見えてきた。今は飛ぶ以外の武器がある」
誰よりも飛べて、なおかつ飛ぶだけではない選手になった遠藤。大きくなった“器”で他団体のベテラン相手に初優勝を狙う。
文・橋本宗洋