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 12月21日、獣神サンダーライガーが後楽園ホール3連戦を終え、現役としての試合を来年の1月4日、5日の2試合だけを残すのみとなった。

 今年3月の会見で来年のドームでの現役引退を表明、ともすれば長く感じられるような9カ月間の「引退ロード」では、新日本のリングならず他団体や海外のリングでも喝采を受け「みんなのライガー、世界の獣神」を実感する1年だった。

 ライガーの偉大さは、ファンの間でもメディアの紙面でもまだまだ語り尽くせないが、とくに、ここ数カ月で31年を締めくくる試合に含ませたメッセージ性の高さ、濃密さに改めて驚かされる。

 19日から始まった後楽園ホールでの「Road to TOKYO DOME」3連戦でも、長年マスクマンの盟友として同時代を過ごした4代目タイガーマスクが、試合後に涙して最後の対戦を終えた。ライガーの橋渡しで移籍が実現したという「闘龍門」から新日本入りしたオカダカズチカとの「引退時期尚早」を感じさせる激闘、さらにリング上だけでなく内外で「フィクサーとしてライガーの功績」が戦いに投影されたカードも目白押しだった。

 引退マッチ第1試合となる1月4日のカードはある意味ライガーが活躍した階級「ジュニアヘビー」のレガシーへのリスペクトを感じる歴史絵巻だ。現在の所属団体や立場を越えてこのようなカードを実現させる、キャリアを通して越境・他流試合とタブー無しで挑んできた「ライガー流」の結晶ともいえる。

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 新日本のみならず日本のジュニアヘビー級のパイオニア・藤波辰爾、同階級の技術革命の礎となったジャパニーズ・ルチャの象徴であるグレート・サスケと、初代タイガーマスクの魂を継承する4代目をパートナーに迎えた。対戦相手は抗争を繰り広げた高岩竜一、大谷晋二郎、佐野直喜と現新日正規軍のジュニアの砦、田口隆佑。両営のセコンドにはエル・サムライと小林邦昭、さらにレフェリーが保永昇男という歴史を知ると納得の布陣だ。

 1月5日の引退時合でライガーは、83年に新日本に入団した同期・佐野直喜(佐野巧真)をタッグパートナーに、高橋ヒロム、リュウ・リー(ドラゴン・リー)組と対戦する。ユニット間抗争などの全てを脇に置いたレジェンドが、「新日本ジュニアの最前線の人間」と名指しでケガからの復帰を促したヒロムと、現在フリー状態だが確実に世界の同階級の主役になるだろうリーに未来を託した。

 当時のライガーと佐野、現在のヒロムとリーのライバル関係を鏡映しにしたようなマッチメイクとも取れるが、彼らに「俺を木っ端微塵にして欲しい。やっぱり引退を決意してよかったって」と介錯人として、あくまでセレモニーよりも現役感の伝わる最後を選ぶ、これも実にライガーらしい。

 「獣神最終章」の2試合には佐野直喜(現・佐野巧真)が初日の対戦相手、2日目はパートナーとして名を連ねる。ライガーと佐野は「いつか死ぬぞ」と言われるほどのバチバチのライバル関係だった相手でもある。しかも当時のリングネーム「佐野直喜」として新日本のリングに帰ってくる。ライガーは事あるごとに「思い出の戦い」に佐野戦を挙げ「あの人がいなかったら今の獣神サンダーライガーはない」と公言し続けてきた。新日本を去った佐野は、ライガーと袂を分かってからは、SWSやUWFインター、ノアなど数々の他団体を渡り歩き、「PRIDE」で総合格闘技にも挑戦した。

 ライガーに比べると陽のあたることは少なかったが、佐野は行く団体行く場所で「職人」「実力者」としてマニアを唸らせてきた。総合格闘技からインディー団体まで、ライガーが経験して来たメインストリームとは異なるルートで実直に同時代を戦い続けてきたからこそ「佐野直喜」を東京ドーム・最終章のリングに呼んだ意味がある。

 違う生き方を選んだ同期へのリスペクトもあるだろう。そして最も熱かった自らの最初の限界点への回帰を胸に、現役最強のコンビにぶつかり、砕け散る。これが獣神サンダーライガーがリングで体現したい「レスラー最後の仕事」なのではないだろうか。

写真/新日本プロレスリング

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